恋敵

chirr☆

(一次予選得点:10.9)

　私には苦手な主題を扱った作品だけに、ちょっと読後感が悪かったです。作品の構成が所謂一人芝居の形式になっており、独断的な方向に進みがちです。主人公が勝手に思いを巡らすだけなら問題はないのですが、ちょっと油断をすると読者を置き去りにしてしまうことになります。あくまで作者は外側から作品を見つめる必要があります。この作品はその辺りの押さえがある程度効いていて、最後まで読者を付き合わせる力があります。しかしながら、結末があまりに予想通りで、また安易な方向であるのはいただけません。
　私は主人公よりも、全く説明されていない彼の方に感情を移入してしまったほどです。主人公の行動に同意は出来ずとも、彼女の行動にリアリティを持たせられる描写や構成を大切にして欲しく思います。