紫陽花
小副川
(一次予選得点:12.2)
この作品の主題は、厳然として存在しながらなかなか客観的に取上げるのが難しい問題です。同じ民族である哲ちゃんと別の道を歩んでいる主人公が、昔の事を回想します。主人公はどうやら学校の教師になっているようですが、それがいわゆる民族学校なのか、一般の小学校・中学校なのかがはっきりしません。この点は実はこの作品の意味を大きく変える部分なので、気になりました。私は、主人公は表面上は日本人と同じように生活する道を選んだと解釈しました。
最後に「夏が好きだ」といっているのをどう解釈したものか、戸惑いました。単に懐かしさから「哲っちゃんに会いたい」と言っている訳ではないでしょう。自分も同じ民族である主人公がどのように現在の状況を捉えているのかが、説明不足になっているように思われました。
似た主題を扱った「キューポラのある街」で描かれた情景からさらに進んだ作品を期待してしまうのですが、そうした深化が足りないように思われました。
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