金魚
MrsM
自分の生活を配偶者に委ねている主人公の無力感を、金魚に投影して描いています。自分を投影した金魚を殺そうとすることによる、或る種の被虐感。自己に対する強烈な憎悪と執着が見て取れます。構図自体は良いと思うのですが、あまりにストレートに描かれているのでリアリティに欠けるようでもあります。
文章自体では「金魚」「赤い」という言葉が重なりすぎています。「金魚があまりに小さくて無邪気なので、ふと金魚が憎くなる」とか「水の中にそっと手を入れ、金魚をつかむ。わりとあっけなく、金魚はわたしの手に落ちた」というのはくどく感じます。一人だけの静かな物語なのですから、言葉を削って精緻に世界を構築して欲しいと思いました。
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