「やっぱり、ここに来ちまったんだな……」

 後ろから声を掛けられても、俺は振り返る事もせずただ何も無い森を見詰めていた。

「あいつ等が消えて、もう3年だ」

 声は反応を返さない俺なんて気にした様子もなく、隣に並ぶ。

 ああ、そうだ。

 あいつに会わなくなって、早3年も経つんだな……。
 俺が、特別任務から戻ってきた時には、もう既にあいつの姿は何処にも無かった。

 そう、俺と今隣に並んで立っている自分の相棒以外の者、全ての記憶の中からさえ……

「俺は、聞いた時信じられなかった。だって、サクラに聞いたら、『それ誰の事?』って言いやがったんだぜ」

「ああ」

 里に戻ってきた時、直ぐに会いたくって聞けば、信じられない言葉が返って来た。

 3年里を離れた間に何があったのか分からない。
 でも、あいつが居なくなったのは、俺が里を出て直ぐのことだとそう教えてくれたのは、俺に声を掛けてきた人物。

 なら、どうして直ぐに教えてくれなかったんだと詰め寄ったのは、遠くない記憶だ。

「俺だって同じだ。珍しくあいつの家に行かなかった次の日に、あいつ等は消えちまってた。誰に聞いてもあいつの事を覚えてなかった。探したさ、俺の頭脳を駆使してな」

 だけど、見つからなかったのだと、そう悔しそうに呟かれて俺は、ため息をつく。

 どうして、俺達に何も言わずに消えてしまったんだろう。
 後悔と悔しさだけが湧き上がる。

 どうして俺は、3年も里を離れていたんだろう。
 こんな事になるなら、俺は里を離れたりしなかったのに……

「俺達は、あいつにとって重荷でしかなかったんだろうか?」
「んな訳ねぇだろう!」

 ポツリと零したその言葉に、隣から即答で否定の言葉が聞こえて来た。

 でも、ならなんで、今ここにあいつは居ないんだろう。

 約束したのに

 俺が生まれた日を、毎年祝ってくれるって……

 任務で里を離れている時も、あいつは俺に祝いの言葉を送ってくれたから、だから居なくなったなんて信じられなかったんだ。

 なぁ、どうして祝いの言葉しか送ってくれなかったんだ?
 お前なら、俺の前に姿を見せるのなんて簡単だったはずなのに

「ナルト!」

 ただ複雑な気持ちで、何もない森を見詰めていれば、名前を呼ばれて顔を上げる。
 見れば、空から白い白い小鳥が一匹。

 それは、ここ数年の間、俺に祝いを届けてくれた鳥。

「……

 ポツリと名前を呼べば、鳥は俺の肩に止まる。

『誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、有難う……そして、ごめんな』

 謝るぐらいなら、俺の前にその姿を見せて欲しい!
 どうして姿を消してしまったのか、理由を教えて欲しかった。

 伝える言葉を口にした瞬間、小鳥の姿はポロポロと崩れて風に流されていく。

「ずるい……」 

 ポツリと呟いた言葉は、言葉を伝えてきた相手には聞こえないと分かっていても、言わずに入られなかった。
 自分の言葉だけを伝えて、俺達の言葉は何も聞いてくれない。

 なぁ、今何処に居るんだ?
 もう、俺達はお前に会う事は出来ないのか?

 今は、ただお前が、また戻ってくることだけを願ってもいいだろうか?
 迷惑だと分かっていても、俺達にとってお前と言う存在は、なくてはならない者だから
 
 遠くで弔いの鐘が鳴る。
 今日と言う日を弔う鐘が……