― 勇気 ―

「ヤマト!」

 突然、後ろから名前を呼ばれて振り返る。自分に向けて大きく手を振りながら、笑顔を見せている人物を見つけて、ヤマトはその顔を笑顔に変えた。

「太一、どうしたんだ?」

 自分の所に走ってきた人物に、笑顔を見えながら、どう見ても捜していたと分かるくらい肩で息をしている手に、問い掛ける。

「今日、あっちに行って欲しいって、ヒカリに頼まれたから、お前もどうかなぁって、思って……あっ、練習あるのなら仕方ねぇけど……」

 最初の方は笑顔を見せて、最後の方は少しだけ寂しそうな表情を見せながら言われたその言葉に、ヤマトは思わず笑いを零した。

「なっ、何だよ……」

 突然笑ったヤマトに、太一が少し不機嫌そうに相手を睨みつける。それに、ヤマトはもう一度笑顔を見せた。

「何でもねない…今日は、バンドのメンバーが都合付かなくって、予定はない。行こうと思ってたんだよ、あっち」
「そっかvv」

 自分の言葉に、一瞬で嬉しそうな表情を見せる太一の姿に、ヤマトは自然と顔が綻んでしまうのを止められない。
 『可愛い』と思ってしまっても仕方ない程、表情がクルクル変わるのは、見ていてまったく飽きる事はない。
 勿論、そんな事を言おうものなら、怒らせて仕舞うのは目に見えて明らかな事ではあるのだが……。


                       



「デジタルゲート、オープン!選ばれし子供達、出動!」

 都の言葉で、皆がそれぞれにD-3とデジバイスをパソコンに翳す。

「皆さん、気を付けて!」

 サポーターとしてその場に残る光子郎の声に頷きながら、それぞれがゲートを越えて行く。

「タイチ!」

 デジタルワールドに辿り着いた瞬間、自分に抱きついて来た相手に、一瞬驚いた表情を見せながらも、太一は相手に嬉しそうな笑顔を見せる。
 最近、色々忙しかったため、ここに来るのは久し振りなのだ。

「アグモン!元気だったか?」
「うんvvタイチも元気そうvv」
「ああ、俺は元気だよ……ごめんな、会いにこれなくって……」

 アグモンを抱き締めながら、申し訳なさそうに誤る太一に、アグモンが大きく首を振って返す。

「ううん、タイチが忙しいって言うの、ヒカリから教えてもらってるから」

 ニッコリと笑顔を見せるパートナーに、太一も笑顔を返した。

「アグモン、この辺りの状況がどうなってるのか、教えてくれ」

 微笑ましい遣り取りが終わって、太一が真剣な表情を見せると、自分達が居るその場所を見渡した。
 見回しただけでも、ダークタワーが幾つか見られる。

「……連絡した通りなんだけど、ここ最近、デジモンカイザーの動きが可笑しいんだ」
「カイザーの様子が可笑しい?どう言うことなんだ、アグモン?」

 心配そうに呟かれたその言葉に、太一が驚いたように聞き返す。それに、アグモンは大きく頷いて返した。

「うん、あのね……」

 まず、アグモンの話はこうである。
 最近のデジモンカイザーの動きが、全く見えないと言う事。そして、それとは反対に、ダークタワーの数が更に増えていると言うのだ。

「太一さん、とりあえず、二手に別れてダークタワーを壊そうって事になったんですけど……」
「ああ、そうだな。それで、どう別れるんだ?」

 アグモンから大体の話を聞き終えてから、タケルのその言葉に太一が大きく頷いてから質問をする。

「えっと、それなんですけど……」
「俺、太一先輩と一緒に行動します!!」

 どう言う風に別れるかに、困ったように伊織が口を開く前に、大輔が一番に名乗りをあげた。
 それに全員が苦笑を零すと、太一は小さく頷く。

「よし分かった。それじゃ、こう言う別け方だ。大輔とヒカリは俺と一緒に、タケル、伊織と都ちゃんはヤマトと一緒に行動してくれ」
「っと待て!俺とお前は、別々なのか?」

 当然と言うように言われたその言葉に、ヤマトが反論の言葉を返す。それに太一が苦笑を零した。

「俺とお前が一緒だと、足手まといが重なるだろう?だから、それは別けた方がいいんだよ。ダークタワーのある場所じゃ、進化させられないからな……」

 少しだけ悔しそうに言われたそれに、ヤマトは反論する事が出来ずに黙り込んでしまう。
 確かに、今の状態では、自分達のパートナーデジモンを進化させる事は出来ないのは本当の事だから……。

