「ところでヤマト……」

 突然名前を呼ばれた瞬間、ヤマトが少しだけ赤くなった顔を俺に向ける。

「何だ?」

 赤い顔なのに、すっごく幸せそうに見えるのは、俺の気のせいだろうか??
 幸せ?って、えっと、俺はヤマトとキスして……キ、キス?!
 ヤ、ヤバイ、何も考えてなかったけど、俺って、ヤマトとキスしたんだ……どうしよう……。

 思い出した瞬間、自分の顔が赤くなるのが分かる。
 お互いに顔を赤くしたまま、その場に突っ立て居るのは、はっきり言って間抜けかもしれない。

 この、俺が作った世界で、今はヤマトと二人だけの………。
 ヤバイ…なんか、そんな事考えたら、ますます意識してきた……。

 肉親以外に、人を好きになった事なんて無いし、ましてや、人から好きだと言われた事なんてないから……。

「太一?」

 言いかけたまま何も言わない俺を心配するように、ヤマトが名前を呼ぶ。
 それにすら、今は盛大に驚いてしまえる自分が居る。

「あっ、あの……だから……」

 一体自分がなにを言いたいのか、本人にも分からないなんて、本当に情けない。

 そんな事よりも、本当に緊張する……。
 好きな人の前では、みんなこんな気持ちを味わうんだろうか?

 不思議そうに自分を見詰めてくるヤマトの視線を感じながら、俺は本当に内心焦っていた。
 だって、今までだって緊張した気持ちは持っていたけど、それはこんなに心臓に悪いモノじゃなかった。

 胸がドキドキするのを止められない……。
 言わなければいけない事があるのに……。

「言いたい事は、ちゃんと言ってくれないと、分からない」

 そりゃそうだ。俺みたいに人の心が読めるわけじゃないから……。
 って、俺だって何時だって人の心を読んでいる訳じゃないけど……。
 いや、そうじゃなくって……だから、ちゃんと言わないと、ヤマトだって、困るわけだし……。

 必死に自分に言い聞かせて、俺は意を決して顔を上げてヤマトを見た。
 その瞬間、顔が赤くなるのは止められない。

「太一、大丈夫か?」

 心配そうに俺の顔を覗き込んでくるヤマトに、大きく頷く。

 ああ、駄目だ……どうして、こんなにヤマトの顔って綺麗なんだろう……。
 ドキドキするなって言うのが無理な話だと思うのは、俺の身勝手な言い分だろうか?

「……ヤ、ヤマト……」

 金色の髪が月明かりに光ってる。
 それに、青い瞳が、吸い込まれそうな錯覚。

「……あのさぁ……」
「ああ??」

 思わず見惚れるヤマトの顔を前に、俺はぐっと手に力を込めて、言葉を続けようと努力した。

「……ヤマトは…」
「俺が、どうかしたのか?」

 しかし、真っ直ぐに見詰めてくるその瞳に堪えられなくって、思わず目を閉じてしまう。
 そして、大きく息を吐き出した。
 たった一言尋ねるのに、こんなに時間が掛かるなんて、本当に自分自身が信じられない……。

「太一?」

 盛大なため息と同時に、もう一度名前を呼ばれる。
 それに俺は、大きく頷いて、もう一度チャレンジ。

「……ここから、帰る方法、知ってるのか?」

 そして、漸く疑問を口にした。
 その瞬間、予想も出来なかった風が吹く。
 真っ直ぐに見詰めるヤマトの表情は、なんとも言えない複雑な表情をしていた。

「ヤマト?」

 思わず心配になってヤマトの名前を呼べば、強く方を掴まれる。

「太一!お前は、何時もどうやってここから帰ってたんだ??」

 そして、返された疑問に、俺はここから戻る時の事を考えてみた。

 何時も、ここにから戻る時は……。

「誰かの声で、目が覚めた……」

 大概それは、妹のヒカリだったけれど、ここから戻れるのは、誰かが自分を呼び起こしてくれた時だけ……。
 そして、自分が目を覚ましたいと思った時と重ならなければ意味が無い。

「……俺は、何時もタケルに起こされて……後は、太一が無理やり……」
「そっか、それじゃ、ヤマトが先に起きて、俺を起こしてくれよ」
「嫌だ!」

 俺の提案に、ヤマトが大きく首を振った。

「……ヒカリちゃんが起こしてくれるのを待とう、一緒に!!」

 最後の言葉が、強調される。
 それは、少しだけ照れるけど、やっぱり嬉しいと思える言葉。

「……うん」

 だから、俺も素直に頷く。
 だって、一人でこの場所には、もう居たくは無いから……。

 ぎゅっと抱き締めてくれる腕は、もう俺にとってとっても大切な居場所。
 そう思うと、ちょっとだけもう少しここに居たいなんて、思ってしまう。

 ヤマトの腕の中は、居心地がいいから……。

 な〜んて、きっとそんな事、ヤマトには、いえないけどな。


  いらっしゃいませ!
  一応、私は止めましたよ。ここに来たと言う方は、覚悟の上でいらっしゃっていると思いますので……。
  なので、言い訳は致しません。
  だって、それでもいいって言ってくださったと信じていますから……。
  そして、乙女モードの太一さん。きっと、ヒカリちゃんは、起こすタイミングに戸惑っている事でしょう。(笑)

  これをもちまして、『君が笑顔を見せる時』を完結いたします!
  長い間のお付き合い、心から感謝いたしますね。こんな、おまけにまで、来てくださって有難うございました。