まいるよ(改訂版)
京木 倫子
心理学者に限らず多くの女性が「女性には強姦への恐怖心が常に有る」と言っています。これが本当に「すべての女性は〜」という前置きを付けてよいものかどうかは分からないのですが、少なくともそう思っている女性は少数ではないのでしょう。肉体的なことだけではなく、精神的にも常に軽く扱われていることが不安を増幅するのだろうと、男性として負い目に感じてしまいます。痴情のもつれで特定の誰かを害する女性はいますが、不特定多数の異性を暴行の対象にするのはもっぱら男性ですから。この作品は軽いタッチで書かれているにも関わらず、ついそんな風に感じてしまいました。
表現の面ではやや不手際なところが気になりました。読み進めながら、事故の状況を何度か読み返してしまいました。車の進行方向と主人公の進行方向の関係が「助手席の窓から見た」だけでは判断がつきませんでした。この作品は女子高生の行動の不自然さを読者と共に解明していくものですから、この点は残念です。
「そのバンパーの下から、人間の足が転がっている。」はやや不自然な表現です。「下に転がる」か「下から覗く」といった表現でよいでしょう。「安心したように肩を落とす」も気になりました。「肩を落とす」には「落胆」という意味合いがすでにありますので、別の表現をするべきでしょう。
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