「ヤマトvv」

 嬉しそうな笑顔を見せながら名前を呼ばれて、ヤマトは読んでいたその雑誌から視線を太一へと向けた。

「プール行こうぜvv」

 そして、続けられたその言葉に、一瞬反応を返せない。

「プ、プール?」

 思わず聞き返したその言葉に、ニッコリと笑顔が返される。

「そっ、プールvv」

 嬉しそうに笑っているその姿に、ただ複雑な表情を浮かべてしまうのを止められない。

「なんだよ、嫌なのか?」

 そんな自分の表情に気が付いた太一が、不機嫌そうに睨み付けてくる。確かに、嫌だと思っているのは本当の事。しかし、それには立派な理由があるのだ。
 そう、自分にとってはとっても、重大な理由だ……。

「…出来れば、行きたくない……」
「って、夏になって、一度もプール行ってねぇんだかんな!そんなんだから、色が白いんだよ!!」

 ボソリと本音を言えば、全く関係の無い事が返される。
 自分が色が白いのは、生まれたツキなのだから……。

「悪かったな、焼けない体質なんだよ」
「……俺、出来れば、ヤマトと一緒にプール行きたい……駄目か?」

 最後の我侭とばかりに、太一が上目使いで自分を見詰めてくるのに、ヤマトは言葉に詰まった。
 自分がそんな表情に弱いと言う事を知っていて、やっていると分かるだけに、性質が悪過ぎる。
 じっと見詰めてくる視線を感じながら、盛大なため息。

「俺は、行きたくない……」

 ため息をつきながら、それでもはっきりとした口調でそう返せば、怒ったような顔をした相手が居る。相手の機嫌を損ねると分かっていても、どうしてもいやなモノは否なのである。

「分かった!んじゃ、他の奴と一緒に行く!!」

 案の定、怒った表情を浮かべたまま、立ち上がるとそのまま部屋から出て行こうとする太一に、ヤマトは内心慌ててしまう。
 本当の理由を言えば、もっと相手を怒らせると分かっているから……。

「太一!」
「ヤマトは、そこで雑誌でも読んでいればいいだろう!じゃあな!!」

 言い捨てるように、太一が玄関の扉を閉めて出て行ってしまう。そんな相手に、ヤマトはただもう一度盛大なため息をついた。

「……プールなんて、行かせたくないに、決まってるだろう……」

 学校での水泳だって、本当はいやで仕方ない。それなのに、どうして好き好んで、自分からプールになどいけるのだろうか……。

「…そう言えば、他の奴って……」

 怒ったように、投げ付けられた言葉が気に掛かる。

「……やっぱり、あいつ等の事なんだろうなぁ……」

 そして、思い当たる他の人物たちに、頭を抱え込んで早速、プールへ行く支度をするのだった。




「なんだよ、ヤマトの奴……そんなに俺とプール行くのいやなのかよ……」

 ヤマトの家から飛び出してきて、未だに収まらない怒りに、太一はぶつぶつとひたすら文句を言う。
 確かに、ヤマトは人が集まる場所と言うのが、あまり好きではないのを知っている。それでも、偶には夏を満喫したいと思っても許してもらえるだろう。

