俺が、奈良シカマルに初めて出会ったのは、5歳の時。
その時一緒に任務を遂行したのがシカマルの親父さんで、そんでもって、その日の内に、バレた事が原因。
いや、まぁ、初めての任務だったって言うのもあるけど、初任務がSランクって普通あり得ねぇだろう!
あの時には、密かに三代目を呪ったもんだよなぁ……。
初端からチャクラ使い過ぎて、変化の術も解けた上に、右上腕を怪我するなんて言うオマケ付き。んで、病院なんて絶対に行けない俺としては、そのまま家に帰る気力も無かった為に、親父さんの家でもある奈良家へと連れて来られた訳だ。
大体、自分の相方が、小さながガキだったりしたら、驚くとかするはずなのに、その時の親父さんは、豪快に笑って俺を奈良家へと連れて行った。
連れて来られて直ぐに、お袋さんが慌てて俺の手当てしてくれて、その時は夕飯までご馳走になった事を今でも覚えている。
そして、当時やっぱり俺と同じ歳だったシカマルを紹介されて、今に至る訳だ。
「……なに、めんどくせぇ事話してるんだよ。しかも、説明が抜けまくってんぞ……」
家に呼んだナルトにせがまれて、シカマルとの馴れ初めを簡単に説明すれば、後ろから盛大なため息と共に呆れたような声が聞こえてきた。
「ああ?シカマル居たのか?」
「ずっとここに居たつーんだよ!」
勿論、居た事は知っているけど、けろっとそう言えば、不機嫌そうに睨みながら言葉を返してくるシカマルに思わず笑みを浮かべる。
本当に、昔から変らないよな、こいつ。
「……やっぱり、幼馴染って言ってたのは、本当なんだな」
そんな俺達の遣り取りを、何処か寂しそうな表情で見詰めながらのナルトの言葉に、俺は何も言えない。
って、俺とシカマルが、幼馴染って、ああ、シカが教えたんだろうな……。自覚ねぇけど、俺達って、幼馴染になるのか、知らなかった……。
「俺が、ナルトの相方になったのは、こいつの所為だぞ」
思わず考え込んでいた俺を無視して、シカマルが盛大なため息をつきながら、親指で人の事を差し、サラリとそんな事を言う。
って、それは、言っちゃ駄目なんだぞ。シカマルとしては、ナルトに隠し事はしたくないと言う理由だろう。いや、それとも、何時もの憂さ晴らしかなんかだろうか?
「はぁ?なんだよ、それ!」
案の定、ナルトが驚いたように声を上げる。それに、俺は苦笑を零した。
「あ〜あ、シカマル、それ言っちゃ駄目だって……」
「んな面倒な事知るか!人を巻き込みやがったんだから、俺にはそれぐらいの権利があって、当然だろうが!」
確かにその通りだけど、今更そんな事言われてもなぁ……。
って、やっぱり理由は、後者ね。う〜ん、シカマルも侮れなくなってきたな最近……。
「それは、俺の所為じゃねぇもん。親父さんが、シカマルを好きに使ってイイって許可くれたから、暗部で使えるぐらいの知識と術を教え込んで、んで体力付けさせただけだぞ。そんでもって、三代目にナルトの相棒に付けてくれって、勧めただけじゃん」
怒って噛み付いて来るシカマルに、少しだけ拗ねたように言葉を返す。だって、俺は、親父さんに言われた通り、シカマルを鍛えただけだもん。俺だけの所為じゃねぇじゃん!
親父さんも、同罪のはずだ!
