ゾクリと感じたその気配に、俺は一瞬身震いする。

「八神君?」

 何か悪い予感がする時には、絶対こんな悪寒がするのだ。
 両腕を抱き締めるようにした俺に、が心配そうに声を掛けてくる。

 部活が終わってからと言う本当に短い時間でも放課後デート出来るようになったって言うのに、何でこんな嫌な予感なんて感じなきゃいけないんだ!

「な、何でもない」
「本当に?何だか、顔色悪いよ」

 心配そうに見詰めてくるは、漸く俺と一緒に居ても緊張すると言う事がなくなって、普段通り接するようになった。

 まぁ、相変わらず苗字呼びの上に君付けだけどなぁ……。
 俺も、相変わらず苗字呼び、本当は名前で呼びたいんだけど、まだその勇気は持てないらしい。
 勇気の紋章の保持者だって言うのに情けない話だよなぁ……。

「急に寒くなってきたから、風邪とかには気を付けてね」

 なおも心配そうに続けるに、思わず苦笑を零してしまう。
 人の事ばっかり気にするところが、らし過ぎる。

「俺はそんなに軟には出来てねぇよ。こそ風邪ひくなよ」
「私だって、そんなに軟じゃないよ!」

 俺が逆ににそう言えば、ムキになって返してきた。

「どうだか、の場合は寒そうだからって自分の上着を人に渡しそうだからな。少しは自分の事も考えろよ」

 そんなに、俺は小さくため息をついて例を上げて注意した。

 って、本当にありそうだから怖いんだよな、こいつの場合……。
 真冬だろうが、溺れてる何かの為に迷わず川にも飛び込んじまいそうだ……。
 いや、絶対に飛び込むだろうな、こいつの場合。

「そ、そんな事ない、と思う……そりゃ、マフラーぐらいは貸しちゃうかもだけど……」

 俺の注意に、弱々しく反論するに、俺は最大のため息一つ。
 って、マフラーなら貸すのかよ!って心の中で突っ込んだ俺は、可笑しくないよな?

「貸す事が悪い事だとは言わない。でも、ちゃんと場合は選べよ」

 だけど、そんなこいつを好きになったのだから、それを怒るなんて事は出来ない。
 それに、それは悪い事じゃない。人間助け合う事は、当然の事だ。
 ただ、現代人である自分達は、それを忘れてるけど、な。
 それは、本当は悲しい事だ。

「うん」

 ポンッと何時もヒカリにするように頭を軽く叩くように撫でてそう言えば、素直にが頷く。

 素直で優しい彼女。
 う〜ん、そう言えばこいつの事まだ空とヤマトしか知らないんだよなぁ・……。
 他のメンバーにも紹介した方がいいんだろうか?

 フッと過ぎったその考えに、先ほどの嫌な予感が思い出される。
 もしかしたら、誰かが感付いて動き出したんじゃ……。
 そう言えば、最近ヒカリが不機嫌だったのを思い出す。
 その理由は休みの日にも、全然構ってやれなかった野が原因。

 ああ、あの嫌な予感は、ヒカリか……。

 まぁ、ちょっと厄介かもしれないけど、こいつなら大丈夫だろう。
 そっと見詰めた先には、見上げてくるの笑顔があって、俺も素直に笑顔を返した。




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