どうして何時も邪魔ばかりされるのだろうか?
いや、そんな風に思うのは、間違いかも知れない、だが、どうしても思ってしまうのだ。
どうして、全員で、俺と太一の邪魔ばっかりするんだ!!
君の笑顔を護るため
「ヤマトさん、いい天気で本当に良かったですね」
ニコニコと笑顔を見せているのに、恐怖を感じずにいられない目の前のそれに、俺はただ苦笑を零す。
「お兄ちゃんも、楽しみにしてたんだよね、今日vv」
こちらもニコニコと笑顔を見せているのに、その後ろには邪悪な尻尾が見えそうな気配を感じて、俺はただ盛大にため息をついた。
確かに、ずっと楽しみにしていたのだ。
それは、否定しない。
だが、それは太一と二人だけで遊びに行く予定だったからなのだ。
「折角遊びに来てるって言うのに、何ため息ついてんだ?そんなんじゃ、幸せが逃げちまうぜ、ヤマト」
こちらは、ニヤニヤ笑みを浮かべている親友の言葉。
誰の所為で、俺が盛大なため息をついていると思っているんだ、こいつ等は!!!!
本当に、何が悲しくって、デートの邪魔をされなければいけないのだろう。
相手の妹と、自分の弟。
そして、親友にまで……。
確かに、口を滑らせた俺が悪かったと思う、思うが、全員で邪魔しにくる事はないと思うのだ。
「ヤマト、大丈夫か?」
そして、最後に漸く自分が一目惚れした相手が声を掛けてきた。
心配そうな表情で見詰められて、ただ力無く笑い掛ける。
何が悲しくって、初デートを邪魔されなくっては、いけないんだろう。
いや、もしかしてデートと思っているのは俺だけで、太一はそんな事考えていないのかも……。
タケルと智成は、俺が連れてきたけど、ヒカリちゃんは太一が連れてきた訳で……。
やっぱり、俺と二人きりになるのが嫌で、ヒカリちゃんにお願いしたのかも……。
「あっ!違いますよ。私が無理言ってお兄ちゃんにお願いしたんですよ。だって、まだヤマトさんとの仲を認めていませんから」
心の中で考えて、落ち込みかけた瞬間、ニッコリ笑顔で説明されたそれに、少しだけ浮上する。
「お兄ちゃん、そんなに太一さんと二人きりになりたかったんだ。でも、ボクだって太一さんを狙っているんだから、邪魔するのは、当たり前でしょう?」
しかし、続けて言われたタケルのそれに、俺は不機嫌そのままに相手を睨み付けた。
「そんなに睨んでも、怖くないよ。あっ!太一さん次はあれに一緒に乗りませんか?」
俺の睨み付けを完全に無視して、タケルが俺を心配そうに見詰めている太一の腕に自分の腕を回す。
それに、太一が少しだけ困ったような表情を見せた。
「いや、でも、ヤマトなんか変だし……」
「お兄ちゃんが変なのは、何時もの事ですよ!それよりも、ボクは、久し振りに太一さんに会えたから、嬉しいなvv」
ニコニコ笑顔で、サラリと酷い事を言って、嬉しそうな表情を見せる。
確かに、そう言われてみれば、タケルが太一に会うのは、久し振りになるんだよなぁ。
俺は、毎日会っていたけど……。
「そう言えば、あのテスト勉強以来だよな」
思い出した事に、ちょっと優越感を感じていた俺の耳に、太一も思い出したように口を開く。
それに、タケルが、少しだけ寂しそうな表情を見せた。
「そうですよ。だから、また遊びに来てくださいね、太一さんvv」
「ああ、また今度頼むな」
ニッコリと笑顔で頷く太一に、俺も幸せ気分を味わってしまう。
どうして、人を幸せにするような笑顔を浮かべられるんだろう、太一は……。
「八神、あいつの事なら放っておいても大丈夫だから、俺たちは遊びに行こうぜ」
太一の笑顔に、幸せを感じていた俺の耳に、今度は智成の声が聞えてくる。
いや、だからどうして、俺と太一の邪魔をするんだ?