「太一先輩は、足手まといなんかじゃありませんよ!」

 ヤマトが何も返せない中、太一の言葉に反論したのは大輔である。

「そうだよ、大輔くんの言う通りだね。ボクも太一さんやお兄ちゃんの事、足手まといだなんて思わないよ」
「……大輔…タケル……」

 返される言葉に、太一が嬉しそうな表情を見せた。自分達にとって、何の力にもならない今の状態は、苦痛でしかない。だが、そう言ってくれるだけで、少しだけ心が和らいでくる。

「サンキューそう言ってもらえるだけで、ここに来た価値があるな」

 ニッコリと笑顔を見せて、太一が直傍に居た大輔の頭に手を置く。

「足手まといを連れているお前達に、ボクの邪魔はさせない!」

 だが、その瞬間聞こえてきた声に、皆が驚いて辺りを見回した。
 そして、少し離れた場所で自分達を見下ろすように見ているその声の主を見つけて、大輔がその相手を睨みつける。

「お前は、一乗寺!!」
「その名前で、ボクを呼ぶな!!」
「大輔!」

 大輔の言葉に、カッとなったデジモンカイザーが持っていた鞭を振りかざす。それに、直傍に居た太一が大輔を庇うように前に立ちふさがる。

「お兄ちゃん!!」

 ヒカリの悲痛な声とデジモンカイザーの鞭が太一の頬に当たったのは殆ど同時。太一は、焼けるような痛みを頬に感じて、顔をしかめた。鞭が当たった場所が、赤くミミズバレを起こす。

「お兄ちゃん!」
「大丈夫だ……それより、来るぞ」
「行け!ティラノモン!!」

 太一の声と共に、デジモンカイザーの攻撃が始まる。選ばれし子供達が大きく頷き合って、デジモン達をアーマー進化させた。

「ちょっと待って、ここで戦っちゃ駄目だよ、みんな!」
「アグモン?」

 全員が先頭配置についた瞬間に、精子の声を上げたその声で、太一が驚いたように自分のパートナーに視線を移す。

「タイチ、皆を止めて!ここは……」
「うわ〜!」
「ダイスケ!」

 アグモンが説明をするよりも先に、大輔の悲鳴が聞こえる。それに驚いたように振り返った太一は、ポッカリと開いたその穴に大輔とフレイドラモンそして、デジモンカイザーの姿が吸い込まれていくのを見て、とっさに手を伸ばす。

「タイチ、あの空間は!」

 アグモンが心配そうに声を上げるが、それは太一には最後まで聞こえる事はなかった。
 太一が、大輔達の後を追うように、その穴の中に吸い込まれていく。

「太一!」

 慌ててヤマトがその後を追うように足を踏み出した瞬間、その穴が目の前で閉じられてしまう。

「お兄ちゃん、大輔くん!」
「アグモン!あの穴は、一体何なんだ!」

 目の前で閉じられてしまったその穴に、その原因を知るであろうアグモンに、ヤマトが詰め寄る。

「……あの穴は……」
「ヤマト、アグモンが悪い訳じゃない。だから、オレから説明するよ」
「ガブモン!」

 アグモンに詰め寄っていたヤマトは、後ろから聞こえてきた声に、驚いたように顔を上げた。そして、全員が、静かにガブモンの話を聞く。



「てぇ!」

 行き成りの事に、大輔が大きな声を出して尻餅をついた。

「ダイスケ、大丈夫か?」
「ああ……でも、ここは、何処だ?」
「……多分、あの開いた空間の中だろう……」

 自分の質問に帰ってきたその声に、驚いて大輔が振り返る。そして、その場所に立っている人物を見た瞬間、それが嬉しそうな表情に変わった。

「太一先輩!」
「…無事で何よりだ、大輔。それと、一乗寺…いや、デジモンカイザーか……」
「えっ?」

 嬉しそうに自分に抱き付いてくる大輔に苦笑をしながら、太一がそっと自分達から少しはなれた場所に居るデジモンカイザーに視線を向ける。それに、大輔が驚いたように、視線を向けた。

