郡言堂

郡言堂

鹿野 まどか

 独特の静けさを感じさせる作品です。タイトルは「群言堂」なのでしょうね。ちょっと残念です。群言堂がどういういわれの物なのか、また桐子が何者なのかは、明確に語られてはいません。そういう書き方もありではありますが、この作品では明確になった方が良かったように思います。「言葉の隙間からひらりと別の音が耳に届いた」という音が何なのか、も説明が足りないように思われます。「ああ、世界はなんて優しいのだろう」という文で読者も何だか分かったような気にさせられるところがあるのですが、それがまた曲者なのです。
 表現の面では、以下の点に気が付きました。「薄い瞳」というのが多少違和感を感じさせますが、これは「(色が)薄い」という意味でしょうか。「細い瞳」ともなると、猫のような印象ですが、そこが狙いなのでしょうか。「習って靴を脱ぐ」は「倣って〜」が良いように思います。