「終わったな……」

 ポツリと呟いて、ほっと息を吐き出す。
 全てが終わったと言う安堵感。

「終わったんだな…」

 そして、同じ言葉を呟くその人物に、太一はゆっくりと振り返った。

「…ヤマト……」
「太一」

 自分を見詰めるその瞳に、ただ笑顔を見せる。

「太一さん!体の方は、大丈夫なんですか?!」

 二人で見詰め合っている中、突然のその言葉に、太一は一瞬言われた言葉の意味が分からずに首を傾げた。

「体?」
「だってお兄ちゃん、ピエモンに……」

 不思議に思って呟いたそれに、泣きそうな瞳で見上げてくる妹の言葉に、今まで忘れていた痛みが蘇って来る。

「そ、そう言えば……」

 体に残る僅かな痛みが、思い出した瞬間強烈な痛みへと変わっていく。

「太一!」

 その痛みにバランスを崩した太一の体を、一番近くに居たヤマトが慌てて抱きとめる。

「大丈夫か?」
「……思い出したら、全身に激痛が……」
「お兄ちゃん!」

 苦痛に顔を歪める太一に、心配そうにヒカリがその顔を覗き込んだ。

「……大丈夫だって…」

 泣きそうな瞳で見詰めてくる妹に、太一は無理に笑顔を見せる。

「兎に角、休める場所に!」
「ヤマト!始まりの町がここから一番近いよ」

 慌てて太一の体を抱き上げて、そのまま歩き出したヤマトにパートナーであるガブモンが誘導するようにその前を走り出す。

「分かった!皆!!」
「ヤマト、一人で大丈夫かい?」

 太一を抱き上げたまま歩き出したヤマトに、心配そうに丈が声を掛ける。

「大丈夫だって!だから、ヤマト……」
「満足に立っていられないヤツが、ちゃんと歩けるのか?」

 ヤマトに抱き上げられているという事に、太一が慌てたように暴れだす。それに、ヤマトが少しだけ厳しい表情を見せて問い掛けた。確かに、体中が悲鳴をあげているように痛むのは本当の事。かなり強く痛めつけられたのだから、それも仕方ないかもしれないだろう。

「丈、後で太一を見てやってくれ」
「勿論だよ……それよりも、本当に大丈夫なのかい?」
「ああ……」

 再度尋ねられたそれに、きっぱりと言葉を返す。流石に自分の弟を抱き上げているよりも辛いのだが、それでもこの役を誰かと共有したとは思えない。
 誰にも渡したくないから……。

「お兄ちゃん、ずるい……」
「本当ね……皆が太一の事を思っているのに、その隣に当然のように居るのはヤマトなのよねぇ……」

 そして、慌てて先を急いでいる中、その後ろを歩いている人物がポツリと文句を呟く。さらに、その呟きに小さく息を吐き出して苦笑を零しながら、答えた人物は、優しくその相手の肩に手を置いた。

「……だけど、今はまだ、太一はみんなの太一よ」
「どうして?」
「……だって、太一は超が付く位の鈍感だから」

 ニッコリと優しい笑顔で言われたそれに、タケルも思わず笑顔を返す。それは、太一自身が自分の気持ちに気が付いていないという事。

「ねぇ、空さん……」
「なぁに?」

 笑顔を見せたと思ったら、俯いてポツリと自分の名前を呼ぶ相手に、空は優しく問い返した。

「……ずっと、太一さんがみんなの太一さんで居てくれればいいのにね……」
「……そうね…」

 少しだけ寂しそうに言われたそれに、空も瞳を細めるとポツリと呟くように返事を返す。

 皆が惹かれた相手。
 ずっと前だけを見ながら進んでいた。一番にどうすればいいのかを考えて、誰よりも早く行動する。
 その紋章の言葉通り、自分たちに勇気をくれた人。きっと、今こうして全てが無事に終わったのは、彼が居たからだろう。



「……このまま寝かせておいた方がいいね」

 町に着く前に、太一の意識は無く、それどころか着いた時には熱が出ている状態で、ヤマトが焦ったようにおろおろとしている中、丈が小さくため息を付いて、太一の様子を見ていく。

