ずっと私を慰めてくれていたピンク色の鳥の姿をしたデジモンと言う存在のお陰で、少しずつ落ち着きを取り戻す事が出来た。
 行き成り起こった事に訳が分からなくって、パニック状態を起こしていた事は、否定できない。
 だけど、そんな私を心配してくれたその優しさが、とても心地よく感じられる。
 初めて会った筈なのに、懐かしいと安心している自分を感じながら、そっと息を吐き出した。

 この気持ちは、あの少年にあった時にも感じた事。
 心が、落ち着きを取り戻してくる。

 そう感じながら、瞳を開いて顔を上げた瞬間、部屋の中に入ってきた人間の姿をした大きなそれが目に入って、思わず悲鳴を上げてしまう。
 また、同じように攻撃されると思って、私はぎゅっと自分の体を抱き締めた。

「大丈夫よ、ソラ」

 そんな自分を、今までと同じように、慰めてくれる声。

「驚かせたようだな。すまない……ワタシは、危害を加えるつもりはないので、安心して欲しい」

 続けて、慌てて自分に謝罪の言葉が聞えてきて、そっと顔を上げた。
 突然見た時は、怖いと思ったのに、今は、戸惑いを表しているその表情は、とっても優しい瞳をしているのに、気が付いて、ほっと、息を吐き出す。

「そうだよ、こう見えても、いいデジモンだから、安心して」

 私が悲鳴をあげた事で、慌てている彼へのフォローだろう。
 あのオレンジ色の恐竜が、少しだけ間の抜けたようにニッコリと笑顔を見せた。

 だけど、その言い方と言葉は、フォローになってないと思うんだけど……。
 そう思ったのは、自分だけではないらしく、あの少年が、複雑な表情で小さくため息をつくと口を開いた。

「____、フォローになってない」
「えっ?そうかなぁ?十分フォローになってると思うんだけど……」

 呆れたように呟かれた言葉に、不思議そうにオレンジ色の恐竜が不思議そうに首を傾げる。
 そんな微笑ましい姿に、思わず安心して、思わず笑ってしまう。

「どうかなさたんですか?」

 そんな中入って来たのは、昔サッカークラブで一緒だった一つ年下の男の子、泉光子郎くん。
 この状態を不思議そうに質問してくる彼に、少年が苦笑を零した。

「いや、空が、____に驚いただけだ」

 質問された内容に、彼が素直に返事を返す。

 私が、何に驚いたの??

 名前を呼ばれた瞬間、彼が何かを言ったのは聞えたのだけれど、肝心の言葉が聞えなくって、思わず首を傾げてしまう。
 そう言えば、あのオレンジ色の恐竜に話しかけた時も、聞こえない言葉があった。

「ああ、そう言う事ですか……それは、仕方ありませんよ」

 だけど、その言葉で納得したように、泉くんが頷いた。

「光子郎?」
「この状況を見れば、分かります」

 納得した事に驚いたて居る少年が、不思議そうに泉くんを見詰めている。
 それに、少しだけ困ったような表情を見せながらも、理由を答える泉くんのその言葉に、私も納得したように小さく頷いた。
 確かに、この状況を見れば、誰でも分かってくれるかも……。

「僕は、飲み物でも準備してきますので、武ノ内先輩への説明は、お願いいたします」
「えっ?あっ、ああ……」
「石田先輩にも、説明は必要でしょう」

 そして、続けられる目の前の会話を耳にしながら、聞えてきた名前に、顔を上げる。

 今、『石田先輩』って聞えたのは、私の気の所為?

「では、後は、お願いいたします。では、手伝っていただけますか?」

 そして、何事もなかったかのように、テントウムシのようなデジモンへと声掛けた。

「勿論ですがな、ワテで宜しければ、何でもお手伝いさせていただきますよって!」

 泉くんの質問に、そのデジモンがドンと胸を叩いて、返事を返す。
 それに、泉くんが、優しい笑みを浮かべた。
 初めて見るようなその笑顔に、思わず驚きを隠せない。
 この子は、どちらかと言えば、誰かと一緒に居るタイプではない事を覚えている。
 昔の事は、何故かぼんやりとしか覚えていないけど、彼が、自分から誰かに接触していると言うのは、記憶にない。
 驚きを隠せないまま、彼等が部屋から出て行くのを見送った。

