呼び鈴の音に、仕方なく立ち上げると、そっとドアを開ける。
そして、開けた瞬間、驚いて瞳を見開いてしまった。
「よっ!ヤマト、今日の花火大会、一緒に行こうぜvv」
扉を開けた瞬間、嬉しそうに言われたその言葉に、思わず頷いたのは、もう既に2時間も前の話である。
「太一、こんな時間から花火大会って……」
「良い場所取らねぇと勿体ねぇじゃん」
嬉しそうに笑っているその顔に、思わずため息をついてしまうのは止められない。
そう言って、花火大会が始まる2時間以上も前に来る必要は、無いと思うのである。
花火大会が始まるのは、PM7:30。
今の時間は、5:00を少し過ぎたところ。
そして、空は、まだまだ明るい。
「そう言えば、他のみんなはどうしたんだ?」
「みんなって?」
何時もこう言う時には皆に声を掛けている太一が、自分だけを誘ったとは思えないので、ヤマトが真相を確かめようと尋ねてみれば、逆に聞き返されてしまった。
「ヒカリちゃん達だよ」
「ああ……一様、誘ってみたんだけど、他のヤツと行くって・・…」
ヤマトの問い掛けに、太一はふっと視線を逸らすとそう説明する。
そんな太一の態度にヤマトは不自然なんものを感じたが直ぐにその視線が、戻された。
「…今日は、ヤマトと二人だけだけど……もしかして、嫌だったか?」
心配そうに尋ねてくるその姿に、ヤマトは慌てて大きく首を振って返す。
そんなヤマトの反応に、太一は嬉しそうに笑顔を返した。
「……良かった…ヤマトにイヤだって言われたら、どうしようかと思ってた……」
少しだけ照れたように言われたその言葉に、思わず胸がドキリとしてしまうのは止められない。
今日に限って、太一がそんな事を言うのに、ヤマトは内心動揺してしまう。
自分が、太一の事をスキだと言う自覚は、ずいぶん昔からあった。
あの冒険の中で、その感情は既に自分の中に存在してた事だって知っている。
何時からスキなのかなんて、自分では既に分からない。
そんな気持ちを持っているから、今目の前にいる太一を見ていると、まるで自分の事を誘っているように見えてしまうのだ。
「何、ヤマト?」
ジッと太一の事を見詰めていた自分に、突然声を掛けられて、ヤマトは我に返ると、慌てて首を横に振って返す。
「な、何でもない・・…時間、そろそろだな…・・」
自分の行動をごまかすように腕時計に目をやれば、既に花火が打ち上げられる時間になっている。
慌てているヤマトを見ながら、太一は楽しそうに笑顔を見せると、一瞬考えるように自分の腕時計に目をやってから、ゆっくりと瞳を閉じる。
「太一?」
そんな太一の行動に、不思議そうな表情をして、その顔を覗きこもうとした瞬間、ぱっとその瞳が開かれた。
「ヤマト!オレ!!」
それと同時に、一発目の花火が打ち上げられる。
空に大輪の花が開いた。
一瞬そちらに視線を奪われた瞬間、すっと太一が近付いて来る気配を感じて、慌ててそちらに視線を戻したのと同時に、自分の唇に柔らかいモノを感じた。
「……オレ、ヤマトの事……」
ポスッと自分の胸に額を付けるような格好で、太一がポツリと呟いたその言葉は、上がった花火の音に掻き消されるほど小さかったが、直ぐ傍に居たヤマトにだけはちゃんと聞く事が出来た。
そして、その言葉と同時に、ヤマトの顔が驚きから笑顔に変わった事に、顔を下向けている太一は気付かない。
「……太一、俺も……」
そして、今度はヤマトが太一の耳元で囁いたそれは、太一以外の誰にも聞こえないものだった。
空には、大輪の花が咲く。
この場所は、ちょうど高台になっていて、周りに人は居ない。
そう言う場所を、わざわざ選んだから……。
綺麗な花が打ち上げられるたびに、それを主張するかのように音が鳴り響く。
「・・…俺達、両想いだったんだなぁ……」
空に輝く大輪花を見詰めながら、太一は少しだけ照れたようにそう呟いた。
「ああ…そうだな……こんな事なら、もっと早く告白してれば、良かった……」
「本当だよなぁ……」
その呟きに、太一が笑顔を見せる。
暗くなったその中で、花火の光が太一の顔を照らし出すのに、ヤマトは、一瞬見惚れてしまう。
「……太一…」
「えっ?」
そして、そんな太一の肩に手を回して名前を呼べば、不思議そうに首をかしげて自分を見詰めて来るその瞳と視線が合う。
そんな太一に笑顔を見せて、ヤマトはゆっくりと顔を近づけていく。
「……スキだ…太一……」
「…俺も……」
近付いて来る顔に、答えるように瞳を閉じればゆっくりとキスされる。
それと同時に、一斉に空を色とりどりの花火が上がった。
「……なんか、照れる・・…」