「あいつも、ここに来ていたのか!」
「よせ!」

 フレイドラモンが、攻撃体勢に入った瞬間、太一が静止の声を上げる。それに、驚いて、二人は太一に視線を向けた。

「どうしてですか、太一先輩!」
「今は、そんな下らない事してる場合じゃないだろう?それに、ここに来た原因が、あの戦闘にあるのなら、この中での争いは、命取りになる。違うか?」

 ニッコリと笑顔を見せて問い掛けられた事に、大輔とフレイドラモンはお互いの顔を見ると、小さく頷いた。

「よし、だったら、進化してる理由はないだろう。兎に角、ここから出る方法を考えないとな」

 力強い笑顔を見せる相手に、二人が大きく頷く。それに、太一も満足そうに頷いて返した。

「一乗寺、お前も一緒に行かないか?ここに居ても、仕方ないだろう?」
「た、太一先輩!」
「タイチ!」

 まだ座り込んでいる相手に、元気良く声をかける太一の姿に、大輔とチビモンが驚いたように太一の名前を呼ぶ。そして、声を掛けられた方も、驚いたように太一を見詰めた。

「この中じゃ、戦えないんだから、一時休戦って事で、手を組もうぜ」

 笑顔を見せていわれたその言葉に、デジモンカイザーは何も答えない。だが、自分はデジモンを連れていない以上、どうやっても目の前の人物達に攻撃するという事が出来ないのは本当。
 結局、その数分後には、太一達の少し離れた場所から移動する事になる。

「…あいつ、ないも言わないで付いて来てる」
「…んな事、分かってるよ!」

 チビモンが後ろを振り返りながら、黙ってついてくるその姿に戸惑いを見せるのに、大輔がイライラした口調で返事を返す。
 そんな二人の遣り取りを見詰めながら、太一は苦笑を零した。

「タイチは、どうしてあいつまで誘ったんだ…」

 不機嫌な大輔を放っておいて、チビモンが少し前を行く太一に素直に疑問を投げかけてくる。

「どうしてって…何でだろうなぁ…でも、あいつを放って置く事なんて、俺には出来なかっただけだ」
「太一先輩は、優しすぎるんです!あいつは、このデジタルワールドを滅茶苦茶にしている張本人なんですからね!」

 苦笑を零しながら言われたその言葉に、大輔が少しだけ怒ったように太一を睨みつけた。それに、もう一度苦笑を零してから、太一が小さく息を吐き出した。

「……ああ、そうだな……でも、俺には、あいつ以外に、何かの力を感じるんだよ…あいつもその何かの力によって動かされてるだけなんじゃないかって……もしそうだとしたら、あいつは、俺達と同じ選ばれし子供って事になるだろう?」
「太一先輩!あいつは、先輩の大事なパートナーデジモンに酷い事したヤツなんですよ!」

 自分の言葉に更に怒ったような瞳を向けてくる大輔に、太一は困ったような表情を見せる。

「…確かに、あいつは許されない事をしてる。でも、それも何かによって動かされているのだとしたら、あいつの所為じゃないだろう?」

 ニッコリと笑顔で言われたその言葉に、大輔が一瞬言葉を無くす。それは、太一の考えこそが、優しさからくるものだと思えるのだ。自分の大事なパートナーに酷い事をした人物までも、この目の前の人は本気で許してしまえる。それは、この人の心の広さを表してしる言葉。

「ボクは、誰の指図も受けていない。お前の言っている事は、間違いだ!」

 太一の言葉に何も返せないでいる大輔に代わって、後ろから聞こえてきたその声に、全員が一斉に振り返った。

「……お前は、自分の意思だと思ってるかもしれないけど、俺には、お前の意志で動いているように見えないんだ」
「太一先輩!」
「ボクは、ボクだけの意思で動いている!」
「……そう、思っているのは、自分だけじゃないのか?」
「う、煩い!」

 太一の静かな声に、カイザーの声が返る。何時もの冷酷な姿はなく、まるで何かに怯えているようなその姿に、大輔とチビモンはただ黙って、そんな二人を見詰めてしまう。

「なぁ、お前は、何を望んでいるんだ?このデジタルワールドをどうしたい?」
「ボクは、コノデジタルワールドに選ばれたんだ!だから、ボクには、お前達とは違う、力が!!」
「……違わない。俺やお前とは、何処も違わねぇよ。特別な力なんて、持っちゃいないんだ」