「そのお陰で、俺は初めての任務の時、ナルトに毛嫌いされてたんだからな!」
「まぁ、それまで、ナルトは単独任務しかしてなかったからなぁ。シカマルに軍師としての能力があって、助かった」
そして、続けて言われた言葉に、更に言葉を返せば、シカマルがますます睨んでくる。
だって、本当にそう思ったんだから、仕方ねぇだろう。体力的には、ナルトに劣るかもしれねぇけど、IQ200以上の頭脳は、確実にナルトの役に立ってるんだからな。
「人を無視して話しをするな!って、シカマルを俺の相棒にしたのは、あんたなのかよ」
「う〜ん、間接的にはそうだな。でも、決めたのは三代目だぞ」
「嘘付け、お前、右目使っただろう!」
俺とシカマルの言い合いを横で聞いていたナルトが、驚いたように話に加わってくる。それに、俺があっさりと返事をすれば、シカマルが怒ったまま突っ込んできた。
いや、それは否定しねぇけど、だからそれを言っちゃ駄目だろう……。
人間、教えなくっても良い事だって、沢山あるんだからな。
「右目?」
シカマルの言葉で、複雑な表情を浮かべた俺の耳に、意味が分からなかったのだろう、ナルトが不思議そうに首を傾げた。
そんなナルトの態度に、俺も思わず首を傾げてしまう。
あれ?そう言えば、ナルトに、右目の説明してなかったっけ?
「お前、まだナルトに説明してなかったのかよ」
首を傾げた俺に、シカマルが呆れたように盛大なため息をついて、問い掛けてくる。
「……みたいだな……したつもりで居た」
そんなシカマルに、俺も素直に返事を返した。あれ?説明、してなかったか?ちゃんと、したような気がするんだけど……。
「だから、右目ってなんだよ!」
考え込んでいる俺に、ナルトが焦れたように問い掛けてくる。
「えっと、俺の左目は、真実を映すって話しは、したような気がするんだけど、ナルト、それはOK?」
「それは、聞いた。その後、チャイムが鳴るからとかで、打ち切られただろう!」
ああ、思い出した!
そっか、確かに、途中で話し打ち切っちまったな、俺。
「えっと、俺の右目な……俺の右目、何色かは、知っているよな?」
「……金…」
今は、コンタクトしているから、ナルトには黒に近い紺色に見えているだろう。それは、左目と同じ色。
特注で作っているコンタクトのお陰で、誰にも疑われない目の色の違い。
だけど、ナルトには何度か右の色を見せていた。だから、問い掛ければ、ボソリと答えが返ってくる。
「うん、俺の右目は金色。それは、特殊な力を持つ瞳の色」
人がそれを知ったら、確実に俺は恐れられるだろう。そんな力を持った俺の右瞳。
「……俺の右目は、全てのモノを従わせる事が出来るんだよ」
生きるモノ全てを従わせる事が出来る、瞳。それは、どんな相手だろうと、確実に……。
それは、操られるモノにとっては、恐怖でしかないだろう。
「へぇ、便利な目だな」
俺が説明した瞬間、ナルトが感心したように呟く。
それに俺は、嬉しくなって笑みを深くした。きっと、そんな風に思ってくれるのは、今、自分と一緒に居てくれる彼等だけだろう。
「九尾の器に選ばれたのが、ナルトで良かった」
思わず微笑んでギュッとナルトを抱き締める。
本当は、そんな事思っちゃいけないんだろう。ナルトは、その所為で里人から忌み嫌われた存在になってしまったのだ。その上、無意味な暴力に罵声を浴びせられている。
だから、こんな事思っちゃいけないだろうけど、それでも言わずには居られなかった。
封印術を使った四代目に、感謝したくなるよな。
「あ〜っ、ナルトが固まってんぞ」
ギュッとナルトを抱き締めていると、盛大なため息と共に、シカマルが呆れたように声を掛けて来る。
「えっ?」
その言われた事に、ナルトを見ると、確かに俺の腕の中で固まっているのが、分かった。……ああ、人に抱き締められる事に、慣れてないんだな……。
「ナルト」