「…俺も、同じだ……」
キスしたときと同じようにゆっくりと離れて行くヤマトに、太一が少し赤い顔をして呟けば、同じように照れていると分かるヤマトがため息をつきながら言ったその言葉に、太一は思わず笑いをこぼす。
「……ムードねぇよなぁ、俺達……」
楽しそうに自分の腕の中で笑っている太一に、ヤマトは苦笑を零した。
「だなぁ……周りは、ムード満点だって言うのに……」
満点の星空を飾っている大輪の花。
そんな中、照れをごまかす事の出来ない自分達は、どう見てもムードある恋人同士と言うにはまだまだであろう。
「…まっ、仕方ないか……」
そんな自分達をその言葉で片付けて、太一はもう一度ヤマトに笑顔を見せた。
「…ヤマト、俺の気持ちに答えてくれて、有難と、な……」
そして、真っ直ぐに自分を見せめて言われたその言葉に、ヤマトも笑顔を返す。
「俺の方こそ、好きになってくれて、サンキュー……まさか、お前から告白されるなんて思ってなかったから、嬉しかった」
優しい笑顔を見せながら、言われたその言葉に、太一は少しだけ照れたように頭をかく。
「あっ…えっとさぁ……本当は、ヒカリ達誘ったって、嘘なんだ…俺、ずっとヤマトにスキだって言いたかったから……」
言い難そう言われたそれに、ヤマトはもう一度笑顔を返す。
「ああ、分かってた。お前、俺の顔見ないで言ったから、変だと思ったんだ。お前、嘘付くの下手だからな」
「……なんだよ、それ……」
笑顔と共に言われたそれに、太一は拗ねたようにヤマトを睨みつける。
「言葉通りだ」
「ちぇっ・…人の事、子供扱いするなよなぁ……」
プイッとヤマトから視線を外せば、これ以上無いほど優しい微笑が向けられて、ゆっくりと両手で顔を包まれた。
「してないだろう?」
自分の頬に手を当てるようにして、ヤマトが真っ直ぐに自分を見詰めて来るのに、太一はは思わず顔を赤くする。
少し大人びた視線が、更に自分を子供扱いしているように見えてしまう。
「・・…ヤ、ヤマト…手・・…」
自分の頬に添えられている両手を離してもらいたくって、太一が呟いたその言葉に、ヤマトが一瞬首をかしげた。
「えっ?ああ…もう一回、キスしてもいいか?」
そして、太一が言わんとした事を理解してから、優しく問い掛ける。
「……い、いいけど……い、一回だけだからな……」
問われた内容と、真剣なヤマトの瞳に、更に真っ赤になりながら太一が念を押すように頷くのに、満足そうに頷いて、ゆっくりとキスをしかけた。
太一もギュッと目を瞑ったその瞬間……。
「お兄ちゃん!」
遠くから聞こえてきたその声に、二人共がそのままの形で固まってしまう。
「ヤ、ヤマト…今の声って……」
後数センチと言った所で固まっているヤマトに、太一が恐る恐る聞いたのは、その声の人物を良く知っているから……。
「……ヒカリ、ちゃんだろう…」
後少しと言うところで邪魔をされたヤマトは、盛大なため息をついて太一から離れる。
「やっぱりそうだよなぁ……でも、なんでこの場所分かったんだろう……?」
今、自分達のいる場所は、穴場中の穴場で、周りには人一人いないと言う場所なのだ。
しかも、花火は綺麗に見えると言うその場所を、太一は誰にも教えた事など無いはずである。
「お兄ちゃん!!」
漸く自分を見つけたその声は、嬉しそうで、思わず太一は笑顔手を振ってしまう。
「……お、お前達…」
だが、その後ろにいた人物達を見た瞬間、太一とヤマトは唖然としたように、言葉を無くした。
「太一先輩vv」
嬉しそうに自分に走り寄ってくる大輔を始め、浴衣姿のヒカリと空。
そして、その後ろで苦笑を零しているタケルと光子郎。
京と伊織までもが、自分達に笑顔を見せているのに、驚くなと言う方が無理な話であろう。
「……居ないのは、丈とミミちゃんだけかよぉ……」
その場に居ない人物だけの名前を言って、太一は思わず頭を抱えてしまった。
別に、皆でわいわいやるのが嫌いではないのだが、今だけでいいから、ヤマトとの二人きりな時間を楽しみたいと思った自分の考えは見事なまでに壊されてしまったようである。
「お兄ちゃん、酷いよぉ!私達、探しちゃったんだからね」
自分の傍に来たヒカリが、少しだけ拗ねたように呟いたその言葉に、太一は苦笑をこぼす。
「ワリイ、ヒカリ……でも、良くここが分かったな…」
「えっ?うん、この場所は、光子郎さんが探してくれたの」
にっこりと可愛い笑顔で言われたそれに、驚いて光子郎に視線を向ければ、にっこりと笑顔を返されてしまう。
「はい、花火が打ち上げられる場所を考えれば、この場所は穴場ですからね」
