時計を確認しながら、の家へと急ぐ。
 勿論ヒカリの事は、しっかりとタケル達に任せてきた。

 自分達はお台場にある団地に住んでいるので、皆がご近所と言ってもいいのだが、は一人離れた場所に住んでいるので、自分が迎えに行くのは当然だ。
 こんな深夜に、女の子を一人で歩かせる訳には行かない。

 しかも、その相手が自分にとって大切な相手だと言えば尚の事だ。

「あいつの事だから、もう準備は出来てるだろう」

 1・2分早いが、大丈夫だろうと、俺は呼び鈴を押す。
 それと同時にバタバタと中から賑やかな音が聞えて来た。

「こ、こんばんは、八神君」

 そして、中から出て来たのは着物姿の
 ニッコリと笑顔で出来てたその姿に一瞬見惚れてしまったのは、仕方ないだろう。
 その、まさか着物を着ているとは思わなくって本気で驚いてしまった。

 は、俺の性格を良く知っていてくれるから、デートの時は動きやすい格好をしてくる。
 だから、今日もそんな格好だと思っていたから、かなり驚かされたのだ。

 そりゃ、少しはの着物姿を見たいとは思ったのは否定しない。
 でも、俺の事を分かってくれているだからこそ、どんな格好でもいいと思っていたのだ。

「八神君?」

 何も反応しない俺に、が心配そうに声を掛けてくる。
 それに、漸く我に返った。

「いや、ちょっと以外だった……」
「えっ?」
、着物着てるとは思わなくって……」

 ちょっと眩しくって、思わず目を細めての事を見詰めてしまう。

 女の子って、本当着る物一つで全く違って見えるよな。
 妹が居るから、その事を良く知っていた筈なのに、今改めてそれを思い知らされた気分だ。

「へ、変かな?」
「似合ってるよ」

 俺の言葉に、が心配そうに問い掛けてきたそれに、自分らしくないと思っても素直にそんな言葉が出てきてしまう。
 俺の言葉に、がフワリと微笑えんだ。

「良かった」

その笑顔に、俺も笑顔を返す。
 だけど、何時までもここに居る訳にもいかない。
 約束の時間は決まっているのだ。

「んじゃ、行くか」
「そうだね」

 少しだけ、を他の奴に見せるのが勿体無いと思ってしまったけど、約束を破る訳には行かないので促すように歩き出す。
 それから何時ものように他愛ない事を話しながら、待ち合わせの場所へと移動した。

 当然のように、手を繋いで待ち合わせ場所に着いた俺達を、全員でからかって来たのは本当に些細な事だ。
 正直言えば、幸せな気持ちの方が大きかったから……。
 それはこっそりと、空からが自分の為に着物を着てくれたと言う事を聞かされたからかもしれない。

 最後の鐘が鳴る頃、気が付いたら俺はと二人きりだった。

「12時過ぎたね」

 もしかしたら、みんなが気を利かせてくれたのかもしれない。
 ポツリと呟かれたの言葉に、頷いて返す。

「ああ……今年も宜しく、
「こちらこそ、宜しくお願いします」

 俺の言葉に、ぺこりと頭を下げたに思わずお互いに顔を見合わせて笑ってしまう。


 今年も、また新しい年が始まった。
 でも、今年は隣に君と言う大切な存在が居る。
 来年も、同じように笑っていられるだろう。

 それは、これから先もずっと続く……それは、約束。

 大切な君への。
 コレが、初めの第一歩。






Back