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「う〜ん、シカマルの誕生日会に招待されてしまった……」
「はぁ?」
突然言われたその言葉に、思わず名前を出された俺は、訳が分からずに素っ頓狂な声を上げた。
「ナルトも誘われたんだろう?」
「ああ、何でも下忍同士で集まるから参加しろって……でも、それってシカマルの前で話していいのか?」
何時ものようにソファで本を読んでいたナルトが、に質問されて素直に頷くと少しだけ困ったような視線を俺に向けて問い返す。
まぁ、俺に内緒で考えているつーのなら、普通は本人に黙っているもんだろう。
「ん〜っ、まぁそれは、置いておくとして……」
って、置いとくのかよ!!
思わず内心で突っ込んでしまっても、許されるだろう。
「置いておくのはいいんだけど、何か問題あるのか?」
俺の内心の突っ込みに気付くはずのないナルトが、困ったような表情を見せているへと問い掛ける。
「問題って訳ではないんだけど、今年も『夜』はそのつもりだったからなぁ……何て言おう」
複雑な表情を見せながらの言葉に、思い出す。
確か、出会ってからずっとここの連中は、俺の誕生日には何かしら祝い事をしてくれた。
「ああ?別に下忍の集まりは昼間だろうから、夜にでも祝ってくれるつーのなら、俺は別にそれでいいぞ」
「って、親父さんやお袋さんだって、一人息子の誕生日なんだから、祝う準備するに決まってんだろう!」
「つーってもなぁ……親父も母ちゃんも、多分俺が居ねぇなら居ねぇで、全く気にもせずに何時もの日常を過ごすと思うぞ。実際に去年はそうだったみてぇだからな」
去年は、帰るのが面倒になって、結局の家に泊まったちまったのだ。
その時連絡をしたら、あっさりと許可が下りた。もしかしたら、俺の誕生日だって事も忘れていたかもしんねぇ。今年の親父の誕生日はすっかり忘れていたのがいい例だろう。
が親父にプレゼント持って来なけりゃ、誰一人思い出さなかっただろう事が想像出来るだけに、複雑な気分だ。
誕生日だと言う張本人さえも綺麗さっぱり忘れていたのだから、なんと言うかそんなもんなんだろうと思う。大体、誕生日を祝ってもらって嬉しいつー年じゃねぇから忘れていたとしても、何ら問題はねぇしな。
それに、家での誕生日つーのは特別変わった事をする訳じゃねぇ、母ちゃんが誕生日である者の好きな料理を作ってくれるのだ。
去年は言われなかったが、毎年毎年何で子供らしいモノが好きじゃないのかと少しだけ呆れながら文句を言われるのが恒例となっている。
んなの本人の勝手なのだから、許してもらいたい。
「うん、決めた!」
俺の言葉に何事か考え込んでいたが、ニッコリ笑顔で頷く。
「決めたって?」
その言われた言葉に、俺よりも先にナルトが不思議そうに問い掛けた。
俺も興味があったから、素直にの言葉を待つ。
「今年は、親父さんやお袋さんにも家に来てもらう!」
「えっ?!」
キッパリと嬉しそうに言われたその言葉に、ナルトが驚きの声が上げる。
俺は、そのあまりな内容に絶句した。
「いい加減ナルトを紹介しろって言われてんだけど、ナルトはそれでいい?」
そして、驚きの声を上げたナルトに、お伺い。
だが言われたその内容に俺は、複雑な表情を見せた。普通は、そう言った事は息子の俺に頼むんじゃねぇのか?なんで、に紹介しろって言ってんだよ、あの親は!
「いいって、俺……シカマルの両親に会ってもいいのか?」
「会わせろって本人達が、言って来ているだから問題なし!それに、俺を受け入れてくれた人達だから、絶対に大丈夫。なんせ、シカマルを生んでくれた人達だからな」
複雑な気持ちを隠せない俺は完全に無視の状態で、ナルトが不安そうにに訪ねれば、フワリと柔らかな笑顔で、嬉しい事を言ってくれる。
の言葉は、俺の両親なのだから、ナルトを拒絶する事なんて在り得ないと言ってくれたのと同じだから……。
ヤバイ、本気で顔がにやけてくる……。
「……そう、だな……シカマルの両親だもんな……うん、俺は大丈夫!」
の笑顔に負けたのか、それともその言葉で納得したのかは謎だが、ナルトもしっかりと頷く。
それに、またが嬉しそうな笑顔を見せる。
「それじゃ、今年は親父さんとお袋さんもご招待って事で、『夜』には話しとくな!シカマル、親父さんとお袋さんに、宜しく!」
もう既に決まった事に、ニコニコと笑顔のまま言われたそれに、俺は半分面白くない気持ちでため息をつく。
人を無視した会話は、正直言って面白くない。しかも、あの両親の事だ、の事がお気に入りなのだから、同じタイプのナルトを気に入らない何てこと絶対に有り得ねぇだろう。
母ちゃんは、喜んで二人の事を構うだろうし、親父は、絶対に未成年だろうが気にしねぇで酒飲ます事は目に見えている!
