今日は、バレンタインデー。
 勿論、八神くんに渡すべくして、生まれて初めて作った手作りチョコ。
 先生が良くって、何とか食べられそうなものは出来たんだけど 私なんかが作ったモノでも、八神くんが喜んでくれればいいんだけど……

 き、緊張するよぉ〜

 チラリと、時計に視線を向ける。
 何時ものように、部活がある八神くんを待って、私は図書館で時間を潰す。
 最近は、ヒカリちゃんやタケルくんがここに来てくれるようになったんだけど、小学生を遅くまで引き止めている訳にも行かないので、何時も先に帰してしまう。
 ヒカリちゃんにはちょっとだけ文句を言われたんだけど、やっぱり女の子だから、夜道を歩かせるのは心配なので、許してください……。
 そう言った私に、タケルくんが何かをヒカリちゃんに言ったら、素直に納得してくれた。

 一体、何を言ったんだろう……。

 で、八神くんには悪いと思ったんだけど、タケルくんとヒカリちゃんにバレンタインのチョコレートを渡して先に帰ってもらったのは、もう既に1時間も前。
 外は暗くなってきて、そろそろ八神くんが来る時間だ。

「う〜っ、緊張するよ〜」

 世の中の女の子は、誰もが通る道なのだろうか?
 でも、付き合い始めてもう一年近くにもなるって言うのに、こんなに緊張するのはどうしてだろう…。
 今でも、八神くん呼び出し……あれ?そう言えば最近……

」 

 突然名前を呼ばれて振り返る。
 そこには、自分が今まで考えていた人が居て、自然と顔が赤くなったのが自分でも分かってしまった。

「悪い、待たせたよな?」

 自分の方に歩いて来るその人に、慌てて首を横に振った。

「そ、そんな事ないよ。えっと、今日も部活お疲れ様」

 慌てて自分の前にあった教材などを片付けて、笑顔。
 って、笑顔引き攣ってないかな、ちょっと心配。
 頑張って笑顔を見せた私に、八神くんも笑みを返してくれた。

「んじゃ、帰るか」

 何時もの言葉を聞いて、私も頷く。
 って、チョコレート何時渡そう……

「今日は、また一段と寒いね」

 外に出た瞬間、冷たい空気を感じて、私は小さく震えてしまう。
 八神くんは、こんな寒い中でも部活をしていたのに、私は暖房の効いた部屋の中に居て申し訳ないです。

「まぁ、ちょっと寒いな」

 私の言葉に、八神くんが返事を返してくる。

 えっと、ちょっとなんだね、八神くん……私、寒がりな方じゃないと思ってたんだけど、認識改めた方がイイのかなぁ……
 って、沈黙。
 ど、どうしよう、何にも話する事がないよ。

 今日は、八神くんも、何時ものように話し掛けて来ないし……。

「あの!」
「あのな」

 沈黙に耐え切れなくなって口を開けば、八神くんのそれと重なってしまった。
 う〜っ、タイミング悪よ、私。

「あっ、八神くんから、ぞうぞ!」
「いや、からでいいぜ」

 って、二人で譲り合ってる場合じゃないよ!
 また、暫く沈黙。
 今日は、八神くんも、何か何時もと雰囲気違うんだけど、何かあったのかな?

「そ、それじゃ、私から言うね……えっと、コレ!」

 その沈黙に耐えられなくなって、私は鞄の中からチョコレートを取り出して、八神くんに差し出した。

「味はね、ヒカリちゃんが先生してくれたから、大丈夫だと思うんだけど……生まれて初めて、手作りしたから、形は悪くなっちゃった……」

 顔が赤くなるのは、どうしても止められない。
 寒いのに、今は顔がほてって、暖かい。

「……サンキュ、

 ドキドキしながら、八神くんが受け取ってくれるのか心配していたんだけど、すっごく嬉しそうな笑顔で受け取ってくれました。
 うわ〜、蕩けるような優しい笑顔だよ。


 その後、八神くんが言いかけた事を聞いて、思わず笑ってしまった。
 チョコレートもらえるか心配だたって……。
 うん、頑張ってチョコレート作って良かった。


 でも、ヒカリちゃんとタケルくんに先に渡した事を知ったらちょっとだけ不機嫌になってしまった八神くんに、来年は一番に渡すからって言えば、何とか機嫌を直してもらえた。
 うん、来年も、ちゃんと八神くんにチョコレート渡せればいいな。






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