― 幸せな時間 ―

      幸せなんて、人それぞれ。

      小さな事に幸せを感じる人だって居る。
      他人にしてみれば、そんな事でと思うかもしれない、だけど、それは価値観の違い。
      自分にとっての幸せは、好きな人が傍に居てくれる事。

      それが、一番の幸せだと感じる。


         
        

「ヤマト!!」
 
後ろから大きな声で名前を呼ばれた瞬間、相手を確認しなくっても自分にはその人物が分かった。
 振り返って見詰めた先には、予想通りの人物が自分に笑い掛けて手を振っている。

「太一」
「ヤマト、やっぱりここに、居たんだな」

 自分の傍に嬉しそうに走り寄ってくると、ニッコリと満身の笑顔。
 あまりにも嬉しそうに笑っているその人物に、ヤマトは不思議そうに首を傾げた。

「……何か、用事か?」
「用事が無きゃ、お前の事探しちゃいけねぇのか?」

 自分の質問に、少しだけむっとした様に答えて、太一はそのまま何も言わずにヤマトの隣に腰を下ろす。

「……制服、汚れるぞ…」
「お前だって、座ってるじゃんか。だから、いいんだよ……」

 意味の分からないその言葉に、ヤマトは思わずため息をついてしまう。
 確かに、屋上のコンクリートにそのまま座るのは、制服を汚してしまう。

「…いい天気だよなぁ……こんな日に、勉強なんてしてるの、勿体無いと思わないか、ヤマト?」
「…サボるって言うのには、付き合わないぞ」

 嬉しそうに空を見上げての言葉に、再度ため息をついてヤマトが返事を返せば、「ちぇっ」と舌打ちする声が聞こえる。
 それに、苦笑を零してから、ヤマトはそっとポケットからご愛用のブルースハープを取り出した。

「ヤマト、それ……」

 ポケットから出されたそれに、太一は懐かしそうにヤマトを見る。

「ああ、お守りだからな…」

 太一が言いたい事を察したヤマトは、苦笑を零すとそっと何時もの曲を吹く。
 隣で昔と同じ曲を吹くヤマトに、太一はそっと笑顔を見せてゆっくりと瞳を閉じた。
 その曲を聞くだけで、胸が一杯になる。

「……ヤマト……俺……」

 ずっとヤマトを探していた理由は、大した事ではないけど、一緒に居たいと思ったから……。
 自分の呟きに、ヤマトが曲を吹くのをやめずに、不思議そうに自分の事を見詰めて来るのに、太一は居心地悪そうに、そっとヤマトに凭れ掛かった。

「……お前が、急に居なくなるから、いけないんだぞ……」

 凭れ掛かったと同時に、少しだけ拗ねた様に呟かれたその言葉。
 それに、驚いてヤマトはハーモニカを吹く事も忘れて太一を見詰めてしまう。

「……一人で、居なくなるなよな…」

 拗ねていると分かるそれに、ヤマトは自分の顔が笑顔になるのを止められなかった。
 太一から、そんな事を言われたのは、初めての事なのである。
 これを嬉しいと思わなくって、どんな事を嬉しいと思うのだろうか。

「悪かった……ちゃんと声を掛けなくって……」
「…今回だけは、許してやるから……ちゃんと、約束しろよ……」

 上目使いに自分の事を見詰めて来る太一に、ヤマトは優しく笑顔を返す。

「勿論、約束するさ」
「…絶対だぞ!」
「ああ…太一に誓うよ……」

 再度念を押してくる太一に、もう一度笑うと、そのままゆっくりとその唇にキスをする。
 掠めるだけのキスをしてヤマトは、もう一度ニッコリと笑顔を見せた。

「約束の証しだ」
「ば、馬鹿野郎!!ここは、学校なんだぞ!!」
「誰も、見てないだろう?」

 真っ赤になって文句を言う太一に、サラリと返せば、更にその顔が赤くなる。

「そう言う問題じゃない!!」
「俺が悪いわけじゃないだろう?大体、太一が可愛い事言うから、いけないんだぞ。それに、押し倒さないだけ、マシだと思うんだけどなぁ……」

