8度目の 夏
一色 夏希
(一次予選得点:9.5)
主人公が忘れることの出来ない体験を毎年思い出すという、ありがちといえばありがちな構成の作品です。作品の部分部分にはリアリティがあり、読ませます。しかしながら問題の夏のエピソードが絞り切れておらず、散漫な印象になったのが残念です。問題の夏に関しては、別荘についた場面から初めた方が良かったのではないでしょうか。また、最後の段落が「卒業後」と「8度目の夏」と時間的に空きすぎて、纏まりがありません。卒業後に一度回想シーンが入り、八度目の夏にもう一度回想するなら、その時の主人公の感慨に何らかの変化があるべきだと思います。それが無いなら、卒業後の時点だけで充分です。
表現では以下の点が気になりました。「同じクラスメイトとはいえ」はくどいです。「右上がりの流れるような美しい文字が羅列していて、終わりの頁に電話番号が記してあった」では、一回目の「が」の後ろに自動詞が、二回目の「が」の後に他動詞が連なっていて読みづらくなっています。
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