「そうですよ、お兄ちゃんの事なら心配ありませんから、楽しく遊びましょう、太一さん」
我が弟ながら、酷い事を言ってくれる。
昔は、あんなに可愛かったのに……。
「ヤマトさん。タケルくんの方が強引みたいですね」
そして、ニッコリと俺に笑顔を向けて、ヒカリちゃんが言ったその言葉に、俺はただ盛大なため息をついた。
こいつ等の魂胆は、理解できた。
兎に角、俺と太一を引き離したいんだ。
太一と俺のデート……って、そう思ってるのは、やっぱり俺だけなんだろうか?
ヒカリちゃんを誘ったのは、太一じゃないとしても、俺と一緒に出掛ける事を、太一は一体どう思ってるんだろう?
目の前では、3人を相手に困ったような笑顔を見せている太一の姿がある。
それを見詰めながら、俺は本日何度目になるか分からないため息をついた。
「結構、遊んだな」
智成が腕時計を確認しながら呟いたその言葉に、俺も腕時計に視線を向ける。
既に6時を示しているそれに、俺は疲労を隠せない。
散々俺と太一が二人きりになるのを邪魔してくれた連中は、これ以上ないほど楽しそうなのに、俺は対照的に不幸な気分だ。
「んじゃ、俺たちは帰る。後は、八神に任せるな」
この後は帰るだけだろうと、小さくため息をついた瞬間、言われたその言葉に、俺は驚いて顔を上げる。
「ヒカリちゃんは、ボクが責任を持って送りますね」
ニッコリと笑顔で言われたそれに、ヒカリも隣で笑う。
言われている言葉の意味が分からずに、俺はただ首を傾げた。
「そんな訳だから、最後ぐらい邪魔しないで帰ってやるよ、ヤマト」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて、智成が俺の肩を叩く。
その言葉に、俺の気分は一気に浮上した。
自分達に別れの言葉を投げ掛けて、智成達が遠去かって行くのを見送る。
そんな中、太一は何も言わない。
「太一?」
3人の姿が見えなくなってから、何も言わない太一に、不安を感じて、そっと隣に視線を向けた。
その瞬間、俺は少しだけ困ったような笑みを浮かべている太一と目が合う。
「……本当、お節介だよなぁ……」
少しだけ赤くなっているのは、夕日の所為なのだろうか?
「ヤマト、もう少し、遊んでいこうぜ」
そして、はにかんだような笑顔で、そっと手を差し伸べてくれる太一。。
「……太一」
「俺だって、ヤマトと二人きりの時間、持ちたかったんだって言ったら、信じるか?」
差し伸べられた手とその表情、そして何よりも言われたその言葉が、俺の心を幸せにしてくれる。
きっと、俺は太一には、一生叶わないと思う。
「知ってたか?ヒカリも本当は、ヤマトの事、認めてるんだぜ。口では、ああ言ってるけど」
ずっと俺が気にしていた事を、優しい笑顔と共に言われて、俺は少しだけ驚いたように太一を見る。 だって、ヒカリちゃんは、俺の事をライバル視してるし、何よりも、嫌っていると思っていたから……。
「嫌いなやつに、あんな笑顔は見せられないよ」
俺の心を読んだ太一が、楽しそうに笑う。
本当に、こいつには勝てないと思う一瞬。
「だから、ヤマトが心配するような事は無いだろう?」
ニッコリと満面の笑顔で言われたそれに、俺は思わず苦笑を零す。
守りたいと思っているのに、逆に守られているように感じられるのはどうしてだろう。
誰よりも、強くって、そして弱い相手。だからこそ優しくって、人の心の先を読む。
「……俺には、お前の笑顔を守れないのかも……」
「そんな事無いだろう?俺は、ヤマトが居るから、こうやって笑っていられるんだ。だから、ちゃんと最後まで面倒見てくれよな」
俺の小さく呟いたそれに、太一が笑顔で否定する。
どうして、俺の心を救ってくれる言葉をくれるんだろう?
どうして、俺が欲しいと思う言葉が分かるんだろう??
「んじゃ、もう少し遊んで行こう。時間が勿体無いからな!」
目の前で、笑う君のその笑顔。ずっと、君の笑顔を守りたいと思っていた。
俺に、君の笑顔が守れるのかなんて、そんな事分からなかったけれど、それだけは誰にも譲りたいくない、俺の願い。
君の笑顔を守るために、俺は、今よりも強くなろう。
約束する。
絶対に!!

『ゲートオープン記念日』にUPしました小説の再UPです。
『君笑顔』シリーズで、題名を頂き、駄文を書かせていただきました。
夏休みの一コマだと思っていただければ、幸いです。
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