「お兄ちゃん、本当に行かないの?」
質問されたそれに、太一さんが小さく頷く。
「今日は、光子郎とサポートに回る。俺が行っても、役に立たないし、な」
「そ、そんな事ないですよ!!」
苦笑交じりの太一さんの言葉に、大輔くんが勢い良く否定。
それに、太一さんは、小さくため息をつくと、大輔くんの頭にポンッと手を乗せた。
「役立たずなんだよ。お前達は、ダークタワーを壊す為に行くんだろう?ダークタワーが立っている場所では、アグモンは進化させられない。そうなると、足手まといになるんだ」
分かりやすく説明するように言われる言葉に、大輔くんは流石に何も言葉を返す事が出来ないようである。
確かに、進化も出来ないデジモンを連れている太一さんでは、一番の標的になってしまうのは、誰が考えても間違いはない。
「だから、サポートに回るんだ。っても、光子郎が居れば、俺のサポートは必要なけどな」
何も言わない大輔くんに、太一さんがウインク付きの笑顔を見せる。
「そんな事ないよ。太一さんが居てくれると、心強いからね」
「サンキュー、タケルvvそんな訳だから、気を付けて行ってこいよ」
「は〜い!分かりました!!」
太一さんの言葉に、皆さんが元気良く返事を返す。それに、太一さんも満足そうに頷いた。
「では、行きます!『デジタルゲート、オープン!選ばれし子供達、出動!!』」
京くんの掛け声とともに、小学生の皆さんが、パソコンの中へと吸い込まれていく。
それを見送ってから、太一さんは小さくため息をついた。
「お疲れ様です」
そんな太一さんに、今まで黙って話を聞いていた僕はそっと声を掛ける。
「……イヤミか、光子郎……」
しかし、僕の言葉に、太一さんは複雑な表情を浮べて睨み付けて来た。
そんな太一さんに、僕は苦笑を零す。
「とんでもないですよ。僕の正直な気持ちです。皆さん、太一さんが居る時は、とても生き生きしてらっしゃいますからね」
「そうか??」
自分の言葉に、納得出来無いと言うような表情を見せる太一さんに、もう一度苦笑する。
本当に、自分と言うモノを分かっていない人ですね、貴方は……。
「僕としては、妬けるんですけどね」
だから、少しだけ意地悪。だって、久し振りに二人きりになれたと言うのに、どうしてヤキモチを焼かなくってはいけないんでしょうね。
勿論それは、貴方が誰からも好かれて居るからだという事を知っていますけど……。
「なっ!!」
僕のその言葉に、真っ赤な顔をする太一さんは、何時もの姿を知っていても、やっぱり可愛くって、もっと苛めたくなってしまう。
貴方が、自分のモノであると、皆さんに話してしまいたくなるくらいに……。
「デジタルワールドに行かなかったのは、僕と二人きりになる為ではなかったんですか?」
くすくすと笑いながら、そう言えば、ますます太一さんの顔が赤くなる。
本当に、分かりやすい人ですね。
「こ、光子郎!お前、サポート役……」
「今日の作戦は、全てタケルくんに話してありますよ。ですから、僕達は、先生方がいらっしゃらないように見張りをしているだけでいいんです」
慌てて太一さんが言おうとしたその言葉を笑顔で遮ると事実を教えた。
だって、本当に僕は、何時もそう言う役割をしているから……。
確かに、時々、その場に応じて連絡も入れる事もありますけど、緊急時以外は、それも殆ど無い。
「いや、だけど……」
慌てている太一さんを前に、僕は小さくため息をついて、苦笑を零した。
「それとも、僕とは、二人きりになんて、なりたくなかったんですか?」
「そんな事はない!!」
少し寂しそうに言えば、即答で返事が返される。
そんな所が、可愛いんですけどね……。
「それじゃ、久し振りの時間を、楽しみませんか?」
「……た、楽しむって…ここは、学校なんだぞ!」
太一さんの言葉が嬉しくって、笑顔で言えば、慌てたように言葉が返される。
確かに、ここは小学校のパソコンルームで、何時皆さんが戻って来るかも分からない状態である事は、僕も認めます。
でも、貴方と一緒に居られて、何もせずに居る自身は、僕には無いんですよ。
「大丈夫ですよ。僕だって、場所はちゃんと分かっていますので」
ニッコリと笑顔で言えば、あからさまにほっとした表情を見せる太一さんが居て、僕としては、複雑な気持ちになってしまった。
「そんなに、何かされるのは、嫌なんですか?」
だから、そんな気持ちが思わず口に出てしまう。
そう言う所が、まだ子供だと自分でも反省してしまうけれど、どうしても知りたいから……。
「……い、嫌な訳じゃ……ただ、その…は、恥ずかしいんだよ!!」
そんな僕の質問に、真っ赤な顔で言葉を返してくれたそれに、顔を上げて太一さんを見詰める。
どうして、この人は、僕が欲しいと思う言葉を何時だってくれるのだろうか??
