「何、あんたってば今日は彼氏の学校に行くの?」
少しだけ照れくさそうに言われたの言葉に、私は呆れたように問い返す。
確か、この二人が付き合い始めて既に一ヶ月は過ぎていたと思うんだけど……。
私の質問に恥ずかしそうに頷くを見ながら、呆れてしまうのはどうしても止められない。
「あんた、まだあっちの学校に行ってなかったの?」
そう、全てはこの言葉に尽きるのだ。
「一ヶ月以上も付き合っていながら、しかも放課後デートを繰り返しているって言うのに、なんで相手の学校に行ってない訳?あんたも確かお台場小学校だったわよね?」
だから、思わず訪ねてしまった。
奥手なのにも、問題あり過ぎるわ。
「う、うん」
私の質問に、がビクビクしながら頷いて返す。
別に怒っている訳じゃないんだけど、どうやらすっかり私の勢いに押されているらしい。
「別に怒ってる訳じゃないのよ。呆れてるだけ……確か、あんたの彼氏はサッカー部だったわよね?」
怯えているに、私はため息をつく事で自分を落ち着かせてから、再度問い掛けた。
「うん、サッカー部で一年の時からレギュラーだって教えてくれたんだよ」
私の問い掛けに、が嬉しそうに言葉を返してくる。
だけど私は、その嬉しそうな表情を前にもう一度ため息をついた。
「だったら、彼氏の練習している姿を見たいとか思わなかったの?」
の返答に呆れながら、再度質問。
なんで、ここまで言わなきゃ分からないのかしら、この子は……。
「そ、そりゃ、見てみたいとは思ったけど、私なんかが行ったりすると練習の邪魔になると思って……」
再度質問したそれに、がオドオドした様子で返してくる。
そんなを前に、私は盛大なため息一つ。
「あのね、男って言うのは、好きな子の前では自分の有志を見せたいものなのよ!」
「そ、そんな事言っても……」
「それに、また『なんか』って言ったわね!私の前でそれ言うの禁止したでしょう!」
「ごめんにゃさい」
の言葉に、私はしっかりと言ってから、禁句の言葉を言った事に対してその頬を軽く抓って注意する。
それに、が素直に謝罪の言葉を口にした。
変な言葉になっているのは、私が頬を抓っているからだろう。
「それなら、どうして今日は行く気になった訳?」
だけど、ここで一つの疑問に行き着く。
だっては、嬉しそうに彼の学校へ練習している姿を見に行くのだと言っていたのだから……。
「あのね、昨日初めて八神君の妹さんに会ったの」
私の質問に、が何処か嬉しそうに説明し始めた。
「ああ、あんたが彼氏と付き合うきっかけになった妹さんね。それでどうして、学校に行くことに……」
でも、その言われた内容では、納得できなくって再度問い掛けた。
私のその言葉に、が言い難そうに言葉を探して口を開く。
「ええっとね、その、本当は何時もの場所で待ち合わせする予定だったんだけど、八神君が冗談で練習見に来るかって言ってくれて……そしたら、妹さん達が、私と一緒に練習を見に行くって事になって……」
って、結局一人では見に行けない訳ね、この子は……。
その話を聞いて、またしてもため息。
全く、この子の話を聞いてると一日で何度ため息をついているか分からなくなるわ。
まぁ、それでもこの子の傍に居るのは、私がこの子の事を気に入っているからなんだけど……。
「さん?」
再度盛大なため息をついた私に、が心配そうに私の名前を呼ぶ。
そんなを前に、私は思わず苦笑を零した。
本当に、この子は放って置けないのだ。なんて言うのか、強いくせに弱くって、弱いと思ってもやっぱり強くって、そして、自然と人を和ませてくれる。
私のように我の強い人間には、とっても心休まる存在。
「何でもないわよ、今日はしっかりと彼氏の有志を見てきなさい。それで、今度は私も一緒に行くから、その時ちゃんと案内できるようにね」
どんなに呆れてしまっても、それは全てらしくって、苦笑だけで終わってしまう。
まぁ、彼氏には、しっかりとこの子の事をお願いしなくっちゃだわ。
なんだから、母親にでもなった気分……。

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