「絶対に、プールに行ってやるからな!!」

 もう、最初の目的など忘れて、太一はそう言うと家に急いで戻る事にした。

「お帰り、お兄ちゃんvv」

 家に戻った瞬間、ニッコリと笑顔で迎えられて、太一も思わず笑顔を返してしまう。

「おう!ヒカリ、これからプール行かないか?」

 そして、嬉しそうに自分の妹を誘えば、一瞬考えるような表情が伺えた。

「プール?ヤマトさんも一緒なの??」

 不思議そうな表情をして問われたそれに、太一が複雑な顔をする。

「一緒じゃねぇよ、あんな奴!」

 そして返されたそれに、ヒカリは納得。

『……ヤマトさんに、断られたから、意地になってるのね……』

 少しだけ呆れたようにため息をついて、ヒカリは兄を見る。
 不機嫌そうな表情に、そっと苦笑を零した。

『ヤマトさんが、行きたくないって言う気持ちも分かるのよねぇ……お兄ちゃんには、絶対に分からないだろうけど……』
「ヒカリ?」

 苦笑を零しながら自分を見詰めてくる妹に、太一はそっとその名前を呼びかける。

「うん、いいよ。そうだ!タケルくんや光子郎さんも誘うんだよね?」
「えっ?ああ、一応そのつもりだけど……」

 嬉しそうな笑顔を見せて問われたそれに、太一が返事を返す。それに、ヒカリは満足そうに頷いた。

「なら、私が連絡してあげる!お兄ちゃんは、準備してていいよ」

 ニコニコと満面の笑顔をしながら言われたその言葉に、太一は不思議に思いながらも、その申し出に素直に礼を言って、お願いする。
 楽しそうに電話を掛け始めた妹を横目に、太一は小さく息を吐き出して、疲れたようにソファに座った。

「お兄ちゃん、何時に約束する?」

 そんな自分に問い掛けられた質問、今の時間を確認するようにそっと時計へと視線を向ける。

「う〜ん、2時でいいんじゃないのか?」

 そして、今の時間がまだ12時前である事を確認してから、返事を返した。それに、『OK』と言う言葉が返ってきて、ヒカリが受話器の向こうの相手と話をしているのが聞こえてくる。
 それを何処か遠くで聞きながら、太一は再度ため息をつくのだった。




「太一先輩!!」

 プール前で、待ち合わせをして居た人物は、大輔に光子郎。タケルに京や伊織。そして、空だった。

「よっ、大輔!元気だな、お前は……」

 嬉しそうに自分に手を振っている相手に、太一は苦笑を零しながらも、その頭に手を乗せる。
 誰が呼ばれているのかを、聞かされていなかっただけに、この人数が集まっているのに、驚かされてしまった。

「皆、暇なんだなぁ……」

 集まった人物にポツリと洩らせば、空が呆れたようにため息をつく。

「あら、これでも忙しいのよ。ヒカリちゃんから、電話貰った時には、正直悩んだんだけど、面白そうだったから来たのよ、ねぇ、京ちゃんvv」
「そうですよね、空さん」

 ニッコリと笑顔で互いの顔を見合わせている二人に、太一は意味が分からないというような表情を見せる。

「…面白そう?って、何がだ??」
「こっちの事よ、気にしないで」

 不思議そうに問い掛ける太一に、ニッコリと笑顔を見せながら、さり気なく話を誤魔化してしまう。

「それじゃ、行きましょうか」

 そして、光子郎の言葉に、全員が頷いて、中へと入る事になった。
 中へと入る途中、ヒカリが後ろを振り返って、ふっと笑みを見せた事に気が付いた人は、誰も居ない。



「気持ちいいvv」

 プールに来て、思いっきり泳げないのは寂しい気もするが、水に体をつけただけの今の状態でも、リラックス出来る。
 のんびりとした時間の中、ボンヤリと辺りを見回す。
 他のメンバーは、それぞれ話をしたりと忙しそうに見えるが、やはり泳ぎに来ていると言う感じではない。

「太一さん」
「んっ?」

 ボンヤリとしている中、名前を呼ばれて、そちらへと視線を向ければ、タケルが自分の方に近付いて来るのが見えた。

「どうしたんだ?」

 慌てているタケルの姿に、太一は訳が分からないというような表情で問い掛ければ、自分のすぐ傍へと来たタケルが、無言である方向を指差す。太一は、意味が分からず、ただ指された方へと視線を向けた。

「……ヤマト??」

 そして、その方向へと視線を向けた瞬間、いかにも怪しいと言った人物を見つけて、思わず頭を抱えたくなってしまう。
 プールに来ていると言うのに、帽子をかぶりサングラスをして長袖のシャツを着ている姿は、どう見ても場違いだ。これが海であれば、まだマシかも知れないが、ここでは目立つと言うモノである。

「……た、他人だよな、タケル……?」

 思わずその人物を見詰めた瞬間、太一は隣に居たタケルへと質問をしてしまう。それに、タケルは苦笑を零した。

「…ボクとしても、他人で通したいよ……血が繋がってるって思うのも嫌だなぁ」

 呆れたように言われたそれに、太一も同じ意見を持つ。そこまでする必要など、何処にあると言うのだろうか??

