テレ・ヴィジョン
紺詠志
(一次予選得点:15)
重くなりがちな素材を、手際よく処理した好作品だと思います。ギミックの使い方にも手慣れた物があります。例えば、リキッドクリスタルのモニタ(液晶と言っても構わなかったとは思いますが)とか、ハマキなどは気が利いています。
ただ残念なのは、類似作品が世の中に溢れており、ともするとそれらに埋没してしまいそうなことです。安易な設定の代表ともいえる核戦争を取上た作品は、どうしても新鮮味にかけます。「核戦争から始まる物語」と「核戦争で終る物語」は読者が見飽きています。この作品の中にあるメッセージ性が、どうしても薄められてしまうのは、いたしかたの無いことかもしれません。
実のところ、我々の多くは当にこの主人公の立場にあります。ソファに身体を沈めて、滅亡へと歩む世界の流れをただ他人事のように眺め続けている。そうした構図が透かし見えはするのですが、この作品を読んだ人に対するインパクトはやはり弱いもののように思われます。
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