当然のように言われたそれに、太一は思わずため息をついてしまうのを止められない。
自分は、ここを探すのにかなり苦労したのだ。
それをあっさりと見つけられたのだから、太一の気持ちは複雑であろう。
伊織や京が、打ち上げられる花火を見ているのを横目にしながら、ヤマトは思わずため息をつく。
「お兄ちゃん」
「タケル…」
そして、にっこりと自分の方に近づいてきた弟に気が付いて、何とか笑顔をむけた。
「あのね、お兄ちゃん」
「な、何だ?」
にこにこと嬉しそうな笑顔を見せているタケルのその姿に、ヤマトは一瞬何か怖いものを感じながらも、思わず聞き返してしまう。
「太一さんは、お兄ちゃんに渡さないからねvv」
にっこりと笑顔のまま言われたそれに、ヤマトは言われたその言葉に、一瞬何も言い返す事が出来なかった。
だが直ぐに、自分を取り戻すと、タケルを睨みつける。
「タケル、お前!!」
「あっ!それから、太一さんの事を狙っているのは、僕だけじゃないから覚悟しといた方がいいと思うよ」
自分が睨みつけているのにも、全く気にした様子も無く、更に笑顔で言われたそれにヤマトが慌てて太一に視線向けた瞬間、その言葉の意味を理解してしまう。
太一は、ヒカリを始め、光子郎や大輔と楽しそうに話をしている。
そして、太一と話しているその3人の顔を見れば、タケルが言った意味は、自ずと理解できると言うものだ。
「……ごめんね、ヤマト……本当は、邪魔したくは無かったんだけど、みんなを止める事が出来なかったのよ…」
そして、呆然としてしまったヤマトの肩を、申し訳なさそうに叩いて、空が苦笑を零す。
「でも、ほら…太一は、ヤマトのことが好きだから、大丈夫よ!」
「空、悪いけど、慰めになってない……」
「…ごめん……でも、ヒカリちゃんは手強いと思うから、しっかり!」
肩を落としているヤマトを慰めるようにポンッと背中を叩くと、空は慌てたように京達の傍に行く。
その後姿を見送りながら、ヤマトはもう一度盛大なため息をついた。
「ヤマト!そこで、何してるんだよ、こっちに来て、一緒に花火見ようぜvv」
だが、そのため息をついた瞬間に、嬉しそうに自分の事を呼んでいる太一の笑顔に、気分は何とか浮上を始めた。
太一の直ぐ傍で自分の事を睨んでいるヒカリも、太一には従うしかないようである。
「ああ・…」
その強い視線を受けながら、ヤマトは素直に太一の隣に席を取る事が出来た。
「……ヤマトさん…」
「んっ?」
はしゃいでいる太一の隣に腰を下ろした瞬間、名前を呼ばれて顔を上げれば、不機嫌そのままのヒカリの視線とぶつかってしまう。
「ヤマトさんに、お兄ちゃんは渡さないんだから!!」
そして、太一には聞こえないように小声で言われたその言葉に、ヤマトは再度苦笑を零した。
プイッとそっぽを向いて、ヤマトを見ないようにしているヒカリの姿にため息をつく。
そん中、突然肩に重みを感じて、ヤマトは驚いたようにそっちに視線を向ければ、自分に凭れ掛かっている太一の姿がある。
「…こ、これくらい、いいだろう…みんなに、邪魔されちまったんだから……」
照れたような上目使いで見詰められて、思わず笑いを零す。
無意識の行動なのに、太一はちゃんと自分の心を理解しているようだ。
そんな太一の行動に、ヤマトが、そっとその肩に手を回した。
周りから見れば、完全な恋人同士のそんな雰囲気。
勿論、そんな事を太一が分かっているはずも無く。
周りの人物達の気持ちなど、全く気が付いていない。
「やっぱり、花火ってみんなで見るに限るよなぁvv」
そして、花火が終わった瞬間、太一が言ったその言葉に、誰も何も言えなかった事は言うまでも無い。
幸せな時間を過ごしたのは、恋人同士になった二人と、それに気がつかなかった京と伊織だけであろう。

2000HIT、水月様からのリクエストvv
花火でラブラブなヤマ太……xxだったのに、み、見事なまでに邪魔がぁ〜xx
大変申し訳ありません、いい雰囲気ではあったと思うんですけどねぇ……。
所詮、ウチは太一アイドルですから(笑)
そ、それにしても、花火?…・どこが…?またしても、リクエストに答えてないものが……xx
リクエスト貰って、一つでも良いのでちゃんとお答えしたいのに、このままでは夢に終わってしまいそうで…xx
そう言うわけで、折角リクエストを下さったのに、お答えしないものになってしまいまして、すみませんでした。
キリ番GET&リクエスト、本当に有難うございました。
これに呆れなければ、また宜しくお願いいたしますねvv
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