天を駆けるものは

天を駆けるものは

嶋田響子

 この作品の狙いが読み切れませんでした。作品では虚飾ともいうべき世界の中で、空疎な会話と怪しいマナーの食事が行われます。妻帯者である背の高い男と関係があるであろう和子という女の生々しい男への執着もその輝きの中で空ろに浮かび上がるようです。
 作品の構図は或る程度窺えても、さて「天を駆けるもの」とは何で、それがどう作品世界と結びつくのかは読取れません。もう少しヒントがあっても良いと思います。
 文章はやや乱暴で、読みづらいものです。一つ一つの文が長すぎます。例えば「奥行き22.2メートルほどの外国からの賓客が行交う、四季折々の絢爛たる花々と、きらきらしい照明が照り映えるロビーを行けば帝国主義を思わせる大階段があり、踊り場には巨大な絵がえ付けられている」では「奥行き22.2メートルほどの」が掛かる先が遠すぎます。語順を工夫するといった親切があっても良いと思います。また、途中で文体が変わってきているのも必然性がなく、気になります。漢字と仮名の使い分けも場当たりに思われます。「嫁さん行きたくないってさ」という言葉で海外赴任だと理解させるのも、やや厳しいように思われました。全体に、文章を整理するべきだと感じました。
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 と書いたのですが、作者の方から「そういう風に思うのかと驚きました」というコメントをいただきました。どうやら私の解釈が違っているようです。反省。