悲鳴が聞える。
 それは、誰の?

「いや!!太一、目を開けて!!!」
「お兄ちゃん!!」
「太一!!!!」

 泣き叫ぶようなその声は、自分が大切だとそう思っている人達の叫び声。

 何を泣いているんだ
 俺は、ここに居るのに……

「どうして、こんな事に、僕達は、貴方を失う為に戦っていたんじゃありません!!」

 失う?誰を?
 分からない、これは、一体何時の記憶。

 みんなの目の前に倒れているのは………おれ?

「タイチ、タイチお願いだから、目を開けてよ、タイチ!!!!!」

 大好きな大切な人達が泣いている。
 泣かして居るのは、俺?
 知らない、こんな事。だからこれは、夢……。

 ……本当に、これは夢?
 俺は、知らない事?

 でも、確かに今、それは目の前にあって、俺は皆に何も返す事が出来ない。

「太一さん!!」

 縋り付くみんなの姿。
 ボロボロの姿をしている俺は、ピクリとも動かない。
 でも、俺はそれを見詰めている。

 みんなの事を見ているのだから、やっぱりこれは夢?
 夢だとした、なんて生生しい夢だろう。

 みんなの涙の暖かさを感じる……。

「太一!!!!」

 悲痛な叫びが、俺の耳に届く。

 本当に、これは夢なのだろうか?
 もしかして、これは現実?俺は、一度死んだ??

 なら、今ここに居る俺は、一体誰?

「タイチ!」

 心配気な声が聞えてきて、俺はゆっくりと目を開いた。

 ああ、やっぱり夢だったんだ。
 そう思って、そっと息を吐き出す。

「おはよう、アグモン」

 心配そうに自分を見詰めてくる緑色の瞳に笑顔を見せる。
 あれは、夢。
 だって、俺は今ここに居るんだから……。

「タイチ、魘されてたみたいだけど、大丈夫?」

 心配そうに見詰めてくるアグモンが質問してきたそれに、俺はただ困ったような笑みを見せた。

「……夢を、見ていたんだ……」
「タイチ?」

 ありえない、そんな夢を……。
 だって、俺はここに存在している。だから、アレは、ただの夢。

「起こしてくれて有難う、アグモン」

 あの後、どうなったのか分からない。

 だって、アレはただの夢なのだから……。
 そう、ただの、夢……。

 それは、悪夢と言う夢。