言霊

言霊

黒木りえ

(一次予選得点:12.3)

 母親を描くのに「言霊」という言葉にまつわるエピソードを使っているのですが、まさに手慣れたものです。全体の構成もしっかりしており、分量相応の内容に絞り込んであります。「コトダマが来る」という表現は厳密には誤りで「言霊が宿る」と言うべきなのでしょうが、主人公の母がそう言うと、また違った意味合いが生まれます。母親の願いやら、嫌なことを見つめまいとする気持やらが、エピソードの向こうに鮮やかに透けて見えます。
 最後の文が、作品をうまく纏めているとともに読者に安堵感を与えてくれて、ある種のハッピーエンドを構成しています。題材の割に読後感の良い作品です。