一手
一手
藤次
畳み掛ける文章が対局室の緊張感をうまく表現しています。「一手」は「一手足りない」の一手なのか、「〜の一手」の一手なのでしょうか。まさに主人公は一手足りない人生だったわけですが「一手足りないのは完敗」というのが棋士の世界です。それでなお「俺らしいや、重吾はそうひとりごち、もう一度ゆっくりと目を閉じた」というあたりが、十分に戦いを堪能した満足感を感じさせます。
一場面のスケッチとしては十分な出来だと思うのですが、公募という形態で評価されるとどうしても損な作品です。