頼みは母ちゃんが、親父を止めてくれる事だけだろう。
でも、良く考えりゃ、普通は誕生日のヤツの家に相手を招待するもんじゃねぇのか?
んな事したねぇけど、誕生日会つーのは、確かそんなもんだった筈。チョウジの家やいのの家には何度か呼ばれた記憶があるから、間違いねぇと思う。
俺は、毎年に祝って貰っていたんだけどな。
今年の俺の誕生日は、結構大変そうだ。
「シカマルの誕生祝いだって言ってたから、てっきりその日にするんだと思ったら、次の日の23日にするんだな」
俺の誕生日の祝いだと聞いていたは、いのの誕生日は知らなかったらしく、教えられたその内容にかなり驚いていた。
まぁ、普通は幼馴染で一日違いなど滅多に無い事だろう。
「明日がいのの誕生日だって聞いて、俺慌てていのへのプレゼント準備してきたし……」
「は、知らなかったんだ」
「知る訳ねぇじゃん。だって下忍になって初めて接点持ったんだぜ。流石に知らない奴の誕生日まで分からねぇって!」
ナルトが意外そうに訪ねるがそれに、は小さくため息をついて言葉を返す。
確かに、いのは俺の幼馴染だけど、とは拘わりを持っていなかったと言うのは本当の事。
勿論、いのの親父さんとは結構接点を持っているんだろうが、プライベートの話する程の仲じゃねぇんだろう。
ただの任務のパートナーと言う相手では、そんなもんだ。
「で、いのには何を準備したんだ?」
「それは秘密。明日のお楽しみ。ちなみに下忍から奈良シカマルくんへもプレゼントあるから楽しみにしてろよ」
本から視線を外して訪ねた俺に、がニッコリと笑顔を見せる。
「ずるい!俺もからプレゼント貰いたい!!」
「って、ナルトの誕生日にも、下忍のでプレゼント用意してやるよ。なんせ、はナルトと結構仲良しの設定になってんだからな」
そんなに、ナルトが拗ねたように言えば、楽しそうに笑いながらが言葉を返す。
そう、下忍は、10班の連中よりも、7班のナルトと仲がいい。
理由は、一緒に修行をしているからだと言う事。
偶々ナルトが秘密の特訓する為に見つけたその場所が、のお気に入りの場所だったと言う理由。
そんな簡単な理由で、とナルトは仲良くなったと言うのだ。
正直言って、それは俺としては面白くない話。
まぁ、一緒に居られる時間は間違いなく俺の方が長いだろうが、表のが嬉しそうにナルトと話しているのは正直言って疎外感を覚える。
10班では、何処か余所余所しい態度を見せているのにも係らず、ナルトの前ではそれが薄れるのだから、嫉妬するなと言う方が無理な話だろう。
「日がズレるの分かっていたら、親父さん達に無理言わずに済んだのに……」
「ああ?いいんじゃねぇのか、二人共すげぇ楽しみにしてたみてぇだからな」
小さくため息をつきながら言われたそれに、俺は素直に今日の親の様子を話した。
出掛けに見た母ちゃんは、滅茶苦茶嬉しそうにめかし込んでいたし、親父はいそいそと酒の準備をしていた事を思い出す。
「まぁ、そう言ってもらえると俺としては助かるんだけど……」
朝からナルトと『夜』相手に俺の誕生日会の準備だと忙しそうに動いていた達も、その準備が終わって、今はのんびりとしている。
見事なまでに準備された料理は、俺の好きな和風。
煮物を初め和え物なども所狭しと並べられている。
それに合わせるように、ケーキの替わりとして準備されているのは、和菓子。
綺麗に彩られた見事な造りは、素人なのか疑いたくなるほどの出来栄え。
『!パパさんとママさんが来たよ』
並べられた料理を感心しながら見ていた俺の耳に、『夜』の明るい声が聞えてきた。
「んじゃ、ここに案内頼むな」
『分かった。そう言えば、『昼』は?』
「嬉しそうに秘蔵の酒選んでたぞ」
に言われて部屋から出て行こうとした『夜』が自分の片割れが見当たらない事に、不思議そうに訪ねれば、がそれに返事を返す。
「ナルト、そんなに緊張しなくっても、大丈夫だからな」