「えっ、あの、ってば、何で行き成り抱きつくんだってばよ!」
固まっているナルトに苦笑を零して、その名前を呼べば、少しだけドモりながら、しかもドベ口調でナルトが問い掛けてくる。
まぁ、ドベの口調からも、ナルトが慌てているのは、分かるけど……。
「何でって、嬉しかったからに、決まっているだろう!俺、ナルトの事大好きだからな」
好きな奴が居るから、この里を裏切る事が出来ない。
例え、この里が、どんなに自分にとって居心地の悪い場所だとしても……。
「だ、大好きって、だって、俺ってば……」
俺の言葉に、またしてもナルトが、ドベ口調で口を開く。俺は、ナルトが何を言いたいのかを察して、盛大なため息をつきその言葉を遮った。
「九尾だからとか、この場で言ったら怒るぞ!大体、俺は一族だぜ。一族にとって、九尾は守護すべき相手だ!それって、俺にとってナルトは、守護するベき相手だって事なんだからな!」
全く、何度言ったら分かるんだろう……いや、何度言っても分かってもらえないのは、ナルトがそう言う事しか言われてこなかったと言う事。だからこそ、その言われ続けてきた言葉は、ナルトの中に深く刻み込まれているのだ。それは、悲しくって、許せない事。
「でも…」
「『でも』は聞かん!!シカマル!お前はもう少し、こいつの相棒らしく教育しとけよな!!」
「いや、相棒は、教育なんて出来ねぇだろうがよ」
俺の言葉に、再度口を開きかけたナルトの言葉を遮って、直ぐ傍に居るシカマルへとその矛先を向ける。そんな俺に、シカマルが呆れたように盛大なため息をついた。
まぁ、シカマルの言葉は、正論だけど、こんな風にしか言わないナルトには、ちょっと腹立つぞ。九尾がなんだって、少しは開き直れ!って、それが出来れば、苦労しねぇけど……。
生まれた時から、言われ続けてきた事を、簡単に覆す事は出来ない。そんな事、俺が一番知っているのに、な……。
「たく、何で、今日の主役にこんな事言わなきゃいけねぇんだよ……なぁ、ナルト」
今日、ナルトやシカマルを家に呼んだのは、こんな事を言う為じゃなかったはずだ。なのに、何でこんな事いわなきゃいけねぇんだよ。
「えっ?」
名前を呼ばれて、ナルトが俺を見上げてくる。そう言えば、まだナルトを抱き締めたままだったっけ?
見上げてくる瞳は、空の青。綺麗な済んだ瞳を前に、ニッコリと笑顔を見せた。
「俺に、我侭言ってくんねぇ」
そして、キッパリと自分の気持ちを伝える。
我侭を言うのは、子供の特権。言える時に、そして言える相手が居る事は、大事な事だ。
なら俺は、そんな相手として、ナルトに認めてもらいたい。そう思っているのは、俺の我侭。
「確かに、我侭言う事はいい事だぞ。こいつ、無理な我侭は、そのまま無視するしな」
って、そこ!余計な事を言うんじゃない!大体、聞けない事は、聞けないで流すのは、当たり前だろうが!俺にだって、出来る事と出来ねぇ事があるんだぞ!
「えっと、我侭、我侭……そ、それじゃ、の笑った顔が見たい」
俺の言葉とシカマルの後押しのお陰か、腕の中で、ナルトが真剣に考えて、そして思い付いたとパッと顔を上げて、少しだけ恥ずかしそうに言った言葉に、俺は一瞬何を言われたのか分からなかった。
「はぁ?俺の笑った顔??んなの、何時も見てんじゃん」
大体、それは我侭じゃねぇぞ!俺だって、ナルトやシカマルの笑顔を何時だって見てぇもん。って、そう思うのは、我侭なのか??
「違う!何時もの笑顔じゃなくって、そのフワッと笑う笑顔が見たいの!!」
いや、そう言ってくれるのは嬉しいけど、フワッとって何?俺、そんな風に笑ってんのか??
意味が分からなくって、助け舟を貰う為にシカマルへと視線を向ければ、こちらは楽しそうに笑っている。
「ほら、ナルトの初めての我侭だぜ、めんどくさがらねぇで、聞いてやれよ」
なんて、楽しそうに言われても、面倒がっている訳じゃねぇけど、どんな笑顔だよ、それ?
