「あ、あの、本当に私がお邪魔しちゃってもいいの?」
8月1日。
今日と言う日が目の前の相手にとって、どれだけ大切な日なのかと言う事は前から聞かされていた。
だから、仲間のみんなと集まる事を聞いていた私は、何で今ここに居るのか理由が分からないんですが
だって、私はみんなの仲間として入っていけるよな立場の人間じゃないんだもん!
「いいから、ほらさっさと行くぞ」
って、何度も質問する私の腕を取って、太一君が前を歩く。
高校に入って、私と太一君は同じ学校のクラスメイトになる事が出来た。
勿論、高校でも太一君はとってもモテてます。
はい、こっそりとファンクラブがあることも、私は知っていますよ。
そんな相手が自分の恋人だと言うのは、何と言うか場違いと言うか、その本当に私でいいのかと毎日考えさせられてしまう。
私だって、太一君の事を他の子達と同じように大好きなんだけど、自分の容姿に自信がないのでどうしてもビクビクしてしまうのは止められない。
太一君って呼ぶのも、未だにドキドキしっぱなしです。
って、そうじゃなくって!
どうして私は、選ばれし子供達が集まると言うその場所に引っ張って行かれているんでしょうか?
だって、どう考えても私は部外者なんですけど?!
「た、太一君」
「大丈夫だって!急ぐぞ!!」
私の腕を掴んだまま、太一君が走り出す。
当然腕を掴まれている私も一緒に走る事になる訳で、夏真っ盛りの中汗だくになりながら道を走った。
「ああ、来たわね。太一にちゃん!」
そして、見えてきたのはお台場のシンボルとなっている某テレビ局。
木陰になっているその場所に、よく見知った姿を見つける事が出来た。
そして聞こえてきた声に、顔を上げれば手を上げている空さんの姿が見える。
「悪い、遅れちまったか?」
「時間ギリギリ。まぁ、突然ちゃんを連れてくるように言ったから、遅れてくると思ってたんだけどね」
そんな姿を前に、太一君が謝罪の言葉を口にする。
それに時間を確認して、空さんが笑みを浮かべた。
えっと、私を連れてくるように言ったって、何で、私なんですか?!
「あ、あの、空さん」
「こんにちは、久し振りね、ちゃん」
「あっ、はい、こんにちは、です……あの……」
一人状況が理解出来ずに質問しようと口を開いたら、挨拶してくれたので慌ててそれに答えてから、困惑して問い掛けようとしたんだけど、何て質問したらいいのか分からずに言葉が続かない。
「もう、お兄ちゃんたら、説明せずに連れてきたんでしょう!」
どうしようかと困っている私に、ヒカリちゃんが呆れたように太一君に文句を言う。
はい、何も説明を受けてません。
今日と言う日が、選ばれし子供である太一君達が旅をする切欠になった話は聞いてるから、みんなで集まる話は聞いてたんだけど
それは、自分には正直言って、入り込むことの出来ない世界で、だから今日は太一君には会えないなぁと思っていたのに、突然電話を貰って『今から迎えに行くから、準備しとけよ』って言われて、今に至る。
何がどうして、私が今ここに居るのか本当に理由が分かりません。
「あ〜っ、先輩お気の毒です」
って苦笑交じりに声を掛けてきたのは、2つ下の京ちゃん。
彼女とはお台場小学校の時に同じ委員会だったので、良く知っている。
「さん、こんにちはっす!太一先輩に引っ張ってこられたんすか?」
そんな彼女に私も苦笑を返すとヒカリちゃんと同じ年の大輔君が話しかけてきた。
彼の事を私が知っているのは、太一君繋がりでだ。
そうじゃなければ、きっとこんなに話すことはなかったと思うんだよね、でも、彼は私の事を知っていたのには、ビックリしたんだけど、何で知ってたんだろう?
「大輔君もこんにちは、えっと、何で引っ張ってこられたのか、良く分かってないんだけど……」
声を掛けてきた大輔君に返事を返して、困ったように笑う。
本当に、何で私がここに居るのか分からないんです。
「おいおい、もう無関係じゃねぇんだから、ここに居るに決まってるだろう」
「そうですね、先輩ですから、僕達は気にしませんよ。全ての事情を知っててくださってるんですから」
困ったように言った私の言葉に、呆れたような太一君の言葉と一つ年下の泉君の言葉が続けられる。
確かに、事情は全部太一君から聞いているんだけど、私は実際に係わりがあった訳じゃない。
だから、ここに参加する資格なんてないように思うんですけど
「いいんじゃねぇのか、お前が参加するの誰も否定してないんだから」
そう言う問題じゃないと思うんですけど、石田君!!