「…熱が出たのは、この怪我の所為だと思うよ。大丈夫、一応抗生物質飲ませておけば、問題ないよ」
「本当か?」
「医者じゃないけど、これくらいなら心配要らないと思うよ。それに、一番の原因は、やっぱり疲れてるんだと思う。だから、このまま休ませる方が、太一の為になると思うよ」

 言われたその言葉に、その場に居た全員が一瞬言葉を無くしてしまう。
 確かに、太一が頑張っていたのを知っているから…。誰よりも一番に、仲間のことを考えて、そして行動していた。
 きっと、この中で一番気を張っていたのは、誰でもなくこの少年であるという事を知っている。

「そうですね、僕達は、ずっと太一さんに無理をさせていたのかもしれません……」

 ポツリと呟かれたそれに、更に皆が言葉を無くす。
 何時だって、その背中が自分達に勇気をくれた。そして、進んでいく力をくれたから……。
 どんな時でも、前に進む事だけを考えるのは、きっと辛かっただろう。なのに、その笑顔は変わらずに居てくれたから…。

「私、水汲んでくる!!」

 そして、皆が沈黙を続けている中、突然そう言ったのは、ミミである。

「ミミちゃん?」
「私、いっぱい我侭言ったから…だから、太一さんの為に、水汲んでくる」
「ボクも行く!!」
「私も!」

 ミミに続いて、年少組みが勢い良く申し出る。それに、皆が小さく息を吐き出すと、笑みを見せた。

「そうね、それじゃ私は毛布でも探してくるわ」
「では、僕は食べられるモノを探してきます」
「なら僕は、怪我の手当てが出来るモノでも探してくるよ」

 それぞれが、太一の為に出来る事を口に出す。そして、最後に残されたヤマトが慌てて口を開こうとした瞬間、その肩が叩かれる。

「ヤマトくんは、太一に付いてあげててね」
「えっ?でも……」
「確かに、これは君の役目だよ」

 優しい笑顔と共に言われる言葉に、どう対応して良いのか分からずに、ヤマトはその場に立ち尽くした。

「太一をお願いね」

 そして、皆がそれぞれに自分に声を掛けて、それぞれのやるべき事をする為に歩いて行く。ヤマトは呆然とその姿を見送るだけしか出来なかった。

「ヤマト、皆に頼られてんだから、しっかりしないと駄目だよ」

 どうしたらいいのか分かっていない自分のパートナーに、ガブモンは苦笑を零しながらも、励ますようにその肩を叩く。
 皆が、大切だと思える相手。その大切な人物を任された事は、きっと信頼されているという事だと思う。

「……分かった……そうだな……」

 ポツリと呟いて、そっと眠っている太一の顔を覗き込む。
 そして、ここに車での事を思い出した。
 自分に抱き上げられたその体が、小さかった事。
 自分よりも小さくって、抱き上げた体は頼りなかった。
 ずっと、思っていたのに、この背中を見詰める度に、自分とは違う強さを持っているのだと……。なのに、その体は小さくって、本当に頼りなかった。
 自分は、ずっとこの小さな背中に頼りきっていたという事に、自己嫌悪してしまう。

「……終わったんだから、もうゆっくり休めるな……」

 眠っているその顔に、小さく笑みを零す。

「…みんなのリーダーを任されたんだから、俺も、頼りにされてるって事なんだよな……」

 ポツリと呟いて、そっと眠っているその顔に手を伸ばした。
 もう、傷付く事が無いと言う安心感。そして、何よりも休ませてやれると言う安堵感に、ほっと胸を撫で下ろす。

 小さなこの体が、もうこれ以上傷付かないように……。

 今は、心からの休息を……。


                                                     


   す、すみません!!
   はっ!これでは、意味が分からない…(それは、小説も一緒…xx)
   私、太一さん至上主義なのに、太一さん総受話が書けませんでした(T-T)
   努力は、してみたんですが、全くリクエストに答えてない。本当にすみません(><)
   折角リクエストいただいたのに、本当にごめんなさい、なしり様……(T-T)
   う〜っただの、太一さん絶賛小説です……xx(いや、それさえもなっていない…xx)
   お待たせした上に、全くリクエストに答えられなくって、本当に、すみませんでした。
   こんな管理人のサイトですが、宜しければもう暫くお付き合いしてくださると嬉しいです。
   …無理ですね、こんなんじゃ……xx