う〜ん、笑えって言われても、急には笑えないし……フワッと言うのが分かんねぇけど、ナルトの我侭は、聞いてやりたいし……笑顔ねぇ……。
やっぱ、少し早いけど、あの言葉を言うのに、最適っちゃ最適だよな。
「……う〜ん………」
不安そうに、俺を見詰めてくるナルトのその目には、弱い。
だけど、人間笑えと言われて、そう簡単に笑えるもんじゃねぇよな。でも、今日、この日に、ナルトがこの世に生を受けた事を考えれば、自然と笑えるはずだ。
大切な奴が、こうしてここに居てくれるのは、この世に生を受けた日があるから……。
「……ナルト、今日、この日に生まれてきてくれて、有難うな」
不安そうに見詰めてくる瞳に、ニッコリと笑顔を見せる。
今日ここに、お前を呼んだ理由。11年前、この里で、九尾が封印された日。
里では、この日死んでいった者達への静かな祭りが執り行われているだろう。だけど、俺は、死んでいった者への祭りなんて興味ない。
今日、この日に、大切な奴が、生まれた事の方が大事だ。
「!それは、ずるくねぇか?」
ナルトの望んだ笑顔を見せられたかは分からないけど、俺の言葉に、驚いているナルトと、呆れたようなシカマル。
「ずるくない!一番は、貰ったかんな!」
不機嫌そうに文句を言ったシカマルに、意地悪く言葉を返す。だって、この言葉を言う為に、ナルトを家に呼んだんだから。
「……生まれてきて……有難う?」
「ナルト?」
俺とシカマルの言い合いなんて、まるで聞こえていないように、俺の言葉を繰り返すナルトに、俺は不思議そうにその名前を呼ぶ。
「俺、生まれてきて、良かったのか?」
そして、不安そうに尋ねてくるそれに、俺はギュッと抱いている腕に力を込めた。
「な〜に、当たり前の事言ってんだよ!言っただろう、今日、この日に生まれてきてくれて、有難うって!」
「確かに、めんどくせぇが、それ言う為に、今日は呼ばれてんだよ。猫2匹は、今頃宴会の準備でもしてんじゃねぇのか?」
「当り!良く分かったな、シカマル。今日は、ナルトの誕生日会の準備に、二人ともテンテコマイ。ケーキは俺のお手製だから、楽しみにしていてくれよな」
『!準備出来たよ!』
俺達の言葉に続いて、『夜』の呼び声が聞こえてくる。
タイミングもバッチリだな。
「んじゃ、移動しようぜ」
呼び声に立ち上がって、部屋を移動する為に扉を開く。開いた先は、『夜』と『昼』の姿。
今日は、居間と広間を繋げたみたいだな……。
「……、やっぱりここは謎屋敷だな……」
開いた先に準備されている料理の数々、だけど、普通開いた先は何時もなら廊下で、ここまでは歩いて行かなければ移動できない訳で、シカマルの呟きに、同意する事しか出来ない。
自分でも分かっているけど、やっぱりこの屋敷って、謎だらけだよなぁ…住んでいる住人が言うのも変だけど……。
「……シカマル、、何で扉開いたら、別な部屋に繋がって……」
驚いたようなナルトの呟きに、思わず苦笑を零してしまう。ここの家に慣れてないナルトだけが常識的な思考を持っているよなぁ、なんて、主役を驚かせてどうするんだよ!
「ああ、ここの家の構造は、頭から無くせ、それがここでの常識だぞ。考えるだけ、めんどくせぇしな」
って、シカマルにここまで言われる俺ん家って……いや、否定は出来ねぇんだけど……。
「異次元には、多分繋がってねぇと思うから、安心してくれ」
多分、うん、きっと異次元には、繋がってないと思いたい。これで繋がっていたら、どうしよう…。いや、取り合えず、飛ばされた事ねぇから大丈夫だと思いたい。
「いや、そう言われても、安心できねぇって」
自分の心の中で必死で納得している俺に、シカマルが呆れたように否定する。
『安心しろ、異次元に繋げるつもりは、今の所ないからな』
『そうそう、そこまでしちゃうと、大変な事になっちゃうしね』
3人で固まっている中、楽しそうな『昼』と『夜』の言葉。
って、ちょっと待て!今までの全ては、やっぱりお前等の所業だったのか!
