目の前のテレビに映されているのは、自分にとって、一番大切な相手。
その姿を見詰めながら、盛大なため息をつく。
「……こんな事なら、ヒカリの言う通り、家に帰った方が良かったか……」
思わず盛大なため息をついても、仕方ないと許されるだろうか。
結婚して既に数年。相手の仕事の仕事の関係上、一人で居る事には随分慣れてしまった自分が悲しすぎる。
「……でもなぁ……」
そう、慣れたと言っても、寂しくない訳ではない。今日のように特別な日に、大切な人が居ないのは、どうしてもやるせない気持ちは隠せないのだ。
「……こんな日ぐらい、仕事すんな、馬鹿……」
画面に向って文句を言っても、相手に聞える筈もないだろう。それが分かっているからこそ、太一は盛大なため息をついた。
「……新年まで、カウントダウンかぁ……」
画面から流れてくるカウントダウンを聞きながら、再度ため息をつく。
今年最後のため息。
『A happy new year!!』
そして、流れてくるクラッカー音と、盛大な挨拶の声。その瞬間、家の電話が鳴り響いた。
「……もしかして!」
あまりにもタイミング良く鳴り響いたその音に、太一は慌てて受話器を手にとる。
「もしもし!」
『太一、明けまして、おめでとう』
電話に出た瞬間、耳に聞えてくるのは、大好きな声。そして、年明けの挨拶の言葉。
「……おめでとう、ヤマト……仕事、まだ途中なんだろう?」
『ああ、でもこの瞬間は、太一と話していたからな』
「ば〜か、それは、俺も同じなんだよ」
聞えてくる言葉に、今までの寂しさなんて吹き飛んでしまう。
何時だって、自分を思ってくれていると分かっているからこそ、こうして一人で居るのだって大丈夫だと思えるのだ。
「……仕事、頑張れよ」
『ああ、後少ししたら、帰るから』
「おう!バッチリと御節作ってるから、楽しみにしてろよ!!」
『楽しみにしてる。悪い、時間だから……』
「ああ、ちゃんと見てるから、しっかり俺にラブソング歌って見せろ!」
『分かった』
返事が返された後に、スタッフのヤマトを呼ぶ声が受話器の向こうから聞えてくる。それに返事を返して、短い言葉を交わしてから、電話は切られてしまう。
「……本当、忙しい奴……」
切られた電話の瞬間に、画面の前に先ほどの電話の相手が映し出される。それに、太一は笑みを零した。
新しい年でも変わらない。
大切な相手が傍に居るから……。
だからこそ、笑顔で迎えられる。
世界中の人に、A HPPY NEW YEAR。
今年も、素晴らしい年でありますように……。
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