キャミソールに、短いスカート。
 サンダル姿が、目に入ってくる。

 空とヒカリに無理やり買い物に付き合わされている太一は、そんな女の子達の姿を見詰めながら、今日のこの暑さに、思わず小さくため息をついた。
 だから、カフェテラスで、アイスコーヒーを口にしながら、思わず思った事が口から零れてしまう。

「女の服って、涼しそうだよなぁ……」

 ポツリと呟かれたそれに、空とヒカリが一瞬驚いて、呟いた相手を見詰める。

「何?もしかして、暑いの?」

 複雑な表情を浮かべて、自分達のことを見詰めている人物に、空が問い掛ければ、コクリと大きく頷いて返された。

「そんなに言うなら、着てみる?」
「……止めとく……似合うとは思えないからなぁ……」

 素直に頷く太一に、空が恐る恐る問い掛ければ、今度は小さく首を振って返される。
 それに、一瞬だけ、空とヒカリは顔を見合わせた。

「何だよ……?」

 そして、次の瞬間、その二人の顔に良からぬ笑みが浮かべられた事で、太一は嫌な予感を感じずには居られない。

「そんな事無いわよvv」
「そうよ、お兄ちゃんなら、絶対に似合うって!!」

 ニコニコと笑顔で言われたそれに、太一は、自分の大失敗を実感せずには、いられなかった。





「いや、だから、あれは……」
「もう、自分で言ったんでしょう!ほら、これ着て!!」

 呟いた言葉が災いを生んで、無理やり連れてこられたのは、一つのデパート。
 しかも、しっかりと女性用の衣類売り場。

「空さん、ムース買って来ましたよvv」

 ニコニコと嬉しそうに戻ってきた妹に、太一はただ複雑な表情を見せた。

 本当に、何が悲しくって、こんな事になってしまったのだろうか?
 勿論、あの言葉に嘘偽りは無いが、自分からは、着たいなどといった覚えは全く無い。

「ほら、準備するから、早く着替える!」

 キッパリはっきりとした口調の空に、逆らえる事など出来ないのは、長い付き合いから、太一は嫌と言うほど経験していた。

「……お前、俺がこんなの着たら、犯罪だぞ……」
「大丈夫!サイズは、ばっちりよ!!」
「……誰も、そんな心配してないし……」

 力説される言葉に、太一がボソリと呟くが、勿論相手にされる事はない。

「お値段も手ごろだし、サンダルと合わせて、私とヒカリちゃんとでプレゼントするわよvv」
「……いや、いらない……」

 そんなプレゼント、嬉しくないと思いながらも、目の前で楽しそうな笑顔を浮かべている二人に、勝てる筈もなく、太一は諦めたように盛大のため息をついた。

「……似合わなきゃ、そのまま脱いでいいんだな?」
「駄目よ、ちゃんと私たちに見せなきゃ!!」

 最後の妥協策とばかりに問い掛けても、それはあえなく却下。

「ここね、簡単な髪のセットなんかも出来るスペースあるから、しっかりバッチリとセットしましょうね、太一vv」

 その言葉に、太一は再度盛大なため息をついた。



「で、満足か?」
「う〜ん、そうねぇ……ねぇ、ヒカリちゃん、おかしくないかしら?」

 服を着替えて、髪を遊ばれて、これ以上ないぐらい不機嫌な声で問い掛ければ、空が心配そうにヒカリへと声を掛ける。

「可笑しくないですよ、空さん」

 それに、ニッコリとヒカリが返事を返した。

「それじゃ、もうそろそろ、呼び出した人物も来るだろうし、はい、これが太一の荷物ねvv」

 腕時計で時間を確認してから、手提げバッグを太一に差し出す。

「お兄ちゃんの服は、私が持って帰るから、楽しんできてねvv」
「はぁ??」

 ニコニコと目の前で笑顔を見せている二人に、訳が分からずに、首を傾げる。
 大体、そうじゃなくても突然こんな格好をさせられただけでも、迷惑な話であるのに、これ以上、一体何を望むというのだろうか???

「太一!」

 そんな事を考えていた自分の耳に、信じられない声が聞えてきた。
 いや、そんなの振り返らなくっても、相手が誰か何て分かるくらい身近な人物。

「……き、聞きたくないが、アイツ呼んだのって……」
「勿論、ワ・タ・シよvv感謝して頂戴ねvv」

 ニッコリ笑顔で自分の事を指差す相手に、太一は複雑な表情を見せた。

 な、何が悲しくって、こんな格好を誰かに見られなくってはいけないのか??

「早かったわね、ヤマト」
「ああ、近くに居たから……それより、これが、太一なのか??」
「そうですよ、とっても可愛いでしょう?やっぱり、私のお兄ちゃんだからvvv」

 ニコニコと嬉しそうに言われるそれに、ただ盛大なため息をつく。

 今更、逃げられる筈もない。
 今まで自分が着ていた服も、既にヒカリの手の中だ。

「それじゃ、後は任せるわね」

 可愛らしい笑顔を見せているのに、恨みたくなってしまうのは、仕方ない事であろう。
 自分たちを残して、その場を去っていく二人の後姿を恨めしそうに睨み付けながら、太一は諦めたようにもう一度ため息をついた。

