「太一さん!」
何の前触れもなく開いた扉の向こうに立っていた人物に驚いて、声を上げる。
「よぉ!ちょっと、遅かったみたいだな」
何時もの笑顔を見せながら言われた言葉に、思わず苦笑を零した。
本当に突然で、彼の行動は何時だって予想がつかない。
「先程、行かれたばかりですけどね」
だから、僕も何時もと同じように笑顔を浮かべて、状況を説明した。
「そっか、何も言ってなかったからなぁ……」
そう言いながら扉を閉めて、僕の傍へと歩いてくる。
それを黙って見詰めながら、僕は小さく息を吐き出した。
本当は、二人きりになんてなりたくないのに……。
僕の気持ちを知らない、貴方と……。
「久し振りに向こうにいけると思ってたんだけど、ちょっと無理だったな……」
残念そうに呟かれた言葉に、僕ははっとして、画面へと視線を向けた。
「皆さんに連絡してみましょうか?」
きっと彼等も、この人が来たと知ったら喜ぶだろう。
誰をも安心させる、旧選ばれし子供のリーダー。
それは、今でも変わらない存在。
「いいよ。あいつ等、頑張ってるんだろう?邪魔しちゃ悪いしなぁ……」
「そうですか?…でも、今日は、どうしたんです?」
何時も部活で忙しい彼が、何の前触れもなく現れた事への疑問。
サッカー部でも、既に次期キャプテンは確定とされている人。
だからこそ、サッカー部でも、みんなの期待を一心に受けていると言うのを誰よりも僕達が知っている。
どんな場所でも彼は、リーダーで居られる人物。
「どうしたって、やっぱ俺が来ても迷惑だよなぁ……」
僕の言葉をどう受け取ったのか分からないけど、少しだけ困ったように呟かれたその言葉に、僕は慌てて首を振る。
「ち、違いますよ!そう言う意味ではなくって……部活の方は、大丈夫なのですか?」
「えっ?ああ……今日は、急に監督に用事が出来ちまって、ミーティングだけで終わっちまったんだよ。だから、役には立たねぇだろうけど、こっちの様子を見にな」
慌てて言った僕の言葉に、苦笑を零しながらも太一さんが説明してくれたそれに、ボクも納得して頷いて返す。
「そうだったんですか……皆さんが知ったら、喜ぶと思いますよ」
「ってもなぁ……俺じゃサポートも出来ねぇし……」
「太一さんの場合は、居るだけで皆さんの力になりますからね」
複雑な表情を見せながら言われたそれに、ボクは正直に言葉を返した。
だって、本当に貴方は、みんなのリーダーで、何時だって僕達を導いてくれる人だということを知っているから……。
「…いや、そんな事ねぇだろう……」
自分と言うモノを知らない貴方が、僕の言葉に呆れたような表情を見せる。
本当の事なのに……。
だって、僕達は、何時だって貴方を中心に集まっているのだから……。
「光子郎?」
「何でもありません。それよりも、連絡、しなくっても宜しいんですか?」
意味ありげに笑った僕に、太一さんが不思議そうに名前を呼ぶ。
それに、僕は小さく首を振って、話を誤魔化した。
だって、これ以上言っても、きっと貴方には分からないだろう。
だって、貴方は、自分を知らないから……。
「いや、いいよ。戻ってきた時に、挨拶する。で、今どうなってるんだ?」
僕のその言葉に苦笑交じりに首を振って、太一さんがパソコンの画面を覗き込んでくる。
真剣な瞳を見せる貴方は、もう既にリーダーの顔。
「今日は、この地域のダークタワーを壊す事を最優先にしています。デジモンカイザーの動きは、今の所不明なのですが、多分……」
リーダーになった貴方に、僕は参謀としての役目を果たす。
今日の予定や、敵の動きの予想などを、細かく説明すれば、太一さんは真剣に話を聞いて頷く。
「光子郎、だったら、逆の手で行くって言うのは、どうだ?」
そして、僕の説明を聞いていた太一さんが、口を開いた。
それは、もう一つの作戦。
この人は、こう言う時、本当に誰もが驚くような考えを出してくる。
「確かに、それなら、敵の裏をかけます」
効率的な作戦に、僕はただ大きく頷いた。
僕が考えていた作戦よりも、確実で安全な作戦。
どうしてこの人は、こんな風に考え付くのだろうか?
