― 君とボクとの距離 ―

  初めて会った時、驚いた。

  卒業してしまった、あの人が居るのかと思って、自分の目を疑ってしまったのを今でも覚えている。
  元気にサッカーをしているその姿に、自然と笑みがこぼれた。


                                       


「太一先輩!」

 嬉しそうにまるで子犬が尻尾を振ってじゃれ付くみたいに、満身の笑顔を見せて大輔くんが太一さんの名前を呼ぶ。

 何度も見てきたこの光景、ボクも太一さんの事を好きだから、その気持ちは分からなくも無い。
 だって、本当に太一さんは素敵な人だから……。

「大輔、タケル!」

 そして、太一さんがボク達に笑顔を向けてくれる。
 昔から変わらない、安心できる笑顔。

「今日は、部活休みなんですか?」

 早くから帰っていると言う事から、ボクは太一さんに理由を尋ねた。
 だって、この時間に合えるなんて、殆どない。

「ああ、今日、中間の発表あったからなぁ……」

 ボクの質問に、太一さん苦笑交じりに返事を返してくれる。

 そっか、もう直ぐテストがあるから、部活休みになるんだ。
 なぁんて、納得してたら、僕の隣で嬉しそうに大輔くんが、笑顔を見せる。

「だったら、俺たちの練習見に来てください!」

 本当に嬉しそうに、力拳まで作って太一さんにお願い。
 こんな時でもないと、大好きな太一さんと一緒にサッカー出来ないもんね。

「……悪い、大輔……流石に勉強しねぇと、不味いんだよなぁ」

 苦笑を零しながら言われた太一のそれに、大輔くんがすっごく残念そうな顔をする。


「……あっ、でも、一日ぐらいだったら、大丈夫だぜ」

 困ったように続けて言われたその言葉に、一瞬で大輔くんが笑顔を見せた。
 本当に、分りやすいね。

「本当ですか?」
「おう、約束だ」

 聞き返す大輔くんに、太一さんが笑顔で頷いてみせる。

 こんな二人のやり取りを隣で見詰めながら、ボクは可笑しくって、思わず笑みを零してしまう。

 本当に、二人とも何処か似てる。
 そう思えるのは、同じ紋章を持っているからってだけじゃないと思う。
 だって、それだと、お兄ちゃんにも似てるって事だもんね。

「タケル、何笑ってんだよ」

 ボクが笑っている事に気が付いた大輔くんが、不機嫌そうにボクを睨みつけて来るのに気が付いて、ボクは慌てて手を振ってなんでもないと示した。
 だって、そうでもしないと、折角の上機嫌な大輔くんが不機嫌になって、またボクに突っかかってくるのが分るからね。

「そう言えば、お前達二人だけなのか?」

 そして、大輔くんが文句を言う前に、太一さんが助け舟を出してくれる。

「はい、ヒカリちゃんは、女の子の友達と約束があるって言ってました」

 太一さんの質問に、ちょっと残念そうな表情を見せながら、大輔くんが言葉を返す。
 それは、ボクと二人だけって言うのが、本当に不本意って言うように聞こえるんだけど……。

「そっか…お前達、二人だけって珍しいよなぁ・・・・・・俺とヤマトほどじゃねぇけど、喧嘩ばっかりしているみたいだもんな」

 シミジミと言われたその言葉に、ボクは思わず苦笑を零してしまう。
 だって、ボクと大輔くんのは、喧嘩じゃなくって、大輔くんが一方的にボクに文句を言っているだけだから、喧嘩なんて言えるものじゃない。
 それに、お兄ちゃんと太一さんのようにって、それだって、大抵お兄ちゃんが太一さんに、突っかかっていってるのが原因だって知ってる。

 だって、太一さんとお兄ちゃんの喧嘩の原因は、何時だって本当に下らなくって、見てるボク達の方がハラハラさせられた。

「ところで、太一さんも一人って言うの珍しいよね」

 考えた事に苦笑を零しながら、それでも、今の状況を考えて、自分も思ったことを口にする。

 だって、太一さんが一人って言うのは、本当に珍しいから。
 ボクと大輔くんが二人だけで居る事以上にね。

「えっ?そうか?」

 ボクの言葉に、太一さん不思議そうに首を傾げる。
 本当に、自覚してないのが、この人らしい。

「あっ、確かに、珍しいですよ。いつもあの石田とか光子郎さんとか、後サッカー部の人達と一緒ですよね」
「……まぁ、確かにそうかもなぁ……でも、そんなに何時も一緒って訳じゃねぇよ」

 大輔くんの言葉に苦笑を零しながら、太一さんが言葉を返す。

 確かに、その言葉は本当の事かもしれないけど、違うと思う。
 だって、太一さんと一緒に居たいって思ってるのは、お兄ちゃん達なんだから……。

「太一!」

 ほら、それを証拠に、ボク達の姿を見つけた瞬間、お兄ちゃんが嬉しそうに走ってくる。
 太一さんだけじゃなくって、ボクも大輔くんだって居るのに、太一さんの名前だしけし呼ばない。

