何時も、わては願っとります。
 誰よりも、光子郎はんに、幸せになって欲しいんやって事……。


「光子郎はん?」

 食事を届けて戻ってきたその人の様子は、何処か悲しそうに見えるんは、わての気の所為やない。

「どうかしたんですか?」

 そんな表情を見せる原因なんて、聞かなくっても分かっているのに、問い掛ける事しか出来まへん。
 光子郎はんが、そんな表情を見せるのは、何時だってたった一人の人が原因やって事……。

「……彼は、僕が話をしなくっても、ご存知でした……」

 困ったような笑みで、言われたそれに、何も言葉を返せないんは、どうしてなんやろう。

「……話を聞いとったんは、やっぱり太一はんやったんですな……」

 あの時、気配を感じたのは、気の所為やなく、彼が居たんやって事。
 それは、何となくやけど、誰もが感じていた事や思います。

「……僕では、彼の力になる事は、出来ないようですね……」

 悲しそうな瞳。わては、その瞳をずっと知っとります。
 あの冒険の日の中でも、光子郎はんは、そんな瞳をしてはりました。
 そう、一人で戦う彼の姿を見詰めながら……。

「…すみません……僕は貴方に、情けない姿しか見せていませんね……」

 そして、慌てて笑顔を見せるその姿に、大きく首を振って返す。

 わては、光子郎はんの力になりたいんや…。
 それは、誰でもない、わて自信が望んでる事。
 知りたがりの心を持ち、礼儀正しいわての大切なパートナー。

「わては、光子郎はんのパートナーやさかい……わての方こそ、何の力にもなれな……」
「そんな事、ありませんよ」

 わての言葉を遮って、光子郎はんがはっきりとした口調で、言葉を返す。

「僕は、あなたに会えた事を、とても感謝しているんですよ」

 そしてにっこりと笑顔を見せてのその言葉に、わては驚いて光子郎はんを見詰める。

「……でも、彼は、何時でも一人で苦しんでいるように見えるんです……」
「光子郎はん?」

 自分が見詰める中、少し困ったような表情で続けられたそれを問い返すように名前を呼べば、小さくため息をつく。

「……彼を、支えたいと思うのに、僕では役不足なんですよね……」

 更に続けられたその言葉に、一瞬何も返せない。

 何時だって、光子郎はんの願いは、彼の事。
 そして、その気持ちが、届かないんやって事を、誰よりもわいが知ってる事何やって……。
 あの冒険の時と、同じ。

「……光子郎はん…」

 わてが知っている、大切な人の気持ち。
 それは、何時だって、辛くって泣きたくなるほどの悲しい気持ち。

「すみません…変な事を言ってしまいましたね」

 困ったように見詰める先で、光子郎はんが笑顔を見せる。

 それは、何時もの優しい笑顔。
 全ての気持ちを隠す、その笑顔……。

「高石くんをお待たせしているんでしょう?戻りましょうか?」
「そうでんな…」

 大切な人が、隠しているその気持ち。
 だから、自分は気付かないフリをしなくってはならないんや。
 何時だって、彼を思うその気持ちが、通じないんやって事を知っとるんは、自分一人。

「太一はんは、休んではるんですか?」

 名前が聞こえないと分かっていても、その名前を口にする。

「ああ、彼の事ですか?高石くんが作ってくださった食事を召し上がってから、薬を飲んで休んでますよ。明日には、完全に治るでしょう」

 今までの事が嘘だったかのように話される言葉に、ただ頷いて返す。

 彼は、何時だって強くって、誰の助けも必要としない。
 それを知っているから、こんなにも苦しくなるんやろうか?

「……約束………」

 考え込むように俯いている中、呟かれたその言葉に驚いて顔を上げる。

「約束、でっか?」

 聞えてきたのは、その単語。どう言う意味なのかを聞き返すように口を開けば、小さく頷く姿がある。

「ええ……絶対に、僕は自分の力で思い出して見せます。貴方を忘れている自分が、許せない。それに、思い出せれば、彼の力に慣れるんでしょうか……」
「光子郎はん……」

 あんさんらしい言葉。
 そして、今、一番に思い出したい事は、きっとわての事じゃなくって、彼の事なんやろうなぁ…。

「思い出せますよって……光子郎はん……」

 例え、自分以上に大切な人があんさんに居ると分かっていても、わいは、誰よりも願っとります。
 光子郎はんが、幸せになれる事を……。

「有難うございます。そうすれば、貴方の事を呼べますね」

 にっこりと笑顔を見せるその姿に、ただ笑い返す。

 上手く笑えるんやろうか?
 わては、今、ちゃんと笑っとりますか??

 あんさんに、心配を掛けないように……。
 そして、誰よりも悲しいその心を慰められるように……。



                                             



   はい、『裏・GATE06』になります。
   と、兎に角、暗い……xx
   しかも、テントモンの視点のはずなのに、光子郎さん視点のような内容に……。
   光子郎さんの片想いを知る唯一の人物なので、こんな内容になってしまいました。
   そして、短いのには、理由があります。
   私には、関西弁本当に分からなかったんです。
   なので、短くなってしまいました。
   言葉、変かも知れませんが、お許しください。(特に関西の方、突っ込まないでやってください<切実>)
   
   さぁ、とりあえず、出てきている選ばれし子供視点と、パートナーの元に戻ったデジモン達の視点はクリアー致しました!
   そんな訳で、サクサクと『表・GATE』を進めていきましょう!
   次に出てくる選ばれし子供も早く出したいしねvv
   では、頑張ります!!