カレー皿の中で奇跡は起こる
Naoko
(一次予選得点:11.7)
他愛もない恋物語なのですが、焦点をトマトと茄子に絞った分だけ、読みやすくはっきりとした印象です。うまく纏められた好作品と言っていいと思います。読後感もいいですね。ただ、あまりに観念的な部分が強くなりすぎて、主人公と彼女の描写が希薄になったきらいがあります。主人公なり彼女なりの話に魅力的なものを感じ取れないと、うまく構成されていても作品の力が弱まってしまいます。トマトについては、多少美味しそうに感じたのですが、茄子は魅力的には感じられませんでした。茄子とトマトのカレーが食べたくなるのがこうした作品の基本ではないでしょうか。
文章は丁寧であまり瑕疵がないのですが、「その時だった。」という文はもう一工夫欲しく思いました。この部分が小説の中でももっともスリリングに展開する部分なのですから、それなりに気を使うべきだと思います。
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