OMATSURI
ドンドンドン
ピューピロピロ
お囃子の音色が15階の位置にある太一の家にまで聞こえてくる。その音色を聞きながら、時計を気にしつつ、母親に浴衣を着せてもらう。
「母さんまだかよ?」
「もう少しよ。ホラできた」
ポンと結んだ帯を叩くと、姿見に写し出された自分の姿をマジマジと見つめる。
「なんか女の子みて〜〜」
紺地にひまわりの柄の浴衣に、帯はチョウチョ結びにされているので、女の子にしか見えない。しかも母親が跳ねている髪を綺麗に降ろしている。
「ん〜完璧ねvvこれでヤマトくんのハートもバッチリゲットよ!!」
「母さん!!」
真っ赤になる息子に笑いながら、お小遣いを渡す。からかわれたと知って、憤慨する太一だがお小遣いだけはちゃんと、貰い浴衣とお揃いの生地の巾着にいれる。
「そうだ。太一……あっちでヒカリと逢う約束してる?」
「はえっ?約束はしてないけど、タケルがこっちにきてるはずだから、タケルと一緒にいると思うよ」
デジヴァイスとハンカチを巾着の中に入れながら、太一は首をかしげる。
「なるべく早く帰ってきなさいよって、タケル君もウチに泊まって行きなさいよって……」
「じゃあ、逢ったら伝えておくよ」
お願いねと太一用の下駄を手渡して、母親は夕飯の買い物に出かけてしまった。
太一も時間を見て、ヤマトと待ち合わせをしている場所へと、慣れない下駄を履いて向かった。
先に待ち合わせの公園についていたヤマトは、同じように待ち合わせに使っているカップル達を見て、羨ましく思ってしまう。
「どうせ太一は、私服なんだろうな〜〜」
遊ぶことを第一に考える太一が、浴衣を着てくるとは思わず、それでも少しの期待をして、自分は甚平を着てきた。
「それにしても遅いな〜。イベントでの待ち合わせは、あいつ早くるのに……」
すでに待ち合わせに時間から10分は経っている。周りのカップル達もだんだんと減ってきている。
さらに5分が経った頃、カラカラと軽快な音を立てて走ってくる少女を見つける。
また人違いかと思ったが、なんとなく気になって少女を見ていると、見知った顔にそっくりで、しかもそれは今ヤマトが待っている人物であった。
「遅れてゴメン。ヤマト」
「た……太一か?」
まだちょっと信じがたくて、思わず聞いてしまう。
「??……当たり前だろ。おかしいかこの格好?」
はにかむように微笑む太一に、ヤマトは首を大きく振る。
「スゲェ−可愛いよ」
思わず本音が出てしまい、怒られるかもと思ったが、太一はちょっと頬を染めただけで、嬉しそうに笑っていた。
「ヤマトもその格好似合うぜ」
お互いの服を誉めあって、照れてあって……そんな初々しいバカップルを繰り広げた後、二人は手を繋いでお祭り会場へと向かった。
道路の両側に屋台が所狭しと並んでいるお祭り会場では、すでに多くの人で賑わっている。
「ヤマト。タコ焼き食べようぜ!あとイカ焼き!!」
食べ物の匂いにお腹を空かせた太一が、あっちこっちとヤマトを引っ張って、次から次へと買いはじめる。
「そんなに買って食えるのか?」
タコ焼きにイカ焼き、リング焼きなど、美味しそうに食べていく太一に、半ば呆れながらヤマトが訪ねると、タコ焼きを口に含んだまま大きく頷く。ヤマトはそうかと思いながら自分で買った串カツを芳ばる。
「アレやろうぜヤマト。金魚すくい!!」
取り敢えずお腹が膨れた太一が、次に興味を示した物は、射的やサメ釣りなどの遊ぶ物だった。
「金魚なんて取っても、水槽が無いから飼えないだろ?」
尤もなことを言うヤマトに、太一は頬を膨らませながら、金魚掬いの場を後にする。
「太一!!待てよ」
ヤマトは慌てて追い掛けようとするが、この人込みの中では、上手く身動きが取れず、太一を見失ってしまった。
