左筆

左筆

藤次

 浮世絵といういわば流行に左右されるものを描いていくことの非常さがよく出た作品です。女房を殺してそれでも無事に絵師を続けていられるのは、当時の警察力と、浮世絵に対する風当たりを考えると、あまりに不自然で気になりました。物語の仕掛けとしては面白いのですが、もう少し言い訳が欲しいところです。また、話の作りが寺の縁起話のようでどうにも作りものっぽく感じられるのは、物語に思想性が強すぎる為でしょう。これは好き好きですが、個人的にはもう少しリアリティが欲しかったところです。絵の凄みが作品にも欲しいと思います。