「ヤマト?」
ひょっこりとキッチンからリビングに顔を出した瞬間、ソファにその姿を見付けて慌てて両手で口を塞ぐ。
気持ち良さそうに眠っているその姿に、思わず笑みを零した。
最近ずっと忙しそうだったのを知っているからこそ、こうしてゆっくりと出来る時間がある事が幸せだと思えるのだ。
「……お疲れ様…」
眠っているその姿に、笑みを見せてそっとその頬にキス一つ。
ゆっくりと疲れを癒して欲しいと思うから、そして、出来れば夢の中に自分を見て欲しいと言う願い。
「……一緒にお茶でもしようかと思ったんだけどなぁ…このまま寝かしてやるか」
小さくため息をついて、自分の足にじゃれてきた一匹のネコを抱き上げる。
「静かにしろよアグ」
抱き上げた子猫が小さく声を上げるのに、苦笑を零す。
そして、そのままそのネコを膝に乗せて空いているソファに腰をおろした。
気持ち良さそうに眠っているその姿にもう一度笑みを見せて、膝の上の子猫の頭を撫でてやる。
気持ち良さそうに喉を鳴らす相手に、優しく笑いながら、のんびりとした時間にゆっくりと瞳を閉じた。
「……ヤマトの気持ち分かるかも……」
ぽかぽかと気持ちの良い日差し。
そして、何よりも心地よい空間に、安心すると瞼が重くなってくる。
「……夕飯の準備………」
膝の上のネコまでもが気持ち良さそうに眠っているのを見て、太一も大きくあくびをした。
気持ちの良い時間、誰もがその心地よさに浸ってしまうそんな空間。
「…ちょっと、だけ……」
自分自身に言い訳をするように、ゆっくりと意識を手放していく。
この幸せな空間の中で、4つの寝息が静かに聞こえ始めた。
気持ちいい、肩に感じる体温。
このままもう少しこの時間を感じて居たいと思える、気持ち良さ。
そして、そこまで考えて、はたっとある事に気がついた。
自分の隣に感じるその体温の正体が、一体なんであるのか?
「起きたのか?」
慌てて瞳を開いて、隣にあるその正体を見ようとした瞬間、良く知った声が掛けられた。
そのお陰で、眠気など一瞬にして吹き飛んでしまう。
「ヤ、ヤマト??」
「おはよう、太一。って、もう夕方だけどな」
自分の目の前で笑みを見せている人物に、太一は慌てて壁に掛けてある時計へと視線を向ける。
時計は既に、夕方の6時を指していた。
「俺、3時間も寝てたのか?」
「そうみたいだな…俺も、気が付いたら寝てたみたいで、目の前に太一が寝てるのを見た時には、驚いた」
「お、お前、何時目が覚めたんだよ?!」
あっけらかんとした口調で言われたそれに、太一が慌てて問い返す。
自分が寝る前、確かにヤマトは熟睡していたから……。
「そうだなぁ、う〜ん、1時間ぐらい前だ」
「それから、ずっと俺の隣に居たのか??」
さらりと言われた事に、呆れたように呟けば、笑顔が返される。
「まぁな。太一の寝顔可愛いし」
ニッコリと笑顔で言われたその言葉に、顔が赤くなるのを止められない。
「か、可愛いって言うな!」
「本当の事だ。それに、俺がこっちに移動しなきゃお前倒れそうだったんだよ」
ぽつりと言われたそれに、そう言えば自分の体がヤマトにもたれかかっていた事を思い出して、盛大なため息をついてしまう。
「ば〜か、起こしてくれれば良いんだよ、そう言う時は……」
呆れたようにため息をついて言えば、目の前でヤマトが笑う。
「たまには、一緒に昼寝って言うのもいいもんだろう?」
そして、言われたその言葉に、もう何も言う事など出来なかった。
だって、自分も、そう思ってしまったから……。
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