『もしも、夢が叶うとしたら、貴方なら何を望みますか?』
雑誌を捲っていた太一は、書かれているそれに、手を止める。
「……夢…かぁ……」
書かれている事はなんて事の無い言葉なのに、太一はそっとその言葉を口にして、小さくため息をついた。
「太一?」
突然呟かれたその言葉を耳にしたヤマトが、不思議そうに首をかしげて太一を見詰める。
「えっ?」
「えっ、じゃ無くって、どうかしたのか?」
自分の呼び掛けに驚いたような声を上げる太一に、ヤマトは思わず苦笑を零す。
そして、再度心配するように尋ねた。
「……んっ、ヤマトの夢って何だ?」
「夢?」
「そっ、夢」
再度聞かれたその言葉に、ヤマトは考えるように天井を見上げる。
そんなヤマトを見詰めながら、太一はそっと読んでいた雑誌をソファに置いて、ただ言葉を待つ。
「……夢なぁ……俺の夢は、叶ったから…」
「って、事は、やっぱりバンドでデビューする事だったのか?」
ポツリと呟かれたその言葉に、太一は興味津々状態で質問を返す。
そんな相手に、ヤマトは苦笑を零してそっとその相手を抱き寄せた。
「俺の夢は、こうして大切な奴とずっと一緒に居る事」
そっと抱き寄せられたと同時に、優しいキス一つ。
そして、その後に囁かれたその言葉に、太一の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
「だから、叶ったんだよ」
真っ赤な顔をしている自分の一番大切な相手に、ヤマトは蕩けるような笑みを見せた。
「…ば、ばか……」
自分の目の前で、笑みを見せるその姿に、太一は真っ赤な顔のままただ文句を言う。
『もしも、夢が叶うとしたら、貴方なら何を望みますか?』
−おまけ−
「……ずっと一緒に居るって、お前ツアーとかで殆ど家に居ねぇじゃんか!」
「……いや、だから、そう言う意味じゃなくって……」
「そう言う意味じゃねぇなら、どんな意味だよ?」
「こうして、好きな奴と一緒に住めるって、事で……」
「こんなの、一緒に住んでるって言えるのか?!」
「……いや、そうかもしれないけど、太一が居るこの場所に戻ってくるのは、俺の夢だった訳だし……」
「俺が、お前の居ないこの家でどんな気持ちで居るか、分かってないだろう?」
「……太一、俺が居なくって、寂しいのか?」
「ち、違う!!もう、お前なんて知るもんか!!」
「えっ?ちょっと、太一!」
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