今日は、朝から厄日だった。
何をするにも、裏目に出る日。
今日は、そんな日である。
「八神くん、悪いんだけど、これを職員室まで運んでもらえるかしら」
にっこりと笑顔で言われたそれに、思わず引き攣り笑い。
今日は、厄日。
朝から、先生に目を付けられる日だった。
だから、こうして何かの用事を頼まれたのも、これが初めてではない。
折角の昼休み、何が悲しくって、提出物のノートを運ばなくては、いけないのだろうか?
「お願いね」
そして更に留めとばかりに言われた言葉に、小さく頷いて返す。
それから、先生と一緒になって、ノートの半分を職員室へと運ぶ事になる。
「太一、ヤマトくんが来てたわよ」
ノートを職員室に持っていって戻ってくれば、空が一番に話し掛けてきた。
そして、言われたその言葉に、小さく首を傾げる。
「ヤマト?」
「約束、してたんじゃないの?」
「……いや、何も約束して………あっ!!」
心配そうに尋ねてくる空を前に、太一は疲れた頭で少し考えてから、思い出したことに思わず大声を出してしまう。
「やっぱり、約束してたのね。ほら、早く行って来なさいよ」
大声を出した太一を前に、空が少しだけ呆れたようにため息をついて、自分を促す。
それに頷いて、太一は慌てて教室を後にした。
そして、ヤマトの教室へと急ぐ。
「ヤマト、居るか?」
そして、教室の前で知っている人物を見付けた瞬間、問い掛けた。
「石田?出て行ったきり戻ってないぞ」
しかし、戻ってきたその答えに、太一が一瞬泣き出しそうな表情を見せる。
それに、気が付いた人物が、慌てて言葉を付け足した。
「そ、そんな顔するなよ!大丈夫、心配しなくても戻ってくるって!!」
明るく言われたその言葉に、太一は少しだけ驚いたような表情を見せるが、直ぐに笑顔を作る。
「そうだな…とりあえず、探してみるよ。サンキュー」
にっこりと笑顔を見せてのお礼の言葉に、その人物の表情が少しだけ赤くなるのを不思議に思いながらも、太一はヤマトを探すために廊下を走り出した。
「……ヤマトが行きそうなところ……」
とりあえず頭の中で、考えをまとめて一番に思いついたのは、ヤマト達が練習場所として使っている音楽室の隣の準備室。
「3階3階…」
階段を駆け上がって、目的の場所へと急ぐ。
そして、目的地に付いた瞬間、その扉を開こうと手を添えた。
「あれ?」
勢い良く扉を開こうとした手が、全く動かない。
「……カギが…」
開かない扉にはどうやらカギが掛けられていると言う事に気が付いて、がっくりと肩を落とす。
自分が考えていた期待が外れて盛大なため息をついた。
「ここじゃ、ねぇのか……だったら!」
落ち込む気持ちを奮い立たせるように、次の場所へと移動する。
廊下を走っているのを注意されたが、そんな事も気にせずに、第二の目的地へと急ぐ。
「光子郎!」
そして、その目的の場所の扉を勢い良く開いた。
「た、太一さん?!どうかしたんですか??」
突然の勢いで扉居を開いた太一に、中に居た人物が驚きの声を上げる。
「ヤマト、知らねぇか?」
「ヤ、ヤマトさん??知りませんけど……何か用事でも?」
光子郎の言葉に、太一が少しだけがっくりと肩を落とす。
そして、小さくため息をつくと踵を返した。
「知らねぇんなら、いいんだ。邪魔した……」
「待ってください!」
この場所から急いで去ろうとする人物を、光子郎が慌てて呼び止める。
「何だよ、悪いけど急いで……」
「そんなにお急ぎでしたら、Dターミナルにご連絡を入れてはどうですか?」
「えっ?」
一瞬言われた言葉の意味がわからずに、太一はただ驚いて光子郎を見た。
そんな太一に光子郎は思わず苦笑を零す。
「無闇に探し回っても、すれ違いになるだけだと思いますけど」
「Dターミナル……?」
「はい、確実だと思いますけど」
にっこりと言われる言葉に、そんな事が全く頭に浮かばなかった自分が愚かに思えてくる。
「そっか、その手があった!」
そして、嬉しそうにポケットからDターミナルを取り出し、直ぐにメッセージを打ち込む。
「一体、何があったのですか?」
太一がメッセージを打ち込み終わるのを確認してから、光子郎が心配そうに尋ねてくるのに、太一は思わず苦笑を零す。
「大した事じゃねぇんだけど、明日休みだろう?だから、ヤマトと約束してたんだよ。それの話を昼休みにするって……なのに、今日は先生に雑用押し付けられて、昼休みにヤマトとすれ違っちまって……」
「……本当に、大した事ありませんね……」
少しだけ照れたように語られたそれに、光子郎が盛大なため息をつく。
そんな理由で自分が巻き込まれたと言う事に、文句の一つぐらい言っても罰はあたらないだろう。
「…悪い……迷惑、掛けちまったな」
苦笑を零しながらの謝罪の言葉に、光子郎は再度ため息をついた。