 ヤマトが独り言の様に呟いたその言葉で、太一は首筋まで真っ赤になって口をパクパクとさせて、言葉を失っているようだ。
 そんな姿を前に、ヤマトは思わず苦笑を零した。

 『…お前が、俺の事を必要としてくれる事こそが、一番幸せだと感じるんだけどなぁ……』

「お、お前なんか、もう知らないからな!!」
「おい、太一!!」

 これ以上無いほど真っ赤になって、太一が慌てて自分から離れて行こうとするのを、その腕を捕まえる事で遮って、ヤマトはそのまま太一を引き寄せると、今度はしっかりとキスをする。

「……馬鹿、ヤマト……」

 離れたと同時に呟かれたその言葉に、ヤマトは苦笑を零した。
 自分の胸に顔を隠すようにしているが、その顔は見なくってもどんな顔をしているのか、分かってしまう。

「太一、今日は俺のウチに来るよな?」
「……イヤだって言っても、聞いてくれないくせに・……」

 耳元で囁かれたその言葉に、太一が呆れた様に返してくる。

「当然だろう。明日は折角の休みなんだから、有意義に使わないと損するだろう?」
「……お前の有意義は、俺にとっては迷惑だ!!」

 キッと睨みつけるが、真っ赤な顔のままでは、何の効力も持たないだろう。
 それどころか、そんな顔が可愛いと思ってしまうのだと言う事を、太一はきっと分かっていない。

「そんな顔すると、このまま押し倒したくなるぜ、太一……」

 クスクスと笑いながら、これ以上無いほど物騒な事を言う相手に、太一はここに来た事を正直後悔したくなってしまう。

「そ、そんな事言うなら、今日行かないぞ!」
「…だったら、ここで押し倒しても、俺はいいんだよなぁ……」

 太一の怒ったような言葉に、ヤマトがニッコリと返せば、負けは目に見えている。

「ひ、卑怯だぞ、ヤマト!」
「だから、諦めろって……大体、俺を求めてきたのは、太一の方だろう?」
「誰も、求めてないだろう!!」

 露骨なその言葉に、漸く収まりかけていた太一の顔がまた赤くなってしまう。
 慌てている太一を前に、ヤマトは嬉しそうな笑顔を見せた。

「もう、遅い……だから、約束しろよ、太一……」

 耳元で優しく囁けば、太一の体がピクリと小さく震える。
 それを感じながら、ヤマトは意地の悪い笑いを浮かべた。

「……優しくするから……」
「ヤ、…ヤマトの変態!!」
「お前に関してだけは、認めてやるよ」

 真っ赤になって怒鳴る相手に、笑いながら返事を返す。
 きっとそれすらも太一を怒らせると分かっているのに、怒った顔も好きだからと言うのは、きっと理由ならないだろう。

「俺、教室に帰るからな!!」
「ああ……約束、忘れるなよ」
「約束なんて、してない!!」

 言い逃げするように、そのまま太一が校舎の中へ入っていくのを見送ってから、ヤマトは思わず噴出す。
 そんな事を言っても、太一がちゃんと自分の言葉に従ってくれると分かっているから……。

「……本当に、飽きないヤツ・・・・・」

 笑いながら、手に持っていたブルースハープをポケットの中に仕舞うと、ヤマトも教室に戻る為に立ち上がった。

「……放課後までの辛抱だな……」

 そして、嬉しそうに呟くと一度空に視線を向けて、もう一度笑顔を見せる。


   幸せなんて、人それぞれ……。

   そして、自分の幸せは、君が何時も傍にいる事。

   それが、一番の幸せな時間vv



 


                               

  はい、4000HIT みやこ 様のリクエストです。
  今回、本気で不味いです。確か、リクエストはヤマトが幸せでラブラブなものだったはず…xx
  二人とも偽者!!しかも、ヤマトってば、本気で別人ですね。<苦笑>
  リクエスト返品、聞かなきゃいけないかもな状態なのですが……xx す、すみません、みやこ 様(><)
  自分でも、何が書きたいのか分からないモノに仕上がってしまいました事、反省いたしますね。
  折角、キリ番取って下さったのに、こんなモノで本当にすみませんでした。
         
  もし、こんな小説でも、呆れなければ、また宜しくお願いします。本当に、ごめんなさい!!
  ではでは、4000HIT&リクエスト、心から感謝いたします。
  書き逃げ状態で、本当に申し訳無いです・・…xx