茉莉花弔道

茉莉花弔道

MAH

(一次予選得点:19.4)

 盛りだくさんな内容を千字に詰め込んだ印象です。物語はしっかりと組まれており、またそれなりに取材もされているように覗えます。しかしながら、物語の初めから終りまで、設定の何もかも、また取材したことの全てを書いてしまう必要はないと思います。もったいないと感じるかもしれませんが、ほんの一部を描く事の方がずっと効果的な場合もあります。
 特にストーリーが駆け足になっているのが残念です。描写するより説明する方に忙しくて、あらすじを読んでいるように感じられます。手紙を読むシーンだけとか、ヌンの遺骨を運ぶトゥクトゥクの車上だけとか、絞り込んで描くべきだったのではないでしょうか。意欲的な作品なだけに、より整理した形にして欲しかったと思います。
 文章では以下の点が気になりました。「腐っても大勢の外国人労働者を抱える経営者」では「腐っても」が活きていません。また場面の転換が頻繁で日本とバンコクが錯綜しています。日本の場面で「中年の日本人とヌンの死体」と書くというのはやや不自然かもしれません。