 呟かれたその言葉に、カイザーは何も答えない。それに、太一は疲れたようにため息をついた。

「ダイスケ、何処からか、声が聞こえるよ」
「えっ?」

 二人の遣り取りがカイザーの沈黙と言う形で終わりを告げた時、突然声を上げたチビモンに、大輔が驚いた様に目を閉じて、辺りの気配を伺ってみる。

「なっ、聞こえるだろう?」
「ああ…ヒカリちゃん達の声だ!」

 嬉しそうに尋ねられたそれに、大輔も笑顔を返す。

「……出口は、直そこって事だな……」

 そんな二人の遣り取りを見詰めながら、太一も嬉しそうな笑顔を見せた。
 聞こえてくる声を頼りに、全員がまた歩き出す。カイザーも何も言わないまま、ただ黙って自分達の後に付いてくるのを見詰めながら、太一は苦笑を零した。

「お兄ちゃん!」
「太一さん、大輔くん!」

 突然目の前が開けて、自分達に駆け寄ってきた仲間の姿に、大輔とチビモンが嬉しそうに笑い合う。

「心配したんだよ、タイチ!」
「悪かった……でも、お前なら、出口に居るって信じてたぜ、アグモン」
「うん、タイチなら、この穴を抜けられるって信じてたよ」

 自分に抱きついてくるその体を抱き締めながら、太一がニッコリと笑顔を返す。

「賢ちゃん!無事で良かった」
「……ワームモン…」

 そして、そんな姿をただ黙って見詰めていたカイザーに、一匹のデジモンが嬉しそうに近寄っていく。

「…お前の事を心配してるヤツが居るんだぜ。自分のやっている事が間違っているって事、お前になら分かるんじゃないのか?」
「う、煩い!ボクに構うな!!」
「け、賢ちゃん!」

 自分に近付いてくるそのデジモンを無視して、そのままその場所から離れていく。そんな後姿を見送りながら、太一は深いため息をついた。

「…お兄ちゃん、一体何の話をしていたの?」
「……何でもない…そんな事より、心配掛けて悪かったな、ヒカリ…」
「ううん、私が、お兄ちゃんを誘わなければ、こんな事にならなかったんだから……」

 少しだけ悲しそうな表情を見せる自分の妹に、太一が苦笑を零して、優しくその頭を撫でてやる。

「お前の所為じゃねぇだろう?気にするなって!それに、誰も怪我してないんだから、問題ないだろう?」
「だけど、私の所為で…」

 更に自分を責めるような言葉を続けるヒカリの言葉を遮って、太一が笑顔を見せて小さく首を振って返す。
 その笑顔に、ヒカリはそれ以上何も言えなくなって、口を閉ざした。

「太一…」
「…悪い、心配掛けた……」

 ヒカリの後ろから、自分の事を見詰めてくるその相手に、太一が申し訳なさそうに謝罪する。

「……無事ならいいんだ……」

 呟きと同時に、そっと抱き締められて、太一は思わず苦笑を零してしまう。それだけ、自分の事をどれだけ心配していたのか分かるから……。

「ところで、あの穴って、一体なんだったんだ?」

 だが、そこで疑問に思った事が口に出てしまった事で、誰もが一瞬言葉を無くしてしまう。

「お、お前、分かってたんじゃないのか?」

 恐る恐ると言った感じで、自分に抱き付いていたヤマトが尋ねて来ることに、太一は意味が分からないと言うように首を傾げて見せた。

「俺が、分かる訳ねぇじゃん。なぁ、大輔」

 だが、当然とばかりに自分の直後ろに居る大輔に同意を求められたその言葉に、尋ねられた本人は、何も返す事が出来ない。

「…タイチは、出口知ってたんじゃないのか?」

 だが、そこで素直に自分が思った事を口にしたチビモンに、大輔も大きく頷いて見せた。

「知る訳ないだろう。大体、あんな穴に突然落ちて、出口を分かれって言う方が、無理があると思うけど、なぁ?」

 苦笑を零して、同意を求めるように自分達に視線を向けてくる太一を前に、ヤマト達は困ったようにお互いの顔を見合わせた。
 太一が、何の脈略も無く突き進んで行くと言うことを知っているだけに、返答に困ってしまったのは、前回の冒険を共にした仲間だけであろう。