「…そんな嬉しい事言って貰えるとは、思っていませんでした……」
「あ、あのなぁ……嫌だったら、お前に告白された時点で、断るぞ、俺は!!」
キッパリと言われる言葉は、何時だって僕に幸せをくれる。
「そうでしたね。貴方は、そう言う人ですよね……」
きっと、自分の事をそう言う風に思っていなかったら、悩んだ末に、OKなどしては貰えなかっただろう。
悩んで出された答えは、自分が望まない答え……。
「……ただの仲間として、貴方の傍に居るつもりなんてありませんけどね」
「光子郎?」
自分が考えた事に、自嘲的な笑みを浮かべて、正直な気持ちを口にする。
諦める気なんて、全く無い。
どうしても手に入れたかった、僕の大切な人。
「何でもありませんよ。それよりも、触れても、構いませんか?」
心配そうに僕を見詰めてくる瞳に、そっと問い掛ければ、一瞬驚いたように瞳を見開く。
「お、おう!!」
そして、気合を入れるように頷かれて、僕は思わず苦笑を零した。
そんなに、緊張しなくってもいいと思うのですけどねぇ……。
でも、許可は頂いたので、すっと手を太一さんの頬へと伸ばす。
そして、その頬に手を添えた。
手に感じられる温かい、体温。
くすぐったいのか、太一さんの体が逃げそうになる。
それに気が付いて、僕はそっと太一さんを抱き寄せた。
「こ、光子郎?!」
その瞬間、慌てて僕の名前を呼ぶ太一さんに、ただ笑顔を見せてそっと顔を近付ける。
貴方と一緒に居るのに、何もせずに居られるほど、僕は大人ではないから……。
そっと重ねるだけの、キス。
一番、貴方を近くに感じられる一瞬。
でも、それだけじゃ物足りなくって、もう一度唇を重ねた。
「んっ…」
先程と違って、太一さんの少し開いた口からそっと、舌を差し入れれば、その体が小さく震える。
キスは、数えるぐらいしかした事が無い。
その数えるぐらいのキスの後、必ず太一さんの顔は真っ赤に染まる。
それを見るのも、キスをした時の楽しみの一つ。
皆から慕われている彼を、自分のモノだと思える瞬間だから……。
「はぁ…」
そっと唇を離した瞬間、切ないため息が聞こえて、僕はそっと太一さんの顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですか?」
少し潤んだ瞳が、ボンヤリと僕を映し出す。
だけど、僕の声が聞こえていないのか、太一さんの、反応は無い。
「太一さん??」
確認するように、名前を呼ぶ。
少し赤くなった頬と、その潤んだ瞳を見ていると、自分の理性が、なくなってしまいそうで……。
「太一さん!」
「……あんなキスは、するなって言ったのに……」
もう一度大きな声で名前を呼べば、真っ赤な顔で太一さんが俯いて、ポツリと呟く。
それが、可愛くって、僕はもう一度今度は頬にキスを一つ。
「光子郎!」
その瞬間。真っ赤な顔で太一さんが僕の名前を呼ぶ。
「それでは、この続きは、また二人きりになった時に、ですね」
だから、少しだけからかうように、そっと太一さんの耳元で囁いて、僕はパソコンへと視線を向ける。
その瞬間、画面が眩しいくらいに光って、出掛けていたタケル君達が戻って来た。
「お疲れ様です」
ニッコリと何事も無かったように、出迎える。
「ただいま……光子郎先輩、今日の成果なんですけど……」
一番に僕へと挨拶をして、京くんが今日の事を詳しく説明してくれるのに、耳を傾けた。
「お兄ちゃん、どうかしたの?顔が赤いけど??」
そして、そんな中、太一さんの様子が可笑しい事に気が付いたヒカリさんが、心配そうに尋ねている声が聞こえて、僕は内心苦笑を零す。
「な、なんても、ねぇって……お帰り、ヒカリ!」
ヒカリさんに、慌てて何時も通りを装う太一さんの声が聞こえてきて、僕は思わず吹き出しそうになった。
「光子郎先輩?何か、いい事があったんですか?顔が笑っていますよ…」
その瞬間、京くんが不思議そうに尋ねてきた事で、僕は自分が笑っている事に気が付く。
本当に、貴方と居ると、幸せになれますね。
「いい事はありましたけど、秘密です」
だから、今はその幸せを大切に……。
貴方が居る事、それが、僕の幸せ。
だから、この幸せが、何時までも続く事を……。
お、お待たせいたしました!!
漸く、本当に漸く、書く事が出来ました。
64000HIT、リクエスト小説です!!
し、しかし、またしても、リクエストにお答えしてないモノが・……。
確か、リクエスト内容は、光太でPCルームにて、あーんな事やこんな事……では、無くって、デートだったはず…xx
ど、どこが??
お待たせしたのに、リクエストにお答えしてない駄文にて、本当に申し訳ありません。
もう、言い訳はいたしません。
苦情は、受け付けますね……。
草葉 亮様。
64000HITリクエスト有難うございました。
駄文にて、本当にすみませんでした。
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