「で、どうしてそんな事になってるんだ?」

 そして、ため息をついた瞬間、ヤマトが不思議そうに首を傾げる。

「……『口は、災いの元』……って、ヤツだ……」

 質問されたそれに、短く答えて、もう一度ため息。

「って、事で、このまま真っ直ぐ帰っちまうと、空とヒカリに何言われるか分かんねぇし、かといってこんな格好で一人で歩くのはもっと嫌だから、お前も、ちゃんと付き合えよ」
「も、勿論だ!!」

 自分の言葉に、力いっぱい答える相手に、太一は笑みを零した。
 まぁ、勿論、いやだと言う相手が、電話の一つで呼び出されたりはしないだろうが……。

「んじゃ、さっさと移動しようぜ。ここに居るのは、目立つしな」

 先ほどから感じているのは、誰かしらの視線。
 勿論、ヤマトの姿は目立つから当然と言えば当然かもしれない。

 だがこの時、太一はまさか自分が人の視線を集めているなどと、考えても居なかった。





「で、さっきから何なんだ?!」
「……男連れの彼女に、普通声掛けるか?」

 一体何人目か分からない事に、流石のヤマトも不機嫌を隠せないようである。
 それだけ、太一の容姿が可愛いからかもしれないが、これははっきり言って迷惑な話であろう。
 2オクターブぐらい低くなったヤマトの声が、男たちに掛けられる。

「こんな男じゃなくって、俺たちと遊びに行かない?ほら、車もあるし、遠くに行けるよ」

 自分たちが乗っている車を指してのその言葉に、あからさまに太一の表情が険しくなった。

「行くか!!大体、お前等の顔が、こいつより上に見えるのか?顔だけなら、全然こいつのが上だろうが!!」
「……それは、一応、誉めてるのか?」

 怒っている太一を前に、男たちが、言われた言葉に、ためらいを見せる。
 そんな様を横目に、ヤマトは小さくため息をついて、質問を一つ。

「いや、まぁ、ヤマトは、かっこいいなぁって、話で……じゃなくって、なんで、さっきからヤローに声かけられなくっちゃいけねぇんだよ!!」

 自分の格好も忘れている太一は、いい加減に切れかけているようで、その言葉は、何時ものものと代わらない。

 といっても、モトから言葉使いは同じだったが……。

「そんな訳で、こいつが切れるから、諦めて他の子探した方が……」
「うが〜!ナンパなんて、すんじゃねぇ!!」
「って、事だから、早く言った方が、身の安全………あっ」

 流石に声を掛けられたのが数回目となると、太一のパターンも読めると言うもので、この先の事を考えてヤマトが忠告を出そうとした瞬間、どかっと言う音が聞えてくる。

「…遅かったみたいだな……」

 ボソリと呟いて、ヤマトが小さくため息をつく。

 その音は、太一が男たちが乗っていた車のタイヤを蹴りつけた音。
 そして、ニッコリと笑顔を見せる。

「俺がこれ以上切れて、本当に車ボコる前に、うせろ!」

 ニッコリ笑顔なのに、目が笑っていない太一のその表情に、それ以上男たちも何も言う事が出来ないで、そのまま黙って去っていく。
 一体、何人の男が、太一にこの笑顔を向けられたのか、ヤマトには、数える気も起きなかった。

「俺たちって、恋人に見えねぇのか?」

 頭を抱え込んでいたヤマトの耳に、ポツリと聞えたそれ。
 それに、ヤマトが少し驚いて相手を見る。

「だって、ヤマトと一緒に歩いてるのに、邪魔されるし……それって、女の格好してても恋人に見えねぇって事か?」

 心配そうに見詰めてくるその瞳に、ヤマトが複雑な表情を見せた。
 勿論、恋人同士に見えないことはないが、それ以上に、男連れだと分かっていても声を掛けたくなるほど、太一が可愛いと言う自覚は、本人にはないようである。

「まぁ、俺的には、複雑な格好だけど、ヤマトとこうしてデート出来たってのは、ちょっとあいつ等に感謝してたんだけどなぁ……」
「太一?」
「なぁ、腕組んだら、恋人同士に見えるか?でも、暑いか……」
「太一がいいなら、俺は全然問題無い!!」
「んじゃ、組もうぜvvこれで、声も掛けられることは……」
「そこの君!」

 腕を組んで歩き出した瞬間、またしても誰かの声が掛けられる。
 それに、太一の笑顔が引き攣りを見せた。

「……なぁ、振り返るの嫌だから、このまま走るぞ!!」
「同感だ……」

 声を掛けられて、それ以上相手に出来ないとばかりに、そのまま走り出す。
 ナンパだけならいいのだが、芸能界へのスカウトなんかにまで来られては、流石に問題だ。


 口は、災いのモト。
 確かに、そんな事から始まった事だが、まぁ、少しは楽しかったと思いたい。

 もっとも、ヤマトを不安にさせたこの事が、ますます太一の怒りの笑顔に磨きが掛かったのは、言うまでもない事かも知れないが……。



 




  う〜っ、意味不明小説……xx
  す、すみません。
  MARIMOさま、散々お待たせした上に、このような意味不明小説になってしまいまして、本当に申し訳ございません。
  本当に、本当にすみません。(><)
  しかも、全くリクエストにお答えしてないものが……。
   
  思うような小説が、書けませんでした。すみません。(T-T)
  こんな小説ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
  お待たせして、駄文になり、本当に申し訳ございませんでした。
  このようなサイトですが、これからもよろしくして頂けますと、嬉しいです。

  では、89000HIT&リクエスト有難うございました。