一年が、無事に終わった。
また、新しい年が始まる。
昨日と同じ、そして、何処か違う、新しい今日が……。
今年も、大量に贈られてきた年賀状を前に、盛大なため息をついてしまう。
新年早々、こんな気分にさせてくれるそれ等に、俺はもう一度盛大なため息をついた。
バンドを始めてから、更に増えた年賀状。
勿論、返事なんて返すつもりは全く無いそれ。
年賀状なんて、選ばれし子供の仲間達にしか送っていない。
バンド仲間では、暗黙の了解で、そんな行事は行わない決まりだ。
だから、関係の無い奴から送られてきたそれ等は、正直言って迷惑意外の何物でもない。
「ああ、あいつは毎年律儀に返事を返してたな……」
毎年増えていくのだと愚痴を零していたのをも出だして、思わず苦笑を零してしまう。
知らない奴からのなんて、無視すればいいものを、あいつは変なところで律儀だからな……。
大切な奴を思い浮かべて、盛大なため息。
ああ、俺って、年明け草々ため息ばっかりついてるよなぁ……。
「コーヒーでも入れるか……」
取り合えず、年賀状の仕分けは終わった。
親父の分と、仲間から来た年賀状は別に分けて、テーブルに置く。
そして、一応関係の無いモノも、その隣に置いた。
「親父の奴、今日も帰ってこないんだろうなぁ……おせち料理、無駄になっちまうぜ」
キッチンでコーヒーを入れてから、また椅子に座る。
そして、年賀状を手に取った。
その一枚一枚を確認しながら、目を通していく。
不意に、一枚の葉書でその手を止めた。
「……毎日会っているのに、会いたいなんて思うのは、贅沢かもな……」
一枚の葉書を手に、思わず苦笑を零す。
その瞬間、聞こえてきた携帯の着メロ。
相手なんて、確認しなくっても、一発で分かるその音楽に、俺は慌てて携帯を手に持った。
「もしもし?」
『あっ!ヤマト。今から、お前ん家行くから、宜しくな!!』』
出た瞬間にそれだけを言って、俺に何も言わせずにそのまま通話を切られてしまう。
余りに突然過ぎて、俺はそのまま携帯を握り締めたまま、反応に困っていた。
それでも、今から来ると言ったその言葉に、思わず顔がニヤケてくるのを止められない。
本当に、台風のような奴だ。
だけど、それは嬉しい報告。今からくると言う、あいつの為に……。
「しょうがない、カフェオレでも作ってやるか」
ここに来るのには、そんなに時間も掛からないだろう。そう予想して、あいつの為に、飲み物の準備。
自分の為ではなく、大切な誰かの為に何かを作れることの喜び。
ちょうど出来あがった瞬間に、玄関の呼び出し鈴が鳴り響く。それに、俺は慌てて玄関に急いだ。
玄関のドアを開いた瞬間、飛び込んでくるのは、大切な人の笑顔。
「ヤマト、明けましておめでとう。今年も宜しくな」
満面の笑顔で言われたその言葉に、俺も笑顔を返す。
「ああ、明けましておめでとう、太一。勿論、今年も宜しくな」
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