「ヤマト…」
「……噂をすればって、奴だよなぁ・・・・・・」

 大輔くんが残念そうに呟くその言葉を聞きながら、ボクも苦笑を零した。

「タケルと大輔も一緒なのか?」

 ボク達が太一さんと一緒に居るのは、遠くからでも分るのに、わざわざ傍に来ていわなくってもいいと思うんだけどね。

「居て悪いかよ!」

 お兄ちゃんの言葉に、大輔くんが不機嫌そうに睨み付けている。

 本当にこの二人って、仲が悪いよなぁ……。
 なんて思って太一さんを見れば、太一さんも苦笑を零しながら、ボクを見た。

「本当、困った奴らだよなぁ…」

 苦笑を零しながら、ボクにしか聞こえないくらいの言葉を呟いて、嬉しそうにお兄ちゃんと大輔くんの姿を見ている太一さんに、ボクは何も答えられずにただ小さく頷いて返す。

 だって、お兄ちゃんが大人気無く喧嘩している相手なんて、今では、大輔くんくらいだと思う。
 太一さんとは親友って立場に落ち着いてからは、昔みたいに喧嘩しなくなったことを知っているから……。

「ヤマト、用事あったんじゃないのか?」

 睨み合っている二人に苦笑を零しながら、太一さんが質問をする。
 それで、その睨み合いは終了。
 だけど、大輔くんは、隣でお兄ちゃんのことを睨んでいるのに、ボクは再度苦笑を零した。

「ああ…テスト勉強、一緒にするだろう?」

 そして、太一さんの質問に確認するように言われたそれ。
 質問じゃなくって、確認な所が、お兄ちゃんだなぁ。

「いいのか?」

 聞かれた事に、太一さんが心配そうな表情で聞き返す。

「当然だろう。約束したしな」

 心配そうに見詰められる中、お兄ちゃんがウインク付きで言葉を返した。
 それに、太一さんの顔が一瞬真っ赤になったのをボクは見逃さない。

「…約束って?」

 意味が分からないって言うように、大輔くんが尋ねたそれは、ボクも聞きたいと思っていた事。

「えっ、いや…前に、テスト勉強一緒にする約束してたんだよ。なぁ、ヤマト!」

 大輔くんの質問に、慌てたように太一さんがお兄ちゃんに同意を求めてる。
 それに、お兄ちゃんは、嬉しそうな笑顔を見せた。

「まぁ、そんな所だな」

 嬉しそうに笑いながら返されたそれは、正直言って、勝ち誇ったように見える。
 もしかして、お兄ちゃんと太一さんって……。

「そ、それじゃ、大輔、ちゃんと練習見に行くからな」

 お兄ちゃんの態度に慌てたように、太一さんがお兄ちゃんの背中を押しながらその場を去って行く。
 慌てたようなその態度は堂考えても怪しくって、ボクが考えた事を肯定していた。

「……失恋かぁ……」

 ずっと好きだった人が、違う人を選んだと言う事を知って、ボクは思わずため息をつく。
 口に出した言葉は、悲しいはずなのに、今のボクにはそんなに悲しいとは思わなかった。

「お前、失恋したのか?」

 ボクの独り言に、大輔くんが驚いたように見詰めて来るのに、思わず苦笑を零してしまう。
 心配そうに見詰めて来るその視線を感じて、ボクはどうしてそんなにショックを受けていないのかと言う事に気が付いた。

「……そっか…」

 目の前で自分を見詰めて来る真っ直ぐな瞳。
 それは、あの人に似ているのに、全く違う。その瞳を前にして、理由が分かった。

 太一さんに向けていた気持ちは、憧れ。
 だけど、いまボクは本当の好きって言う気持ちを知ったから……。

「何が、そうなんだ?」

 自分一人で納得してしまったボクに、大輔くんが訳が分からないと言うように聞き返してくる。

「何でもないよ……そうだね、これがボクの初恋って事なのかなぁって、思ったんだよ」

 自分を見詰めて来るその瞳に、ボクはニッコリと笑顔を見せた。
 それに、益々意味が分からないって言う表情を見せる大輔くんに、ボクはもう一度笑顔を見せる。

 今、気が付いたこの気持ち。
 確かに新しく芽生えたそれを、これから大切にしよう。


 まだ、君とボクとの距離は、遠いから……。
 これから、しっかりと歩いて行こう。その距離を、短いものにする為に……。

 

 



  はい、意味不明小説です。
  す、すみません(><)リクエスト内容は、タケ大だったはずなのに……。
  所詮私は、太一さんFANなんです。ごめんなさい、マイ様。
  しかも、タケルが大輔への気持ちに気が付いた小説って、タケ大と言えるのでしょうか?
  もう、謝るしか出来ませんね、本当にごめんなさい。

  書き逃げのようで、心苦しいです。
  37000GET&リクエストしていただいたのに、お答えできなくって、申し訳ありませんでした。
  本当に有難うございます、マイ様。そして、こんな小説で、ごめんなさい。
  これに呆れなければ、これからも宜しくお願いいたします。