無鉄砲で、考え無しに見えるのに、冷静に全てを観察する鋭い洞察力。
それは、何時だって、僕達を勝利へと導いてくのだ。
「分かりました。では、その作戦で、大輔君達に連絡します」
直ぐにメールを打って、彼等に作戦の変更を知らせる。
「後は、皆さんが頑張って下さる事を祈るだけですね」
「大丈夫だって!俺達の後輩を信じて待ってようぜ」
メールを打ち終えてから、そっとため息をつけば、太一さんが何時もの笑顔を見せながら、真っ直ぐに視線を画面へと向けた。
「……そうですね…」
貴方がそう言うなら、大丈夫だと思える。
貴方は、何時だって僕達を導いてくれる人だから……。
予想通り、大輔君達は、ダークタワーを破壊して、戻ってきた。
「お疲れさん」
戻ってきた彼等に、太一さんが笑顔で出迎える。
「た、太一さん!」
「お兄ちゃん、来てたの?」
予想していなかった人物の出迎えに、皆が驚いた声を上げた。
でも、驚いているけど、その表情は嬉しそうである。
「じゃ、あの作戦を考えたのって、もしかして……」
「ええ、太一さんですよ」
鋭いタケルくんが、突然の作戦変更の訳を悟った。
それに、僕は頷いて返す。
「やっぱり……光子郎さんにしては、珍しい作戦だと思ったんだよ」
納得したように呟かれたそれに、僕はただ笑みを返した。
だって、彼は、僕の作戦の立て方を一番知っているのだ。
「何?何の話だよ??」
「何でもねぇって、それより、頑張ってるなぁ、大輔」
僕とタケルくんの会話に、大輔君が意味が分からないと言うように問いかけてきたそれを、太一さんがその頭を撫でながら言ったそれによって、遮られる。
「は、はい!だって、太一先輩の勇気の紋章を引き継いでるんすよ!頑張んねぇと、先輩に合わせる顔がないっすよ」
「そっか……」
元気一杯の大輔君のその言葉に、太一さんはただ優しい笑顔を浮かべて、またその頭を撫でた。
本当に、誰からも慕われる人。
「お兄ちゃん、今日はどうしたの?」
「ああ?ちょっと、暇が出来たからな。悪いな、毎日来れなくって……」
ヒカリさんが、嬉しそうな表情で、太一さんの腕を取る。
彼女も、太一さんを大切に思っている一人。
多分、僕達の中で、一番太一さんの傍に居て、そして強い気持ちを持っているかもしれない。
「ううん、お兄ちゃんが忙しいの知ってるから……私、お兄ちゃんの分まで、頑張るからね」
「ああ、無理しない程度にな」
ヒカリさんの言葉に、ポンポンと優しくその頭を叩く。
そんな太一さんに、ヒカリさんが、嬉しそうな笑顔を返した。
「それじゃ、帰ろうぜ。お前達も疲れただろう?」
そして、何時もの笑顔で貴方が言えば、誰もが大きく頷いて返す。
本当に、貴方はみんなのリーダー。
だから、誰のモノにもならないで、みんなのモノだと思える。
きっと、誰の気持ちも知らないだろう。
僕の気持ちも、そしてヒカリさんや、タケルくん、大輔君にヤマトさん……。
そう、きっと、誰の気持ちも気付いていない。
だから、思っていられる。
僕達のリーダーの事を……。

あう〜っ
ただの、太一さん賛美小説となってしまいました。<苦笑>
本当は、リクエスト小説を書いていた筈なのに、気が付けば、掛離れたものに…(何故??)
そんな、訳で、突然の意味不明小説となってしました。すみません(T-T)
次こそは、リクエスト小説書けるように勘張ります!!
ああ、でも、明日から6日間仕事…xx更新、またストップするかもです……。
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