「本当、素直じゃないわね」
「空??」
「そうですよね、太一さんの裸を他の人に見られたくないんだって、はっきりと言えば問題ないのに……」
「み、京ちゃん??」

 突然の割り込みに、一体何を言われているのかが分からない。
 さらりと言われている言葉は、自分にとっては謎が多過ぎる。

「あれじゃ、ストーカーですね」
「光子郎?」
「初めから、姿見せればいいんすよね」
「大輔??」
「それが出来れば、ヤマトさんじゃなくなっちゃうものねvv」
「ヒ、ヒカリ?」

 次々に言われるその言葉に、太一一人が意味が分からずにただ全員の顔を見詰めた。
 しかし、ここまで言われて漸く気が付く。

「お、お前等、ヤマトが居るの知ってたのか?!」
「そりゃ、ボク達が太一さんとヒカリさんを待っている時からいらっしゃいましたから…」

 太一の質問に、伊織が冷静に答えを返す。それに、太一は疲れたように盛大なため息をついた。
 そして、空が面白そうだと言った意味を漸く理解する。
 はっきり言って、もう怒る気も起きない。

「……そう言う事は、一番初めに教えてくれ……」

 疲れたようにぐったりしてしまう太一を前に、全員が苦笑を零す。
 気が付いて居なかった方が、不思議である。

「仲直り、してくるんでしょう?」
「空…」
「太一さんが、代表でお兄ちゃんを呼んで来てくださいね」

 ニッコリと言われたそれに、苦笑を零す。
 あの格好をしている相手を呼びに行くのは、かなり勇気が居ると思うのだが……。

「……行って来れば、いいんだろう!」

 しかし、期待に満ちた目で見詰められて、太一は根負けしたようにプールから上がると、盛大なため息をつく。
 そして、覚悟を決めたように、ゆっくりとヤマトが居る場所へと歩き出す。

「本当に、世話の焼ける先輩達ですね」

 その後姿を見送りながら、苦笑交じりに呟いた光子郎の言葉に、誰ともなしに頷く。
 仲がいいのに、些細な事で直ぐに喧嘩をしてしまうそんな二人を、ずっと見守ってきた。
 だからこそ、二人がお互いをどれだけ大切にしているかを、知っている。

「あっ、自分の着てたシャツを太一さんに着せてるし……」
「本当、独占欲の塊よね、ヤマトさんって……」
「まっ、我侭な二人に、今日はおごってもらいましょう!」
「賛成!!」


 その後、真っ赤になって戻ってきた太一が、ヤマトを連れてきたのは言うまでも無い。
 そして、プールから帰る最中、太一とヤマトが皆におごらされたとか……。


 



  な、内容が無いよぉ〜(T-T)
  す、すみません。本当は、夏休み中にUPできればと思っていたのに、新学期が始まってしまいました。<苦笑>
  お待たっせしてしまったのに、こんな意味不明小説ですみません。
  リクエスト内容は、ヤマ太で、プールにて、太一さんの裸を誰にも見せたくないヤマトさん。
  だったのですが、全然その傾向が……xx
  失敗に終わっておりますね…(駄目すぎT-T)
  ななんしぃ様、本当にすみません。
    
  こんないい加減なサイトですが、呆れなければ、宜しくしてやって下さい。
  では、キリ番GET&リクエスト本当に有難うございました。