「この家の構造無視してんのは、お前等かよ……」
『オレ達以外に誰が居ると言うんだ。、お前は今更何を言っている』
思わず抱えた頭で呟けば、呆れたように返される。
いや、確かにそうかもしれないけど、この家の周りは結界張っていて普通の妖かしも入る事は出来ないし、人間に関してはこの森にさえ入っては来られないのだから……。
「ふ、深く考えるのはやめ!改めて、ナルト!!」
「な、何??」
「誕生日、おめでとう」
深く考えるのは疲れるから、あえて考えないようにして、ちょっと大きめにナルトの名前を呼べば、驚いたように俺を見詰めてくる。それに、今度こそ、今日この日に伝えるべき言葉を口にした。
「えっと、あの……」
俺の言葉に、ナルトが困ったように言葉を探す。
「あ〜っ、めんどくせぇなぁ。こんな時は、『有難う』でいいんじゃねぇのか?」
『そうだね。それが、一番の言葉だよ、ナル』
言葉を探しているナルトに、シカマルと『夜』が助言してやる。
「えっと、それじゃ、有難う、……それから、俺の我侭聞いてくれて、サンキュな」
それに力を借りて、ナルトが俺に礼の言葉。続けて言われた言葉に、俺は思わず首を傾げた。
俺、そう言えば、ナルトの我侭聞いてやるって言っていたけど、えっ?それって、ナルトが望む笑顔って奴見せられたのか??
どんなだよ!フワッとした笑顔って!!
「ああ、そういやぁ、見せていたな、ナルトの望む笑顔……」
「いや、だから、どんな笑顔だよ!」
『の笑顔はね、ふんわり笑顔なんだよね』
いや、嬉しそうに言われても、分かんねぇ……ふんわり笑顔って、なんだよ、『夜』。
「そうだよな、の笑顔は、なんて言うのかふんわり包み込む笑顔なんだ。俺は、好きだ」
意味が分からない俺を余所に、『夜』の言葉に、ナルトが同意して、嬉しそうに笑う。いや、俺は、その笑顔の方が、大好きなんですけど……。
まぁ、何にしても、ナルトが笑ってくれるんなら、俺の笑顔は、横に置いとこう。それが、正しい!
「んじゃ、ナルトの笑顔も見られた事だし、『昼』と『夜』が作ってくれた料理が冷めない内に食おうぜ!ナルトは、痩せてんだから、しっかり食わないと駄目だからな!」
うん、その為に、『昼』と『夜』に頑張ってもらったんだから、食わなきゃだよな。
そんでもって、痩せ過ぎのナルトに肉を付けさせるのが、今の俺の目標!
「めんどくせぇが、お前が、それを言っても説得力がねぇぞ」
「あのさぁ、あのさぁ、俺聞いたんだけど、ってば身長も体重も、そんなに俺と変らないんだってばよ!」
しっかりとナルトに釘さす様に言った俺の言葉に、突っ込みを入れるシカマルと、何故かドベ口調で反撃とばかりに言われたナルトの言葉に、俺は一瞬言葉を失う。
えっ?俺って、ナルトと身長差ないのか??シカマルには、負けているのは、一目瞭然なんだけど……でも、身長も体重も変らないって事は、もしかして、俺も痩せているってことなのか?!
『確かに、も痩せ過ぎだ。二人ともちゃんと食え』
『そうそう、ちゃんと大きくなりたかったら、食べなきゃだよね』
いや、そんな小さな子供じゃあるまいし……って、11歳でこの身長は低いのか?!
