隣で小さく身動ぎするのを感じて、意識が浮上する。
そして、何時もの通り頬にそっと触れるだけのキス。
自分の事を起こさないように気を付けながら部屋から出て行く気配を感じながら、既に自分の傍から無くなってしまった何よりも愛しい存在の事を考えて苦笑を零す。
きっと、相手は気付いていないだろう。
自分が起きている事に……。
そっと、触れるだけの頬にされるキスの事。
そして、嬉しそうに自分の事を見詰めている視線……。
それら全てが、幸せに満ちた時間。
「……起きてるって知ったら、どうするんだろうな……」
相手が完全に部屋から出て行ったことを確認して、そっと苦笑を零す。
自分が起きていないと思っているからこその、相手の行動。
それらは、全て自分に幸せをくれるのだ。
そして、その幸せを実感しながら、また瞳を閉じる。
直ぐ傍にあるちょっとした重さ、それはまだ子猫達が寝ている証。
その重さを感じながら、朝食の準備をして自分の事を起こしにくるであろうその人をただ待つ。
余り音は聞こえない。
窓の外から、鳥の囀りが聞こえてくるだけの、のんびりとした朝の時間。
一度大きく伸びをして、残っている眠気を追いやると、傍に置かれている時計に視線を向ける。
まだ朝の7時をさしているその時計。
後、30分もしない内に、大切な人が自分の事を起こしに来るだろう。
結婚して、毎日食事の準備をしてくれる人が居る。
始めの頃は、それに慣れなかった。
ずっと、自分でしなければいけなかったから……。
食べる為には、自分で作らなければいけない。
だから、朝は簡単に済ませることが多かった。
なのに今では、大切な人が自分の為に準備をしてくれる。
起きれば、暖かい料理がテーブルに並んでいて、自分に笑い掛けてくれる人が居る。
慣れなかった始めの頃とは違って、今ではそれが当たり前の日常になった。
何時だって、疲れて帰ってくる自分に、最高の笑顔を向けてくれる人が出来た喜び。
戻る場所を与えてくれた、大切な存在。
幸せと言うものが、どう言うものなのかを教えてくれた人。
そして、足音が聞こえる。自分を起こしに来る、大切な人の足音。
ゆっくりと瞳を閉じれば、ドアが開く音が聞こえてくる。
部屋に入って直ぐに、カーテンを開く音。
閉じている瞳にも、太陽の光を感じる。
そして、自分の傍に近付いて来る気配を感じて、寝たふり。
「ヤマト、朝だぜ」
耳元に、優しく囁き掛ける声。
普通、人を起こすのに、こんな風にして起きるものなのだろうか?
だけど、その声に、今目が覚めましたとばかりにゆっくりと瞳を開く。
「……おはよう、太一」
そして、一番に愛しい人に朝の挨拶。それから、そっと触れるだけのキスを一つ。
それが、日課。
毎日ではないけれど、とっても大切な朝の約束。
君と過ごす時間は、何時だって大切で大事だから、それは本当に小さな幸せなんです。

はい、ヤマトさん編です。
同じく42000HITリクエスト小説。2つセットと言う形を取らさせて頂きました。
実は、理由があるんです。
今、本当に短い話しか書けない状態なのです。なので、急遽、こんな形になってしまいました。
すみません(><)
しかも、またしてもリクエストに答えてないものが……xx
たなか様、キリ番&リクエスト本当に有難うございました。
そして、リクエストにお答えできなくって、本当にすみません(><)
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