「迷惑だとは思いませんが、ちょっとだけヤマトさんに嫉妬したくなります」
「えっ?」
「ボクの気持ちを知らない貴方には、分からない事ですけどね」
にっこりと笑顔で言われたその言葉の意味が分からずに、太一はただ光子郎を見詰める、しかし、ただ優しい笑顔を見せているその表情からは、何も読み取る事が出来ない。
「太一!」
沈黙が流れる中、太一の連絡を受けたヤマトが入ってくる。
「ヤマト……」
「何か、あったのか?」
部屋に入った瞬間、異様な雰囲気に思わず心配そうに尋ねたそれに、光子郎がにっこりと笑顔を返した。
「何もありませんよ。ヤマトさんと出会えて良かったですね、太一さん」
「えっ、ああ……邪魔して、ごめんな、光子郎……」
笑顔で言われたそれに、太一が複雑な表情のまま頷いて返す。
それから、ヤマトに連れられて教室を後にするまで、光子郎は笑顔を見せていた。
「……ボクだって、貴方が好きなんですよ、太一さん……」
そして、教室誰も居なくなった瞬間、ポツリと呟く。
きっと、一生相手には言えない自分の気持ちを……。
「お前なぁ!ちゃんと教室に居ろよ。何度もお前の事呼びに言ったんだぞ!」
「……悪い…でも、俺もヤマトの事探してたんだからな!!」
教室を出た瞬間のヤマトの言葉に、太一も反論を見せる。
確かに、自分もヤマトを探していたのは本当だから……。
会えなかったと言うだけで、冷静な判断も出来ずに、学校中を走り回ってしまった事に、今更ながらに恥ずかしくなってくる。
「……ところで、明日どうするんだ?」
「とりあえず、今日は泊まりに来るんだろう?それを、聞きたかったんだ」
「えっ、ああ……うん、分かった……って、俺、昼間だ食べてない!」
ヤマトの質問に答えてから、重大な事実を思い出した太一が声を上げた。
「お前なぁ…俺だって、食べてないんだからな……」
目の前で情けない表情を見せる太一を前に、ヤマトが少しだけ呆れたように呟いて、ため息をつく。
「ヤマト、5限目サボろうぜvv」
「お前なぁ……」
ヤマトの言葉に嬉しそうな笑顔を見せながら言われたそれに、ヤマトが呆れながらも笑顔を返す。
「……そう言えば、光子郎が言ってたんだけど、俺は、光子郎の気持ちを知らないから、分からないって言われたんだよなぁ…ヤマト、どう言う意味か分かるか?」
「えっ?」
「そうそう、ヤマトに嫉妬したくなるとかってのも言ってたなぁ」
先程の光子郎との会話を思い出しながら、太一が分からないというようにヤマトに問い掛ける。
光子郎本人には聞ける雰囲気ではなかったから、今目の前に居る人物なら、何か知っているかもしれないと思ったのだ。
「……お前が、鈍いって言ってるんだよ……」
ヤマトの答えを真剣に待っていた太一は、返されたそれに、一瞬何を言われたのか分からずにきょとんとした表情で、相手を見る。
「どう言う意味だ??」
「知らなくって、いいってことだろう?」
「う〜っ、何か、納得できねぇ……」
「いいんだよ、お前は、知らなくって……」
複雑な表情を見せる太一を前に、ヤマトが真剣な表情を見せてもう一度呟く。
その表情が余りにも真剣だったために、太一もそれ以上の追求は出来なくなって言葉を無くした。
「まぁ、今は授業を真面目に受けろって事だな。予鈴鳴るぞ」
「えっ?」
「そんじゃ、放課後な!」
「ちょっ、ヤマト!!」
言うが早いか教室に戻っていくその後姿に、太一はただ盛大なため息をついた。
「なぁんか、納得できないよなぁ……」
後姿を見送りながら、ポツリと呟いて、それでも、『知らなくっていい』といわれた以上、もう聞く事は出来ないと思う。
だから、それ以上の事を頭から排除して、太一も教室へと戻った。
そして、その放課後にまで、先生からの頼まれごとをして、またしてもヤマトを待たせる結果になる。
たまには、こんな日もあると言う事。
納得出来ないものがあるとしても、それはいずれ時が解決してくれるだろう、きっと……。

はい、漸く書き終わりました。48000HITリクエスト小説になります。
でも、何処が?状態に、本人が一番突っ込みを入れている状態。
出来事は??そして、ラブラブは??
ご、ごめんなさい、桔梗様(><)
出来事に正直言って悩みました。その為に遅くなったといってもいいです。(言い訳--;)
後一つ考えていたのは幽霊騒動。こちらの方は、もっと意味不明になったので、その内こっそりとUP致します。
って、これも十分意味不明小説(T-T)
折角リクエストいただいたのに、こんな駄文で申し訳ありません。
呆れなければ、またお願いしますね。
本当に、キリ番GET&リクエスト有難うございました。なのに、こんなショボ小説ですみません(><)
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