携帯に視線をやれば、もう直ぐ新しい年を迎えることに気が付いた。
 歩いていた足を止めて、そのまま慣れた手つきでメールを打つ。

「……後は…」

 打ち終わってから、もう一度携帯で時間を確認。
 12時一分前を表すその数字を見て、笑みを零す。
 そして、12時回った瞬間、そのまま送信を押した。

『A HAPPY NEW YEAR 太一』

 短いそれにすべての気持ちを込めて。

「さて、早く帰るか」

 メールを送ってから、携帯をポケットにしまい込んでまた歩き出す。
 新しい年を迎えたのに、自分は何も変わらない。
 今だって、誰も居ないあの家に戻っているのだ。
 今日、いや、昨日の昼まで、自分にとって大切な人と一緒に居た場所に……。
 ゆっくりとした足取りで進む自分のその歩みを止めたのは、携帯の呼び出し音。その音は、自分が大切にしている人のモノ。

「太一」
『A HAPPY YEAR ヤマトvv』

 急いで電話を取って、相手の名前を呼ぶ。その直ぐ後に、自分が送ったメールの言葉が耳に届いた。

「明けまして、おめでとう、太一」

 自分のメールの後直ぐに電話をくれる大切な相手に、そっと今度は本来の挨拶を返す。
 自分のその言葉に、相手が笑う気配を感じて、自分も笑みを零した。

『メール、サンキュー。所で、親父さんは?』

 青相手続けに質問されたそれに、思わず苦笑をこぼす。

「……例に漏れず仕事だ。今、親父のところに夜食持って行って、その帰り」

 盛大なため息混じりに返事を返せば、相手が苦笑しているのが分かる。
 そして、少しだけ考えるように間が相手から、納得したようにポツリと呟かれる言葉。

『なら、ヤマト、一人なんだ……』
「そうだけど……まさか?!」
『今、外なんだろう?そのまま、初詣行こうぜ!俺、出て行くから!!』
「て、太一!!」
『んじゃ、何時もの場所で!!』

 続けて言われるその言葉に、俺が言葉を返すよりも先に通信が途切れてしまう。
 そして、聞えてくるのは、無機質な機械音。

「……あいつは……」

 こんな時間に、相手を外に出させる事になるなど、考えてもいなかった。
 メール一つで、こんな事になるなんて……。

「…と、文句言っても、喜んでる自分は、隠せないよな……」

 自分にとって大切な人が、自分の為に動いてくれる。それが、嬉しくない筈は無い。

「さて、温かい飲み物でも持って、待っててやるか」

 直ぐ近くに自販機へと歩き、二人分の飲み物を買う。
 動考えても、ここから待合の場所には、自分の方が裂きに辿り着くと分かるから……。

「たまには、こんな新年もいいもんだな」

 大切な人が、自分の傍に向っている事が分かるから、嬉しい気持ちは、隠せない。
 一つのメールで、君が、来てくれる。
 それが、嬉しいから、こうして寒い中待つのも悪くは無い。
 後少しもすれば、君が息を切らしながら、この場所へと走ってくるだろう。

 そしたら、今度は直接、言おう。

 『明けましておめでとう。今年も、宜しく』と……。