だって、大事な思い出の日に部外者が参加するのは、その場がしらけると言うか何と言うか
「ボクも兄さんの意見に賛成。さんは、もうボク等にとっては仲間ですからね」
って、ニコニコ笑顔でとんでもない事をさらりと言わないで下さい!
仲間って言ってもらえるのはすっごく嬉しい事なんだけど、そんな凄い人達の中に私なんかが入ったら罰当たりです!
「って、わけだから、諦めて参加決定な」
「……はい…」
内心で否定している私に気付いているのかいないのか、ニッカリと笑顔で言われた太一君のその言葉に頷く事しか出来ない。
そんな訳で、私は選ばれし子供達と一緒に、今日と言う日を過ごす事になった。
「別段、何かをする訳じゃないのよ。ただね、思い出の場所を皆で見て回るだけなの」
そう言って、説明してくれたのは空さん。
何処か寂しそうに言われたのは、もう会えなくなってしまったパートナーの事を考えているからだと思う。
ちなみに、私が城ノ内さんから空さん呼びになったのは、本人に言われたからです。
空さんが、私の事をちゃんって呼んでくれるようになったのは、とっても嬉しいんだけど
だから、自分の事も名前で呼んで欲しいと言われたためだ。
本当は、呼び捨てかちゃん付けにして呼んでもらいたかったみたいなんだけど、さん付けが私には精一杯でした。
「お台場に、光が丘……キャンプ場……もしかしたら、皆にまた会えるんじゃないかと思うんです」
ヒカリちゃんが、そっと私の隣に並んで口を開く。
その瞳は、真っ直ぐ前を見ていて、きっと昔を思い出しているんだと思う。
「私も、太一君のパートナーに会いたいって思ってるんだ」
「さん?」
そんなヒカリちゃんに、私はこっそりと口を開いた。
突然の私の言葉に、ヒカリちゃんが驚いたように私を見る。
「会って、お礼を言いたかったの……太一君や皆を守ってくれて有難うって、それから、この世界を守ってくれて本当に有難うって……」
この世界を守ってくれたのはここに居る皆も同じだけど、それは皆のパートナーが居なければ出来なかったことだから
だから、お礼を言いたかった。
この世界を、大切な人を守ってくれて有難う、と
「会えれば、私のことも認めてくれるかな?」
「勿論です!」
だから、そんな彼らのパートナーに私も認めてもらいたかった。
太一君の彼女として
質問するように言った私の言葉に、ヒカリちゃんが力強く頷いてくれる。
「有難う」
即答してくれたヒカリちゃんに笑顔でお礼を言い、眩しい空を見上げた。
もしも、この空が彼らの世界に繋がっているのなら、この思いを届けてください。
私を、貴方の大切なパートナーの相手だと認めてくれますか、アグモン。
『勿論、タイチが選んだ相手なんだから、ボクは大歓迎だよ、』
「えっ?」
「どうかしましたか、さん?」
聞こえてきた声に、思わず驚きの声を上げる。
そんな私に、ヒカリちゃんが心配そうに声を掛けてきた。
「ううん、なんでもないの……」
「おーい!にヒカリ!移動するぞ」
「分かった、行きましょうさん」
「そうだね」
そんなヒカリちゃんに首を振って返せば、太一君が私達を呼ぶ声が聞こえて、それにヒカリちゃんが返事を返し私を促すように声を掛けてくるのに、頷いて返す。
それから皆が中へと入っていくのに続いて建物の中に入ろうとしたその足を止めて、もう一度空を振り返った。
さっきの声は、貴方ですか?
太一君の大切な大切なパートナーのアグモン。
もしそうだとしたら、私の事を認めてもらったと思ってもいいのかな?
何時か、本当に何時か、貴方に会う事が出来たら、ちゃんとお礼を言いたい。
貴方は、何て返してくれるかな?
『ボクからも、お礼を言うよ。タイチを好きになってくれて有難う。ボクのことも、好きになってくれるかぁ、?』

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