違う学校に通う彼女との待合わせ場所に、俺はその時間よりもかなり早めに来ていた。
多分そんな俺を知ったら、ヤマトはビックリするだろう。
俺的には、いつも時間ギリギリか下手をすると遅刻なんて事が結構あるのだから……。
だけど、自分の好きになった相手は、きっと約束の時間よりも前に来るだろう確信があったから、俺はこうして約束の時間の30分前に待ち合わせ場所に来ているのだ。
そう、彼女を待たせたくないと言う気持ちから……。
「八神君!」
待つ事15分。
名前を呼ばれて、俺はそちらへと視線を向ける。
その先には、俺の姿を見つけて慌てて走ってくるの姿。
予想通り、待ち合わせ時間よりも15分早い。
「ご、ごめんなさい。私、遅れて……」
慌てて走って来た彼女が、俺の直ぐ傍に来ると少しだけ荒くなった息を整えた。
「まだ時間じゃねぇよ。俺が少し早く着いただけ」
そして、申し訳なさそうに謝罪するに、俺は笑顔で答える。
「良かった。でも、八神君早いんだね……」
笑顔で返した俺に、はホッと胸を撫で下ろすような仕草をして同じように笑顔を返してくる。
そんなの姿は、普通のTシャツの上に七部袖のシャツを着て、膝までのジーパンと言う動き易そうな格好だ。
うん、俺の事分かってるよな、やっぱり。
の格好を感心しながら見ていた俺は、が一瞬考えるような表情を見せたのを見逃さず、小さくため息をつく。
「だからって、俺との待ち合わせにはもっと早く来ようなんて思うなよ。今日は偶々早かっただけなんだからな!」
間違いなく、が考えただろう事を口に出す。
そして、しっかりと釘をさす事も忘れない。
「そ、そんな事しないよ!」
俺のその言葉に、が慌てて否定するが、その顔には図星だと書かれていた。
いや、予想通りの反応だし、それがらしいとは思うんだけど、そうなったら俺が大変だろうが!
「あのなぁ、彼女待たせる男にはなりたくねぇから、出来るだけ時間通りに来てくれ」
小さくため息をついて、俺がしっかりとにそう言えば、『彼女』と言う言葉に反応して、その顔がボンッと赤くなる。
「わ、分かった。出来るだけ頑張るね……」
顔を真っ赤にして、俺の言葉に何とか返事を返す。
本当に、分かってんだろうか?
一応、俺達が付き合い始めたと言う事を……。
そりゃ、まだ1週間も過ぎていない状態だから、自覚を持てと言う方が無理な話かもしれない。
それでも、今日が初デートだと言う事を、ちゃんと自覚しているのだろうか?
「えっと、あのね、今更なんだけど、おはよう、八神君」
内心頭を抱えたくなっている俺を他所に、は何とか思考を正常に戻そうとしてか一度深呼吸をすると、思い出した事に少しだけ照れながら朝の挨拶をしてきた。
「ああ、そう言えば、挨拶もしてなかったんだよなぁ・・・・・・おはよう、」
そんな彼女の笑顔を前に、俺も今はじめて気が付いて、挨拶を返す。

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