そう言えば、彼女が通う学校は、女子中学だったと言う事を思い出して、思わず頭を抱え込む。
正直言って、この場所で彼女を待つのはかなり勇気のいる行動かもしれない。
下校中の生徒達に見られながら、俺は小さくため息をついた。
携帯の番号聞いてれば、こんな事にはならなかったのに、少しだけ昨日の自分を恨みたい。
「あっ!」
昨日の事を後悔していた俺の耳に、驚きの声が聞えて思わず振り返る。
だけど、振り返った先に居たのは、まったく知らない人物。
「あなた、昨日と一緒に居た……もしかして、の事待ってるの?」
その相手は、俺の事をじっと見ていたかと思うと声を掛けて来た。
質問された内容に、俺は驚いて目の前の人物を見る。
って言うのは、の名前だ。
「俺の事……」
「知ってるわよ。あの大人しいが幸せそうな笑顔で一緒に居た男の子なんて、貴方が初めてなのよね。でも、ここでの待ち伏せはかなり不味いわよ。一応女子中だから」
俺の質問に、多分彼女の友人だろう相手が少しだけ楽しそうに笑いながら説明してくれる。
からかう様に言われた内容だったけど、それは本当の事だから素直に頷いて返した。
「……分かってはいるんだけど、ちゃんとお礼も言いたかったし、何よりもこのまま会えなくなるのだけは、嫌だったんだ……」
だからこそ素直に俺の気持ちを目の前の相手へと伝える。
真剣に伝えたその言葉に、目の前の相手は少しだけ驚いたようだったけど、少し考えるようにな素振りを見せた。
そして、一人で納得したように頷く。
「そんな言葉を聞いちゃうと無視できないわね。それじゃ、あそこのカフェで待っててくれる?あの子には私から伝えておくから」
スッと後ろにある店を指差して言われたそれに、俺の方が慌てた。
いくらの友達だからと言っても、そこまで迷惑を掛ける訳にはいかない。
「それは、有り難いんだけど、迷惑じゃ……」
「両思いだって言うのに、鈍い二人へ私からの手助けよ」
慌てて問い掛けようとした俺に、彼女は楽しそうに笑いながらそう言って、もと来た道をそのまま戻って行く。
校舎の向こうへと消えていくその後姿を見送りながら、さり気なく言われたその言葉に、自分の顔が赤くなっていくのが分かった。
彼女は間違いなく、と自分が両思いだと、そう言ったのだ。
それは、自分にとって信じられない程嬉しい言葉。
思わずにやけそうになってしまう顔を何とか堪えながら、俺は勧められたその店へと移動する。
そこでコーヒーを頼み、飲み物が運ばれてくる頃に、自分の想い人がゆっくりと店の中へと入って来たのが見えた。
小さく肩で息をしているのは、きっと走ってここまで来てくれたのだろう。
その姿を見つけて、俺は片手を上げに自分の居場所を知らせる。
俺に気が付いたが、慌てて自分の方へと向かって来た。
「あ、あの、さんに聞いて……昨日の事なら、私も楽しかったから、気にしなくっても、全然良かったのに……」
目の前に来てすぐに言われたその言葉に、思わず笑みを浮かべてしまう。
戸惑っている表情を浮かべているだけど、その表情は何処か嬉しそうに見えるのは、あんな事を聞いたからだろうか?
「そう言われるとは思ってたんだけどな。俺が、に会いたかったのと、どうしても言って置きたい事があったんだ」
両思いなのだと、の友人が言ってくれた。
その言葉が、俺に勇気をくれる。
「……が好きだ…ずっと、好きだったんだ」
コーヒーで喉を潤してから、俺は真っ直ぐにを見ながら自分の気持ちを伝えた。
俺の気持ちを伝えた瞬間、の表情は信じられないと言うようなモノへと変わっていく。
「嘘、だって、八神君は、ずっと私にとって遠い人で……憧れの人だったから……」
自分の言葉が信じられないと言うように、呟かれたその言葉に、俺はもう一度真っ直ぐに彼女を見詰める。
「俺は、ずっとの事が好きだったんだ」
の目を見ながら、もう一度ハッキリと思いを伝えた。
そんな俺を前に、彼女は顔を両手で隠すように覆う。
俺はただ、そんなの様子を黙って見守る事しか出来ない。
もしかしたら泣いているのだろうか、その肩が小さく震えているのが分かる。
「……私も、ずっと八神君の事が、好きでした」
そして、漸くその顔を上げ俺を見詰るは流れていた涙を拭いながら、小さいけれど、はっきりと自分に聞える声で返事を返してくれた。
それは、自分にとっては嬉しい返事。
「…八神君に、好きだなんて言って貰えるなんて、そんな夢みたいな事があるなんて思いもしなかった……私を、好きなってくれて、有難う……」
真っ赤な顔をしながらも、柔らかな笑顔で言われたその言葉に、俺も自然と笑顔を返す。
「俺も、好きになってくれて、有難う……学校も違う俺だけど、これから俺と付き合ってくれますか?」
「……勿論、喜んで…」
俺の質問に、フワリと笑顔で返されたその言葉に、俺はこれ以上ない位の満面の笑顔を相手に返した。

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