色恋沙汰
池ノ上 綾乃
(一次予選得点:13)
残念ながら作者の意図を理解することが出来ませんでした。「色恋沙汰」というタイトルが何を意味しているのか分かりません。「色恋」で肉体的な執着(色)と精神的な愛情(恋)を象徴し、そのどちらがこの両親にとって大切だったのかを問うものかとも思いました。つまり、物質的な存在である息子よりも、自分たちの愛情の投影としての幻影のような(あるいは共同幻想としての)息子を良しとする価値観を提示しているのでは無いかとも読めなくはありません。しかしながら、それを作者の意図と判断する材料は見つけられませんでした。作者にお願いしてはいけないことですが、種明かしか何方かの解明を期待してしまいます。
形式の面では、この作品は私の苦手な部類のものです。「ほぼ会話だけで記述されている」(実際はト書きのような文もあります)、「『・・・』が多用されている」、「『?』の使い方がよく分からない」といった点です。特に「伸行が死んだから、そうなるのはわかりますがね・・・?」という文はなぜクエスチョンマークが付くのかよく分かりませんでした。これは私の個人的な趣味の問題ではあります。しかし、これらの点は読者に作者と同等の感性を期待するものだと思います。この作品の内容からすれば、より広い読者に理解できる形式の方が良いように思われます。
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