老人の後先
坂本潔昭
(一次予選得点:13.8)
文章自体は未整理でぎこちない印象なのですが、主題をうまく捉えた作品だと思います。特にこの作品は最後の「鍬がカチンと止まるたびにハッとして〜」が作品を締めています。これが無ければ単なる説明文の羅列になってしまうのですが、この一文だけで作品全体を言い表せています。
表現の面では、「湖が干拓されて」という比喩的な言い回しや「老人は自殺しようと思い立ったが、考えてみると湖がなくなったということは、これから死ぬ人間の魂はどこへ行くのだろう? そんな疑問が脳裏に浮かび、死ぬのが恐くなった。」といった未整理な長文が気になりました。老人の人物像に関する描写がもう少し丁寧にされても良かったかもしれません。タイトルの「後先」は「顛末」と言う意味合いに「湖が干上がるという事件の後先」、「子どもに先立たれて後先になった境遇」というニュアンスも絡んで良いと思いました。
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