でも、身長が伸びないのは、睡眠が足りてない所為じゃねぇのか?子供を扱き使うなよ、三代目……。
「き、聞かなかった事にして、食う!ナルトも、言われたくなきゃちゃんと食え!一日一食でも食べなきゃだめなんだぞ!!」
「って、そりゃお前が『昼』にいつも言われていた事だろうが!」
料理を小皿に載せて、ナルトへと差し出して言えば、しっかりとシカマルの突っ込み。
いや、だって、俺も誰かに言いたかったし……。最近は、ちゃんと食っているぞ、一日2食!
「今なら言える!」
『、威張って言えた事ではないぞ』
胸張って、言った俺に、呆れたように『昼』が盛大なため息をつく。
「なんか、説得力がないよなぁ、って」
ため息つきながら俺の渡した皿を受け取って、ナルトがポツリと呟く。
あっ、ドベ口調が、何時もの口調に戻ってる……。
「ナルト、俺って、説得力ないか?」
「ねぇよ、めんどくせぇけどな」
「って、シカマルに聞いてねぇ!」
恐る恐る問い掛けた俺の言葉に、キッパリとシカマルが即答。面倒臭かったら、答えるな!
「俺も、シカと同意見。、説得力なさ過ぎ」
パクリと美味しそうに『昼』と『夜』が作った料理を食べるナルトにまで、トドメをさされた気分だ。
「ん〜っと、でもさぁ、には、感謝してるから!」
「ナルト?」
「だって、こうして、誰かとご飯を食べるって事を教えてくれたのは、だ。一人で食べるご飯より、誰かと一緒に食べた方が断然美味しいって事、今まで考えた事もなかった」
嬉しそうに料理を食べるナルトを前に、俺は一つの考えを持つ。
そうだよな、食事は、一人では食べる気なんて起きないものだ。
「決めた!」
「な、なんだってば??」
ああ、またナルトの口調がドベに戻ってる。驚いたら出てくるんだな、面白いかも……。じゃなくって!
「今日から、ナルトは家でご飯を食べる事!」
「はぁ?」
「『昼』!『夜』!ナルトの家とここを繋げて!」
『分かった』
『簡単な事だな』
言った傍から、一つの扉が作られる。そっか、こうやって、どんどんこの家は謎屋敷になってんだな。
「って、事だから、ナルト!決定事項だかんな!!」
突然出てきた扉に驚く事無く、決定事項としてビシッとナルトに言い付ける。
「んじゃ、俺も時々参加希望な。かーちゃんの許可は貰っとく」
それに参加希望と、シカマルが手を上げた。
まぁ、今までも同じようなもんだから、変らない気がするけど……。親父さんもお袋さんも、俺の事、認めてくれてるし、何よりも、奈良家は、放任主義だ。
「な、何で、そうなるってばよ!」
「ナルトの意見は聞きません。朝と夜は、家で食うの!ここの扉開いたら、ナルトん家と繋がっているから、無理にでも食わす!」
って、現れた扉を開く、これで別な場所に繋がっていたら、どうしよう……『昼』と『夜』がそんなヘマをするとは思えないけど……。
開いた先は、ちゃんとナルトの部屋。
「な、何で、俺の家??ここから、何キロも離れて……」
「ナルト、そろそろ慣れろ。ここでは、常識は無駄な産物だぞ」
ポンッとシカマルがナルトの肩に手を置いて、失礼な事を言う。
まぁ、確かに空間捻じ曲げて、部屋を繋いじまったから、常識では考えられないかもしれないよなぁ。
でも、これもナルトの為だ!
「食事は、大勢で、だ!ナルト、これから、絶対に食わすからな!」
『それじゃ、も、言わなくっても食べるようになるね。良かったじゃん、『昼』』
しっかりと言った俺に、ニッコリと言われた『夜』の言葉。それって、やっぱり、俺とナルトは、同等扱い?
