●2398長野(うこん)
○<挑戦者 17.8点>
この作品は、主題を読取ることができませんでした。オリンピックが、国民総抽選制度のもとで行われている、という設定のようです。金メダルもあたるようですから、どうやら競技での結果も関係ないようです。つまり、この時代のジャンプ競技は、すばらしく鍛えられた競技者たちの戦いを見るというより、不運な犠牲者を見世物にしているようなものらしいということが想像できます。この作品で扱われているヒコサマ氏がそうした不幸な人物の代表なのでしょう。
●姥捨て(アキ)
○<次点 17点>
人生の苦しみを抱えて、自ら死にに行こうとする老女と、十年間も植物状態の母をもつ男の出会いを簡潔に纏めてあります。このあと、主人公の男が、この老女に何と言うのか、また、自分の母をどうやって救っていこうと考えるのかがいろいろ想像できます。そうした余韻のある作品です。
●機械化社会(mmatsu)
○<一次予選通過 16.5点>
人間が機械化していくという、ある種、定番の設定ですが、恐怖感より何かのんびりとした雰囲気のある作品です。「得体の知れない恐怖」とはありますが、この物語自体が主人公の白日夢だった、といっても問題無いような構成になっています。
●あの冬に見つけたもの(江田 公三)
○<一次予選通過 15.5点>
この作品はどなたか批評してください。お願いします。
●ジャンケン星(真枯淡)
○<一次予選通過 14点>
かなり文章のうまい方だと感じました。書きだしから、常態で簡潔です。誰もが読める単純な表現を重ねながら、ストーリーを軽快に進めています。じゃんけん星とは何なのか、ということは全く書いていないにもかかわらず、なんとなく納得してしまうのも、こうした表現の力でしょう。
●巷に雨の降る如く(黒木りえ)
○<一次予選通過 13.5点>
ヴェルレーヌの『無言の恋歌』の一節をそのままタイトルにしたのが、あまり効果的ではないようにも思えます。この作品は、依存的な愛の物語のように見うけられますが、その愛のかたちが、必ずしもヴェルレーヌのそれとは同じでないからです。積極的に相手を自分の物にすることもなく、卑屈な態度で接している主人公は、それでもなお、「しょーこ」に対する憎しみと独占したい気持ちを抱いている、といった複雑な状況のように思われます。主人公は、一種閉塞した状況のなかで、このままの状態が続かないという現実から目を逸らしているのでしょう。最後の「そして二人はいつまでも。そんな風に暮らしました」という言葉の空々しさが、この作品の主題だとしたら、それは、単なる恋の涙とは違うもののように思えます。
●地球防衛軍(メトロ)
○<一次予選通過 12.8点>
じつは、よく分かりません。普通に読み流してしまうと、ただの与太話にしか思えません。全体に主題があるようにも思えませんが、かといって部分で面白さを狙っているようでもないし・・。
●薬(黒木りえ)
○<一次予選通過 12.8点>
「巷に雨の降るごとく」もそうですが、文章を書き慣れた感じがします。ふつうこれだけ一文が長いと、文法的に破綻してしまうものですが、この作品ではそういうところが見られません。よほど書き慣れているのか、ちゃんと推敲をしているのかだと思います。作者にとっての「薬」が何なのかは明らかではありませんが、人間の弱い部分を補ってくれる存在(最近の事件を見ると、ナイフなんかも、持ってるだけで自分が強くなれるような気がするようですね)として、無くてはいられぬもののようです。
●真夏の夜の夢(紅葉)
○<一次予選通過 12点>
ほとんど全てを殺人ウィルスの物語に割きながら、実際は最後の部分に主題を置く構成になっています。こうした構成は、ショートショートの定石の一つですが、往々にしてネタが割れてしまうものです。この作品では、そうした失敗が無く、うまく最後まで引張っています。
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