出て行く『夜』を見送りながら、俺の両親が着たと言う事で、ぎこちなく反応するナルトに、がその緊張を解すように笑い掛ける。
「ご招待有難う、くん」
『夜』に連れられて部屋に入ってきた瞬間、聞き慣れた声が上機嫌にの名前を呼んでその相手に抱き付いた。
突然の事に、も驚いているのが傍目から見ても分かる。
「あっ、いえ、あの……こっちこそ、突然企画しちゃってすみません」
母ちゃんに抱き付かれて、オロオロしているに、珍しいモノを見たと言うように観察してしまう。
「あら、こんな企画なら、何時だって大歓迎よ!ウチの馬鹿息子の為に、有難うね」
困ったように謝るに、母ちゃんはニコニコと嬉しそうにもう一度礼を言う。
って、息子捕まえて、馬鹿かよ……一応、この里じゃ一番の頭脳だつーって言われてんだけど……。
「それから、君がナルトくんね。初めまして、私は、シカマルの母親でヨシノって言うのよ。ヨシノって呼んでもらってもいいんだけど、おばちゃんだけは辞めてちょうだい、それ以外なら好きなように呼んで貰って大丈夫よ」
「えっ、あの、えっと、あのそれじゃ、ヨシノさん、宜しくってば……」
突然名前を呼ばれたナルトが、同様オロオロした状態で、母ちゃんの名前を呼ぶ。
「きゃ〜っ!!可愛い!!」
そんなナルトを前に、母ちゃんが勢い良くナルトに抱き付いた。
突然の事に、ナルトはフリーズ状態。
ああ、ウチの母ちゃん、可愛いモノと綺麗なモノには、目が無いからなぁ……。まぁ、世の中の女は大概それに弱いらしいけどよ……。
「あ、あの……」
「ごめんなさい。ウチの息子が可愛くないもんだから、こんな可愛い子には目が無くって」
『奈良のガキは、ガキになり可愛いところもあるぞ』
「おう、『昼』か。今日は秘蔵の酒を持ってきたぜ」
困っているナルトに、母ちゃんは笑いながらもその体を開放して、優しく微笑む。
その言われた言葉に、何処から表れたのか、『昼』が意外な事を返し、親父は持ってきた酒を嬉しそうに見せた。
『オレも、秘蔵の酒を出してきた所だ。奈良の今日は、飲むぞ』
親父に言われて、『昼』も持ってきた酒を見せて笑う。
こんな時、親父と『昼』の気が合うと言う事が知れる。
「あら、『昼』ちゃんってば、ウチの旦那にそんなに飲ませちゃ駄目よ。それに、息子に可愛いところなんてあるの?」
『シカはね、すぐに拗ねちゃうところが可愛いんだよ』
全員にお手拭を渡しながら、質問された『昼』ではなく『夜』が嬉しそうに返事を返す。
「有難う『夜』ちゃん。そうなの…この子ったらすぐに拗ねちゃうのね。私達の前だと見せた事ないわよ」
『夜』からお手拭を受け取って礼を言い、意外そうに俺の方を見ながら少しだけ拗ねたような口ぶり。
って、んなの恥ずかし過ぎて見せられる訳ねぇつーの!
「まぁ、今日はシカマルが主役なんだから、あんまり苛めないでやってよ」
『夜』の後に飲み物を乗せたお盆を持ってお袋に差し出すの言葉に、苦笑を零す。
お盆に乗せられているのは、ウーロン茶だろう。
酒じゃない上に、ジュースじゃねぇところが俺を良く知っているつーかなんつーか……緑茶でも良かったんだが、流石に湯飲みを持って祝われるのも嬉しくねぇよな……。
「それもそうね。それじゃ、ウチの馬鹿息子の誕生日会を始めましょうか」
からグラスを受け取って、ニッコリと笑顔。
「シカマル、誕生日おめでとう!」
そして、全員が飲み物を受け取ったところで、今日この日に毎年言われる言葉を告げられた。
「………ああ、サンキュ…」
当たり前のように祝ってくれる事が照れ臭くって、少しだけ赤くなった顔を隠すように手で半分隠しながら、感謝の言葉を返す。
今日、この日に生まれえてきた事を感謝しよう。
そして、この日にお前に出会えた事も……。
賑やかな時間はまだ始まったばかり。今年のこの日は、今までに無いほどの賑やかさと、そして鮮やかな時間へと変わっていく。
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