ヤマトを振り切ッて、太一は独りトボトボと道を歩いていると、正面から仲良く手を繋いで歩いている、タケルとヒカリを見つける。
「ヒカリ!!タケル!!」
「あっ!お兄ちゃん」
太一の呼び声に二人が気が付いて、太一の方へ駆け寄る。
「太一さん…お兄ちゃんは?」
てっきり一緒にいると思った兄ヤマトが居ないので、タケルは不思議に思って訪ねるが、ヤマトの名を聞いて、太一は途端に剥れてしまう。
「知るか。あんな奴!それよりもタケル。今日母さんが、ウチに泊まってけって言ってたぞ」
「ホントに?」
二人揃って声をあげ、嬉しそうに喜びあう。まだ小2の妹に彼氏なんて早い気もするが、それがあの苦楽を共にした仲間の1人なのだから、致し方がないことなのだろう。自分だって、そのうちの1人を好きになってしまったのだから……
「お兄ちゃん。早くヤマトさんと仲直りしてね?」
太一の浴衣の裾を引っ張りながら、ヒカリは心配そうに太一を見つめる。そんなヒカリの頭を優しく撫でて、にっこりと微笑む。
「大丈夫だよ。それよりも遅くならないように早く帰れよ。あと母さんに、今日ヤマトの家に泊まるって言っておいてくれよ」
「うん♪お兄ちゃんも、あんまり遅くならないように気を付けてね」
「ああ、判ってるよ。タケル!ヒカリのこと頼むな」
「うん。ヒカリちゃんは僕が守るよ」
どんと胸を張るタケルの頭をぐしゃぐしゃにして、太一はその場所を後にした。目指すは人目の少ない、お祭り会場の一番端にある、神社の境内。太一はそこでぼんやりと星を眺めていると、鳥居の方から誰かがやってくる。暗くてはっきりとは判らないが、ヤマトが来たのだと太一は確信できた。
「こんな所に居たのか、探したぞ」
やっと見つけることができて、安心したヤマトは、太一の隣に座る。突然居なくなってしまった太一を怒る訳でもなく、ヤマトはただ太一の隣に座って星を見上げる。
「さっきは、あんなこと言って悪かったよ」
空を見つめたまま、ヤマトは謝る。太一は黙ってヤマトの顔を見つめる。
「あのさ、本物の金魚はダメだけど……これで我慢してくれないか?」
ヤマトが取り出した物は、金魚のぬいぐるみだった。差し出されたままに受け取った太一は、ヤマトとぬいぐるみを交互に見つめる。
「これ……どうしたんだよ」
「太一探してる時に、的当ての店が合ったんだよ。そこの賞品にあったから……」
照れくさそうに話すヤマトに、太一はその時のヤマトの奮闘振りを何となく想像してしまう。自分の機嫌を取る為に、一生懸命になるヤマト……
「サンキューヤマト。よくよく考えたらさ、ミーコがいるから、金魚とかって飼えないんだよな。だから…これで我慢するよ」
ぎゅっと金魚を抱きしめてる太一を見て、ヤマトはゆっくりと太一に近づいて、顔を寄せようとしたら、後ろでパンッと大きな音と、昼のような光が一瞬だけ上がる。
「わぁ〜花火」
太一は打ち上がった花火に見とれ、ヤマトは後少しでキスができそうだったのを、はぐらかされてガッカリするが、太一と一緒に花火を見れたことも嬉しかったので、夏の風物詩を飽きることなく楽しんだ。
夏祭り……だったかな?リクエストいただいたのに、
あまり夏祭りらしくないですねι
リクをいただいた時に、太一君にはひまわり柄の浴衣を!!と
頭に思い浮かんだので、それでけは張り切って書きました(笑)
アホな話ですが、お納めください。
サクヤさんより頂きました。ちょっとした事への、お礼だったのですが、こんな素敵な小説いただけるなんてvv
本当に、貰っていいのでしょううか??(いや、返せないんですけどね。<苦笑>)
そして、何よりも、浴衣を着ている太一さんが本当に可愛すぎます!!!
向日葵柄の浴衣を着ている太一さんを想像して、怪しい人になっておりますよ。(おい!)
本当に、本当に有難うございましたvvv