「ヤマト、遅いよ!」

 そんな中、突然聞えたその声に、驚いて振り返る。

「す、すまない……」

 振り返った先には、複雑な表情をしながらも、部屋に入ってくるヤマトくんの姿。

 私が、今日告白をして、振られた相手。
 思わず、息を呑んでしまう。

「ヤ、ヤマト、くん……どうして……」

 ここに居る筈のないその姿を見詰めながら、震える声でその名前を呼ぶ。

「空、ヤマトも、同じ俺が見える奴なんだ」
「えっ?」

 驚きのために、働かない頭に、あの子の声が聞えてくる。
 それに、私は驚いてもう一度ヤマト君を見た。

「なぁ、空は、俺の存在を認めてくれた。だから、仲間としてのヤマトも認めて欲しい」

 真っ直ぐに自分を見詰めてくる少年の瞳。
 真剣に伝えられた言葉に、驚きを隠せない。
 だって、私は、誰に告白したかなんて、一度だって、口にしては居ない。
 なのに、彼は、私が誰に告白したのか、知っていると言うような口ぶりで……。

「なんで………知っているの?」

 声が、震えるのを止められない。

 どうして、知っているのだろう。
 私が、誰を好きなのか……。

「空が、誰を好きになるかなんて、俺が一番分かっている事だ。だって、ヤマトは放って置けない奴だから、だから、空が、好きになるって、知っていたでも、ヤマトは不器用な奴だから……」

 私の質問に、少しだけ困ったような表情で説明される事。

 でも、どうして、分かっているなんて、はっきりと口に出せるんだろう。
 私だって、好きだと気付いたのは、2年に進級してから……。

 その表情が、寂しそうな笑みを作って、ヤマトくんへと向けられる。

「言っただろ?振られたって、空は、こいつの事を、嫌いにはなれない、好きなんだろう?」

 だけど、その表情は一瞬だけで、直ぐに優しい笑顔と共に言われた言葉に、私はそっと息を吐き出した。

 そう、ずっと話を聞いてもらって、落ち着いていた筈。
 だから、もう自分の気持ちだって、ちゃんと納得したのだ。
 そして、意を決したように、彼の質問に小さく頷いた。

「………そう、好きよ。でも、漸く落ち着いたわ。ヤマトくん!」

 きっとヤマトくんを睨み付けながら、その名前を呼ぶ。
 私に突然名前を呼ばれたヤマトくんが、驚いたように私を見詰めてくるのに、内心で笑いながら表情を厳しくした。

「女の子が告白しているのに、『迷惑』ってなによ!もう少し言葉選んでちょうだい。なんとも思われてなくっても、他に言い様ってものがあるでしょう!!」
「えっ?あっ、いや……」

 ヤマトくんを睨み付けたまま、勢いに任せて文句を言う。

 そう、好きだった。
 だけど、違うんだね。
 これは、まだ恋じゃなかった。
 私は、ヤマトくんに、ただ憧れていただけ。
 そして、それを恋だと勝手に決め付けて、いただけなの。

 でも、好きって言う気持ちに、嘘はなかったんだよ。

「すっきりした。泣いているなんて、私らしくないもの。有難う、貴方のお陰で、私らしく戻れたわ」
「俺は、何もしてねぇよ。空が、自分で考えて答えを出したんだ、それでいいじゃんか」

 言いたい事を言ってすっきり出来た。
 その事に、彼へとお礼を述べれば、笑顔で言葉が返される。
 そう、自分で答えを出したけど、それは、貴方が居てくれたから出せたのだと思う。
 きっと、話を聞いてもらえなければ、私は、まだこの勘違いの恋に、ずっと傷付いていたままだった。

「お話は、一段楽したようですね。では、彼の話を聞きませんか?」

 その瞬間、キッチンから人数分の飲み物を持って戻ってきた泉くんが、声を掛けてくる。

「そうであった!私は、お前に伝える事があって、ここに来たのだ」

 そして、今まで事の成り行きを見守っていた獅子の顔をしたデジモンが思い出したというように、彼の肩を掴む。

「そうだったな。____、その話を、聞かせくれ」

 そんなデジモンの姿に、少年の表情が真剣なものへと変化する。
 あの鮮やかな時間が、ゆっくりと何かに流されていくかのように、真剣な空気が流れた。


                                             



   まずは、空さん視点。
   いや、意味不明のような……xx
   何も、言い訳いたしません。本当に、すみません。(><)
 
   ええい、次は、ヤマトさん視点だ!
   頑張ります!