紙テープ
あさ
(一次予選得点:14)
この作品の主題を読取れませんでした。連絡船で岸を離れる男女三名の行動が、淡々とした筆致で描かれています。この連絡船が「どこからどこへの」連絡船なのかによって作品の意味するものが変わってくると思います。現実に存在する特定の航路なのか、あるいは想像上の架空のものか、あるいは現世から来世への渡し舟なのか……。見ず知らずの三人は、同じように紙テープを「誰もいない」岸壁に投げつけます。そうせざるを得ないものとは何か。また「ノートパソコンが入るくらいの鞄」「新聞紙ほどの大きさのチケット」といった小道具の意味するものも想像されます。いずれにせよ、ヒントとなる記述が少ないために、本来の作品の価値を読取りづらいのではないではないでしょうか。
表現の面では、丁寧な描写に凝った表現を織り交ぜて、独特の雰囲気を作り出すのに成功していると思います。スケッチとして見れば十分すぎる出来だと思います。
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