俺、最近ちゃんと食っているのに……。
『確かに、口うるさく言わなくていいのは、助かるな』
『昼』までも、笑いながら同意の意見。やっぱり、俺とナルトって、同等扱いな訳ね……いや、否定出来ねぇんだけど……。
「で、ナルト、食えないモノ何がある?」
「生野菜!」
気を取り直して、ナルトの嫌いなモノを聞いておこうと思って、問い掛けた俺の言葉に即答で返事が返ってくる。
……あの資料って、ドベ用のヤツじゃなかったんだ…。
「却下!」
「え〜っ!!俺は、生野菜は食えない!!」
「駄目、生でこそ栄養がある野菜って、一杯あるんだぞ。一口でもいいから、食べてみろよ」
「火が通ってるのは食えるから問題ない!」
だから、あえてナルトの言葉を却下して、早速今日あるサラダを皿に盛る。
『夜』の特性サラダは、俺が好きなモノの一つ。肉よりも野菜が好きな俺用に、『夜』が良く作ってくれるモノだ。
「トマトにキュウリ、キャベツにレタス」
「……全部、火が通ってれば食べられる」
「だ〜め、聞いてやんない。ほら、『夜』の特性ドレッシング付きサラダ」
確かに、火を通しても野菜は野菜かもしれないが、それでも、生で食べるのと火が通っているのでは、味が全く異なってくる。料理によっては、美味しいかもしれないけど、やっぱりそのまま食べた方が美味しいと感じるのは、俺が好きだからか?
「……俺の誕生日に、嫌いなもの食わすのかよ……」
「あっ!そう言えば、そうだけど…でも、聞いてやんねぇ。そうだな、一口食べたら許してやる。もっとも、それ以上でも全然OKだけど」
俺の言葉に、ナルトが不機嫌そうに言った事に、今更ながら、今日の趣旨を忘れるところだった。
でも、これとそれは別。だから、『はい』っとナルトへホークに刺した野菜を差し出す。それに、本当に嫌そうな顔をしたナルトだけど、俺の言葉に観念したのか、目を閉じて口を開いた。
開いた口に俺が、そのまま野菜を放り込む。
「やっぱり、食えない?」
ナルトが、口の中の物をゆっくりと噛んでいるのを、心配そうに見守りながら、そっと問い掛ける。
「んっ、これなら、食べられるかも……生臭くないし、なんかパリパリしてる」
食物を飲み干して、言われた言葉に、ホッと胸をなでおろす。正直言うと、かなり心配だったのだ。だって、嫌いなものを無理やり食わすのは、実はあんまり好きじゃない。
俺自身、嫌いなものがある訳だから、人にそれを強要するのは、間違っているよな。
「食えそうで、良かったな……」
そんな俺達の遣り取りを見守っていたシカマルが、こちらは微笑ましい笑顔でナルトの頭を撫でている。
「子供扱いすんなって、言ってるだろう!」
そんなシカマルに、ナルトがその手を払いのけた。ほのぼのしていて、良かったのに……。
って、内心思っていたら、ナルトに睨まれた、何で?
「……顔に、書いてんぞ」
不思議に思って首を傾げて見せれば、呆れたようにシカマルが声を掛けて来る。顔に、書いてる??
「、お前まで、人の事子供扱いするつもりか?」
言われても意味が分からないと首を傾げている俺に、ナルトがますます睨みつけてきた。それに、俺は慌てて手を振る。
「違う!シカマルとナルトがほのぼのしているの見られて、幸せだなぁっと……あっ」
「ああ?なに、めんどくせぇ事言ってんだ。お前とナルトの方が、ほのぼのしてんだろうが!」
睨んでくるナルトに、慌てて言葉を返した瞬間、自分が言った事に慌てて口に手を当てるが、遅かった。シカマルが、呆れたように言葉を返してくる。
「違う!シカとの方だ!」
それに続いてナルトまでが反論。って、これって、お互いがそう思っているって事か??