「タイチらしいね。でも、その方があの空間では、一番正しい行動だとボクは思うよ」

 返答に困っているヤマト達に代わって、ニッコリと笑顔を見せて言われたその言葉は、流石はパートナーと納得せざる終えないモノである。

「確かに、タイチらしい。あの空間は、迷いのあるものが先頭に行くと、永久に出てくる事が出来なくなるんだ。だけど、タイチが一緒だから大丈夫だと思ってたよ」
「……ガブモン、何か俺、誉められてるように聞こえないんだけど……」
「嫌だなぁ、オレは、タイチの事信用してるんだよ、ねぇ、ヤマト!」

 ジト目で自分の事を見詰めてくる太一に、ガブモンが苦笑を零しながらヤマトに同意を求めた。だが、それに対して、ヤマトは盛大なため息をつくと疲れたように頭を抱え込んでしまう。

「……俺に聞かないでくれ……」

 疲れていると分かるヤマトの態度に、ガブモンが苦笑を零す。

「と、兎に角!無事だったんだからいいんじゃねぇの?!ねぇ、太一先輩!」
「ああ、確かにその通りだ。あの空間が何だったとか、そんな難しい事考えても仕方ないしな。って、事で、時間も過ぎちまったし、今日は帰ろうぜ」
「……結局、ダークタワー壊すことできませんでしたね」

 あけっらかんとした口調で言われたその二人の言葉に、誰もが思わず盛大なため息をついてしまう。
 穴に落ちた太一達を心配して待っていた自分達の気持ちと言うものが、少しも分かっていないようである。

「……勇気の紋章って、もしかして、お気楽なの?」
「…み、京さん…そんな事言ってはいけませんよ……」

 歩き出したその後姿を見送りながら、ポツリと零された京の言葉に、ホークモンがため息をつきながらも返事を返す。

「……本当、私達の気持ちなんて、知らないんだから……」

 ヒカリも苦笑を零して、先に歩いて居る自分の兄の後を慌てて追いかけた。

「ボク達も帰ろうか?」
「そうですね……」

 お互いの顔を見合わせて苦笑を零すと、タケルと伊織も歩き出す。そして、最後に残されたヤマトは盛大なため息をついた。

「お〜い、ヤマト!」

 そして、離れた場所から自分の名前を呼びその声に、呆れたような笑いを浮かべて、その隣に並ぶために歩き出す。

「それじゃ、タイチ、またね」
「ヤマト、頑張ってね!」

 デジタルゲートに向かった自分達に、ガブモンとアグモンが手を振って見送ってくれる。それに、太一達も笑顔を返して、デジタルワールドを後にした。



「……ところで、ガブモンの『頑張って』ってどう言う意味なんだ?」

 小学校殻の帰り道、突然自分に問い掛けられたその言葉に、ヤマトが思わず苦笑を零してしまう。
 まさかここで、自分の気持ちを知っているから、応援してくれたなどと目の前の人物にはいえるものではない。
 言ったが最後、今度はその気持ちについて問われてしまうのは、目に見えている。

「……勉強の事じゃないのか?」

 太一から視線を逸らしながら、差障りの無い言葉を選んで言う。

「……なんか、違うような気がするんだよなぁ……」
「あっ!きっと、バンドの事だろう。あいつに話したからな」
「……そっか、お前、バンドの事話したのか……確かに、色々大変だもんなぁ」

 うんうんと大きく頷きながら、言われたその言葉に、ヤマトがホッと胸を撫で下ろす。そんな二人の遣り取りを、後ろで見ていた新しい子供達が苦笑を零しながら、見ていたのは言うまでもない。

「……勇気の紋章って、鈍いって言うのもあるのね、きっと!」

 そして、更に京が零したその言葉に、誰もが笑わずには居られなかった。


 

 

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  はい、11000HITリクエスト!
  リクエスト内容は、ヤマ太+賢(デジモンカイザー)vs大輔 だったはず…xx
  ご、ごめんなさい。(><)全くリクエストに答えてません。 
  悩んだすえに、全く意味の無い小説が出来上がってしまいました。本当にすみません、八都瀬様。(T-T)
  これでも、かなり悩んで書いたのですが……xx答えてなければ、意味が無い。しかも、中途半端に終わってるし…xx
  本当に、ごめんなさいです。言い訳は致しません。
      
  えっと、11000GET&リクエスト、本当に有難うございました。
  リクエストにお答えできなくって、申し訳ありませんです。(><)