読書三昧
Bookworm Corner
November 25,1998
「日本はこれから良くなる」
最近は景気も良くないし、暗いニュースばかりで気が滅入る話が多い毎日です。そこで今回の読書の奨めは本当にそうなると良いのだが、という内容が書いてある本の紹介にします。タイトルは「日本はこれから良くなる」、副題が「アメリカが逆立ちしても日本に勝てない理由」となっている景気の良い本です。著者は渡部昇一、船井幸雄、増田俊男の三氏です。三氏が日本と世界の現状と将来について語り合った内容を纏めたものです。
渡部昇一氏は上智大学教授であり、数々の論説でお馴染みの方ですが、かなり前より毎週日曜日の朝12チャンネルで政治、経済、文化の専門家達と対談する番組を続けていて、それが時流を説明するとても面白い内容なのです。今まで蓼科ではCATV以外では見られなかったので、東京の事務所にテープレコーダーを置いて留守録し、一月に一度東京に出た時に蓼科に持って帰って見ていました。渡部昇一氏の専門は言語学ですが、深い常識に裏打ちされたその論説は読みやすく、且つ私には非常に納得の行くものです。渡部先生はドイツの大学でPh.D.を取られた方ですが、以前何かの雑誌でドイツに行った折りドイツの学者達とくつろいで話していた時の一寸した話題について書いていました。確か渡部先生が話の途中で「ルドルフ・シュタイナーは最近どう受け取られていますか?」と質問した時にドイツの学者達が沈黙したという内容でした。普段の渡部先生は「君子は怪力、乱神を語らず」という立場のようですが、上記の話を読んで以来私は、この人は本当は「顕密」の密の学問についても相当に深い方なのだろうと察しているところです。
船井幸雄氏は上場している経営コンサルタント会社のオーナー会長で、最近は新しい人間観、人間と地球の共生、地球を傷つけない新技術等についての著書が多い方です。専門の経営コンサルタントの分野でも抜群の経営手腕をお持ちで、殆ど連戦連勝です。以前テレビを見ていたら、中央線沿線の或パン屋さんに船井総研から若い人が派遣され経営指導を行っている番組を放送していましたが、最終的に店を開いた段階で大変な売り上げの店になったのを覚えています。船井氏については、最近は神憑り、オカルト経営コンサルタントなどという批判も多いそうです。
最後の増田俊男氏は国際金融アナリストとして活躍中の方で、この二年程の時事、経済の予測が悉く当たったいるという人です。船井氏がこの7月に台湾で「10月から円高になり、日本経済が良くなり台湾も良くなるから心配ない」というスピーチをして、同感の増田氏がどうしてそうなるのかの解説をしたそうです。この本は10月の半ば頃に出版されたのですが、7月頃に10月頃になったら円高になるなどと予測していた人はいなかったのですから、最初読み始めた時は一寸吃驚しました。増田氏の政治経済予測の原点は「資本の論理」というものです。自分自身が資本そのものになりきって資本は次に何を望んでいるのか、増殖し続ける為にはどうしたら良いのか、と考えるのだそうです。イエス・キリストは神の意志を伝え、増田俊男は資本の意志を伝える、というのがキャッチ・フレーズです。
読み終わって本当かねと思ったのですが、確かにそうかもしれないとも思いました。そう思った理由の一つを増田氏がこう言っています。「日本の税金が非常に高い、行政が非能率的である、年功序列を維持している、これは或意味でこれだけ余裕があるという潜在財産なのである。しかも製造業という資本の純増殖にとって理想的な産業経済構造になっている。一つだけ障害になるのが政府、つまりマネジメントですが、この日本のマネジメントを180度といわなくても、ほんの一寸良くしたら資本の自己増殖にとって非常に好ましい国になります。何故一寸だけで良いかというと、マネジメントをアメリカ程にしてしまうと、かえって弊害が出てくるからです。日本が世界を独占してしまうからです。」私が考えてもこれだけ不景気だといっていながら、年間一千万人以上の人が海外旅行して何百ドルもするお土産を買ってくるのですから、とんでもない経済力だと言わざるを得ません。この他にも船井氏がこんな事を言っています。素晴らしい農業技術や全く新しいエネルギー技術が実用化寸前まで来ていて、しかもそうした新技術の殆ど全てが日本で生まれている、というのです。
政治経済について語られている内容の範囲が広すぎて、とてもこのコラム程度では細かく紹介しきれません。三氏の対談内容から言える事は21世紀の新しい世界はどうやっても日本が中心にならざるを得ないという事です。今の不景気な状況の中でこんな事を言っていると、何を脳天気なと言われそうですが、この本を読むと確かにそうなるかもしれないと思わせます。未来に希望を持って損は無いのですから、皆さんも一度読んでみて下さい。少しは明るい年末を迎えられるかもしれません。
題名 「日本はこれから良くなる」
著者 渡部昇一、船井幸雄、増田俊男
発行所 徳間書店
初刷 1998年10月31日
定価 1575円(税込み)
転寝坊 亭主