『安心しろ、オレ達から言わせれば、全員が同じだ』
その言われた事に、結論を結びつけた俺の耳に、『昼』からズバリと言われてしまう。
やっぱり、そうだよな。シカとナルトの遣り取りも、ほのぼの。んじゃ、俺とナルトとシカマルの間も、ほのぼのしていても不思議じゃねぇと言う事。
そう言ってもらえるのは、嬉しい。
「んじゃ、みんな仲良しって事で、この話は終了!んで、明日から、ナルトは、朝と夜はここでご飯を取ること。決定事項な」
ニッコリ笑って、そこで話を打ち切る。そんでもって、忘れないように、明日からの、朝ご飯と夕ご飯をしっかりとナルトの頭に刻み込んでもらわないとな!
「いい、誕生日プレゼントじゃねぇかよ、ナルト」
『ナルも、ウチの子決定!』
そんな俺に、シカマルが嬉しそうに笑って、ナルトの肩に手を乗せる。その横で、『夜』が嬉しそうに声を上げた。
「『夜』家の子って……ん〜っ、間違いじゃねぇから、いいか」
「いいのか、それで!」
訳の分からない言葉だが、それでも間違いがないから納得した俺に、ナルトが声を張り上げる。
それで、いい。
だって、ナルトは、ずっと俺にとって特別な存在だったから。
だから、家族と同じ。それ以上の、大切だと思う気持ちがある。それを知っているからこそ、『昼』と『夜』は、認めてくれたのだ。
それは、自分達にとって、新しい『家族』と同等の言葉。
『ちなみに、シカもウチの子だから、一番の年上は、シカだね』
さり気なく言われた言葉に、3人がそのまま固まってしまう。そして、俺とナルトは、恐る恐るシカマルを見た。
「シカマルが、兄ちゃんて、ありえねぇ!!」
そして、そのまま二人同じに同じ事を口にする。
確かに、誕生日の順番を考えれば、シカマルが一番の上。んで、真中にナルト、そう考えると誕生日が一番遅い俺が、末っ子?
そ、それこそ、ありえねぇだろう!
「……そりゃ、どう言う意味だ?」
ヒクヒクと頬を引きつらせてのシカマルの質問に、俺は思わず苦笑を零す。
「だって、面倒臭がりのシカマルだぞ!」
「だって、シカマルって、俺より弱いし!」
そして、キッパリとそう言った。それに続いてナルトも、キッパリと言う。でも、強い弱いで考えると、俺も、ナルトより弱いから、年下決定?んじゃ、順番的には、ナルト・俺・シカマルになるのか?
それも、何か違うような……。
『お前等は、順番なんか必要ないだろう。全員同じだ』
『そうそう、みんな手が掛かるのは同じ』
考え込んでいる自分の耳に、『昼』と『夜』が声を掛けて来る。ああ、それが、一番納得できるかも……。
「ありえねぇだろう……」
「ん〜、でも、俺的にも、二人と同意見だな。誰が上かは必要ない。皆が一緒でいいじゃん」
二人の言葉に納得できないと言う様に呟くシカマルに、自分は賛成だと言う意思を伝える。
だって、ここでは、強さも弱さも関係ない。普通で居られれば、それでいいから……。だから、俺達は、まだ子供で居ていいのだ。
この中では、許される事。
「だから、ナルトは、今日からウチの子。これも、決定事項!好きな時にあのドアから来てくれよ。誰もいなくっても、ここはもう一つのナルトの家」
『心配しなくっても、あの扉は、この中の誰かにしか開く事は出来ない。他のモノでは、触れられないだろうし、見えないだろう』
「……分かった……」
「来ない時は、こっちから無理やり迎えに行くからな!」
「…うん………有難う、、『昼』に『夜』」
ニッコリと綺麗なナルトの笑顔。
今日、君が生まれた事を祝おう。
どんなに小さくって些細な事だと言われようとも、自分達にとっては、掛け替えない大切な事。
沢山の命が奪われたことなんて、関係ない。
たった一つ、大切な命が生まれた日だからこそ、心から感謝しよう。
「ナルト、生まれてきてくれて、本当に有難う。そして、誕生日、おめでとう……」